弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2022.11.18
終活のサポート

遺贈寄付(公益団体に遺産を寄付する方法)について弁護士が解説

【ケース】

私は、大学を卒業してから定年までサラリーマンとして働き、定年後は、ボランティア活動をしながら暮らしています。妻とは死別し、子どもが2人いますが、すでに独立して暮らしています。現在は賃貸で暮らしており、5000万円ほどの預貯金があります。最近、人生を振り返って、これまで社会貢献につながることをほとんどしなかったと考えるようになりました。来年に介護付きマンションに入居して余生を過ごし、自分が亡くなった際には、遺産の一部を公益団体に寄付したいと思っています。

【このケースのポイントは?】

1 どのような団体に寄付すれば自分の思いがかなうかを考えましょう

どのような団体に寄付をするかは、一番の悩みどころです。寄付を通じてどのような社会貢献をしたいかも踏まえながら、信頼をおくことができる団体を選択することが重要です。

2 どれくらいの遺産を寄付するかを考えましょう

相続人となる方がいらっしゃる場合、遺留分について考えることは当然ですが、それだけではなく、相続人となる方の不満につながらないためにどれくらいの遺産を寄付するのが適切であるかを考える必要があります。

3 確実に寄付されるように公正証書遺言を作成しておきましょう

当然のことですが、自分が亡くなってからのことは、他人に委ねなければなりません。遺言は自筆で遺すこともできますが、自筆の遺言は、有効性をめぐってトラブルになったり、隠匿されたりするリスクがあります。確実な寄付を実現するために、公正証書遺言をきちんと遺しておくことをおすすめします。

【詳しい解説はこちら】

1 どのような団体を選択すればよいか

最近、自分が亡くなった後に、遺産の一部を公益団体などに寄付したいと考える人が増えています。

「遺産はすべて相続人で分けるべき」というお考えの方もいらっしゃいますが、必ずしもそうしなければならない理由はありません。だれしもが、自分の人生の中で培ってきた財産を、最後にどのような形で使いたいか、自由に決める権利を持っています。

遺産を寄付するうえで悩むのが、どのような団体に寄付をするかです。インターネットで調べていただくと、遺産の寄付について様々な情報が提供されています。まずは、自分がどのような社会活動に貢献したいかを考えたうえで、自分の考えに合った活動をしている団体を探していただくところからスタートします。

もっとも、インターネットの情報を鵜呑みしてすぐに寄付先を決めるのではなく、実際にその団体の活動について詳しく調べたり、実際に担当者とお話しをされるなどして、信頼をおくことのできる団体かどうかを見極めることが大切です。また、ご自身が亡くなった時点でその団体が活動をやめてしまっていれば、寄付の意味がなくなりますので、十分な活動実績があり、今後も同様の活動を継続することが見込まれるかどうかを見極めることも大切です。

2 どれくらいの遺産を寄付することが適切か

相続人となる方と不仲で、遺産をできる限り渡したくないとお考えであれば、遺留分相当額以外はすべて寄付する選択肢もありえます。しかし、そうでないのであれば、相続人となる方が不満に思うほどの高額な寄付をすることは避けることが望ましいです。社会貢献のために行った寄付が、親族との軋轢につながることがないように、どれくらいの遺産を寄付するか吟味しなければなりません。

できれば、あらかじめご親族ときちんとお話しをして、ご親族の理解のもとで寄付額を決めていくことが望ましいと思います。

もちろん、ご親族の理解だけではなく、自分自身が納得できることも大切です。ご親族の意見も尊重しつつ、最終的には、(遺留分を侵害しない範囲で)ご自身の思いを実現するためにはどれくらいの遺産を寄付すればよいかを考えて結論を出してください。

遺留分の額は、次のとおりです。遺産の寄付額は、遺留分の対象となる額を残すことができるように設定しなければなりません。

(1) 親など直系尊属のみが相続人 相続財産の3分の1

(2) 兄弟姉妹のみが相続人 なし

(3) それ以外の場合 相続財産の2分の1

※なお、寄付の対象として、現預金ではなく不動産を選択する場合には、その不動産の資産価値が取得時よりも上がっている場合に譲渡所得税が発生する点に注意しておかなければなりません。相続人が譲渡所得税を負担することがないように、“遺贈に伴って発生する税金を寄付先が負担すること”を遺贈の条件としておく(負担付遺贈)方法などがあります。

3 遺言をどのように作成するか

自分が亡くなった際にあらかじめ決めた団体に遺産を寄付する方法で一般的なのが「遺贈」です。「遺贈」は、遺言によって遺産を特定の個人や法人に渡す方法です。

遺言は、自筆で作成することも可能ですが、確実な寄付を実現するために、公正証書遺言をきちんと遺しておくことをおすすめします。公正証書遺言は、遺言の作成を公証人に委ねる方法です。

公正証書遺言は、ご自身で公証人と相談しながら作成することもできますが、弁護士に文案の作成や公証人との調整を依頼するとスムーズかつ安全に進めることができます。

4 遺言執行者をだれにするか

遺言を作成する際には、その遺言の内容を実現する人をその遺言の中に示しておくことが一般的です。このような立場の人を、遺言執行者といいます。

遺言執行者としてだれを選ぶかは、大変重要です。遺言執行者としては、ご自身が亡くなった後、確実に寄付の遺志を実現してくださる方を選んでおかなければ、最悪の場合、寄付のために遺したお金を私的に流用されてしまうかもしれません。

安心して遺言執行者を任せられる方がいらっしゃらない場合は、弁護士を遺言執行者に指定することもできます。

5 付言事項の活用

遺言では、遺産の分け方や遺言執行者のような法律的に必要な事項のほか、「付言事項」として自由にメッセージを書くことができます。寄付について事前にご親族に相談することができない際(あるいは、生前は寄付についてご親族に秘密にしておきたい際)は、「付言事項」として、(1)なぜ寄付をしようと思ったのか、(2)寄付先をどうやって選んだのか、(3)寄付先に何を託したいかなど、ご自身の思いを示しておくことをおすすめします。そうすることで、ご親族に“なぜ寄付を選択したのか”をきちんと伝えることができます。

6 遺贈寄付のための遺言の作成は弁護士へのご相談をおすすめします

寄付によってご自身の遺志を確実に実現するためには、弁護士と相談しながら、遺言の作成を進めていくことをおすすめします。“社会に貢献したい”というお気持ちを形にするためには、専門家のサポートが重要です。

当事務所では、遺言の作成のほか、“終活”に関するご相談を承っております。“終活”についてお悩みの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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