弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2024.06.06
遺産相続のトラブル

遺留分を侵害されてしまったら?弁護士からのアドバイス

1.あなたの遺留分、侵害されていませんか?

【ケース】

私A(女性・50代)は、兄Bと妹Cの3人兄弟です。10年ほど前に、兄Bや妹Cと不仲になり、現在は疎遠になっています。半年前に父親Dが亡くなった(母親はそれ以前に亡くなりました)のですが、父親Dが次のような内容の遺言書(2年前に作成)を残していました。

(1) 自宅不動産は、兄Bが相続する。

(2) α銀行B支店口座預金(残高300万円)は、妹Cが相続する。

(3) ゆうちょ銀行貯金(残高100万円)は、私Aが相続する。

父親Dは、生前は兄Bと2人暮らしでした。20年前まで事業をしており、それなりに資産があったはずです。兄Bが、5年ほど前に、父親Dから多額のお金(おそらく300万円程度)を受け取っていたことを疑っています。

 

【ケース】は、父親Dの遺言書の内容が不公平なもので、Aさんが受け取れる遺産が100万円しかありません。Aさんは、泣き寝入りするしかないのでしょうか。そのようなことはありません。Aさんは、他の相続人が、自分の「遺留分」を侵害していることを主張できます。

「遺留分」という言葉を聞いたことのある方は多いと思いますが、「何となく聞いたことはあるが、正確な意味は知らない・・・」という方が多いと思います。このコラムでは、「遺留分」とは何か、どうやって計算するか、遺留分を侵害されたときにどうやって争うかなど、詳しく解説しています。

2.「遺留分」って何?

(1) 「自由分」と「遺留分」

被相続人(お亡くなりになった方)の相続財産(遺産)には、だれに渡すかを被相続人本人が自由に決められる部分と、だれに渡すかを被相続人本人が自由に決められない(制限される)部分があります。だれに渡すかを被相続人本人が自由に決められる部分を「自由分」、だれに渡すかを被相続人本人が自由に決められない(制限される)部分を「遺留分」といいます。

「遺留分」については、民法のルールで、はじめからどの相続人がいくら受け取れるかが決まっていて、被相続人がそれを自由に変えることはできません。

「遺留分」には、近親者の生活を保障したり、近親者間での不公平感を減らしたりする意味があります。

(2) 相続人が兄弟姉妹のみのケース以外は「遺留分」あり

相続人が兄弟姉妹のみのケースでは、「遺留分」はありません。それ以外のケースであれば、「遺留分」が認められます。相続人が兄弟姉妹のみ以外のケースの例は、次のとおりです。

(1) 夫・妻のみが相続人であるケース

(2) 夫・妻と子が相続人であるケース

(3) 親のみが相続人であるケース

その他、例えば、子がすでに亡くなっていて、孫が代わりに相続人になるケース(代襲相続)でも、「遺留分」が認められます。

(3) 全体の「遺留分」(総体的遺留分)は相続財産の1/2又は1/3

相続財産の中で何割が「遺留分」(全体の「遺留分」、総体的遺留分)かは、次のように考えます。

(1) 直系尊属(親など)のみが相続人である場合は、相続財産の1/3

(2) それ以外の場合は、相続財産の1/2

(4) 相続人1人1人の「遺留分」(個別的遺留分)は?

(3)で説明したのは、あくまでも、全体の「遺留分」です。次に、各相続人にいくらの「遺留分」(個別的遺留分)が認められるかが問題になります。

各相続人にいくらの「遺留分」が認められるかは、法定相続分で決まります。

(5) 【ケース】であれば?

被相続人である父親Dは、配偶者(妻)がすでに亡くなっていて、子であるA・B・C3名が相続人です。

全体の「遺留分」は相続財産の1/2で、A・B・Cそれぞれの「遺留分」は、その1/3です。

つまり、A・B・Cの「遺留分」は、それぞれ相続財産の1/6です。

3.遺留分の額はどうやって計算する?

(1) 基本的な考え方

さきほど、A・B・C全体の「遺留分」は、相続財産の1/2であると説明しました。ただ、厳密には、相続財産の1/2ではなく、「基礎財産」(遺留分を算定するための財産)の1/2が、A・B・C全体の「遺留分」(総体的遺留分)となります。

「基礎財産」の計算方法は、次のとおりです。

[基礎財産]=[相続開始時の相続財産]+[贈与した財産]-[債務の額]

(2) 「贈与した財産」はどこまでの範囲が含まれる?

ア 原則-被相続人が亡くなる前1年以内の贈与

「基礎財産」を計算する際に「贈与した財産」に含まれるのは、原則として、被相続人が亡くなる前1年以内の贈与です。

【ケース】であれば、兄Bが父親Dからお金を受け取ったのがおそらく5年前ですので、原則として、この贈与(生前贈与)は「基礎財産」の計算対象に含まれません。

イ 例外1-遺留分の権利者に「損害を加えることを知って」した贈与

例外的に、贈与した人(被相続人)と、贈与を受けた人のいずれも、遺留分の権利者に「損害を加えることを知って」した贈与は、時期にかかわらず、「基礎財産」を計算する際に「贈与した財産」に含まれます。

【ケース】においては、遺言書を作成した時期よりも、兄Bが父親Dからお金を受け取った時期のほうが3年ほど前ですので、遺留分の権利者に「損害を加えることを知って」した贈与であることを説明するのは、ハードルが高いように思われます。

ウ 例外2-相続人に対する特別受益としての贈与

例外的に、贈与を受けた人が相続人で、かつ、贈与が「特別受益」に該当する場合は、被相続人が亡くなる前10年以内の贈与まで「基礎財産」の計算対象に含まれます。

【ケース】においては、兄Bが父親Dからお金を受け取った時期がおそらく5年前ですので、その贈与が「特別受益」に該当するならば、「基礎財産」の計算対象に含まれます。

「特別受益」とは、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与」のことです。

「生計の資本として受けた贈与」には、扶養義務の範囲を超えて、生活費に当てるお金を渡すような行為が該当します。兄Bが特に経済的に困窮しているわけでもないのに、父親Dが生活費に充てさせるためにお金を渡したのであれば、「特別受益」に該当する可能性が高いです。

(3) 基礎財産は「いつ」を基準に計算する?

基礎財産は、被相続人が亡くなった時点を基準に計算します。

【ケース】であれば、自宅不動産は父親Dが亡くなった当時の時価を基準に計算します。

(4) 具体的な計算例

【ケース】について、A・B・C全体の「遺留分」(総体的遺留分)の額を計算します。

例えば、自宅不動産の時価が500万円、兄Bが父親Dに5年前に(特別受益として)渡したお金が300万円だったとします。

基礎財産は、(1)自宅不動産の時価500万円と、(2)父親Dが亡くなった時点の預貯金400万円、そして、(3)兄Bから父親Dへの生前贈与300万円を合算した、「1200万円」です。

つまり、A・B・C全体の「遺留分」(総体的遺留分)は、その1/2である「600万円」です。

そして、A・B・Cそれぞれの「遺留分」(個別的遺留分)は、その1/3である「200万円」です。

 

4.遺留分侵害額はどうやって計算する?

実際に自分の遺留分を侵害されているかどうか、侵害されているならば「いくら」侵害されているかを考えるためには、さらに複雑な計算が必要です。

[自分の遺留分が侵害された額]=[A]-[B]-[C]+「D」

[A]自分の「遺留分」(個別的遺留分)の額

[B]自分が受けた遺贈と特別受益に該当する生前贈与(10年より前でも含まれる

[C]民法のルールや遺言に従って受け取れる遺産の額

[D]自分が負担する相続債務の額

【ケース】に当てはめて、考えてみます。

私Aの「遺留分」は、「200万円」です([A])。

遺贈や特別受益に該当する生前贈与は、受けていません([B])。

自分が負担する相続債務も、ありません([D])。

では、民法のルールや遺言に従って受け取れる遺産の額([C])は、どうでしょうか。私Aは、遺言に従って、「100万円」の預貯金しか受け取ることができません。

[私Aの遺留分が侵害された額]

=[200万円](A)-[0円](B)-[100万円](C)+[0円](D)

=[100万円]

【ケース】では、私Aは、100万円の遺留分侵害を主張することができます。

5.遺留分を侵害したことを誰に対して主張する?

Aさんは、100万円の遺留分が侵害されたとして、他の相続人に対して、侵害額に相当する金銭(100万円)を支払うように請求することができます。これを、「遺留分侵害額請求」といいます。では、具体的には、だれに対して、いくら請求することができるのでしょうか。

遺留分侵害額請求については、次のようなルールがあります。

(1) まずは、被相続人が亡くなったときに遺贈を受けた人や、自分の遺留分の範囲を超えて遺産の相続を受けた相続人に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。そのような人が複数いる場合は、各人が受け取る遺産(相続人については、遺留分相当額を差し引いた額)の割合に応じて、それぞれに遺留分侵害額請求をすることができます。

(2) (1)のルールに従って遺留分を侵害された全額を請求することができない場合は、生前贈与を受けた人に対して、その残額の遺留分侵害額請求をすることができます。生前贈与を受けた人が複数いる場合は、後で生前贈与を受けた人のほうが優先します。

【ケース】の場合、兄Bは500万円、妹Cは300万円の遺産を受け取っています。そのうち、遺留分(それぞれ200万円)を差し引いた額は、兄Bが300万円、妹Cが100万円です(兄B:妹C=3:1)。よって、Aさんは、兄Bに対して75万円、妹Cに対して25万円の遺留分侵害額請求をすることができます。

6.遺留分侵害額請求の進め方は?

【ケース】において、Aさんは、兄Bに75万円、妹Cに25万円の遺留分侵害額請求をすることができると分かりました。では、Aさんは、どのような流れで、遺留分侵害額請求を進めればよいのでしょうか。

(1) まずは遺留分侵害額請求の通知を出す

遺留分侵害額請求をしたいときは、相続の開始と、遺留分が侵害される遺贈・贈与があったことを知った時から1年以内に、「遺留分侵害額請求をすること」を相手に通知しなければなりません。この期間制限を過ぎてしまうと、遺留分侵害額請求ができなくなりますので、注意が必要です。

遺留分侵害額請求の通知書については、後で「受け取った」「受け取っていない」で争いにならないように、配達記録付の内容証明郵便で送ることが一般的です。ただし、相手が受け取りを拒否するおそれがある場合は、別途、特定記録郵便でも送ることをおすすめします。

なお、「1年以内」の期限まで期間があるケースでは、(2)の調査を先行させる場合もあります。

(2) 遺留分侵害額請求の額を確定させるための調査をする

ここまで説明したとおり、遺留分侵害額請求を「だれ」に「いくら」できるかを確定させるためには、(1)不動産の時価はいくらか、(2)生前贈与はあったか、などの事情を調査しなければなりません。

ア 不動産の時価

不動産の時価については、(特に評価をめぐってもめそうな場合)不動産鑑定士に鑑定を依頼するケースもありますが、まずは、不動産業者に査定依頼をすることが一般的です。ただし、査定書は被相続人が亡くなった時点の時価ではなく、現在の時価を示しているため、「【被相続人が亡くなった時点の路線価】÷【現在の路線価】」をかけるなど、調整が必要なケースもあります。

イ 生前贈与

生前贈与については、「そもそも生前贈与がされた証拠がない!」というケースも珍しくありません。このようなケースでは、被相続人の預貯金の入出金明細を金融機関から取り寄せて生前贈与の有無を調査することなどが必要です。

その他、非公開会社の株式の価値や、骨董品の価値、配偶者居住権の評価などが問題になるケースがあります。

(3) 相手との交渉を試みる

遺留分侵害額請求の額が確定した後は、相手にその額を通知し、支払に応じるように交渉します。相手が支払に応じなければ、調停・訴訟での解決を検討しなければなりません。

(4) 調停・訴訟で解決する

交渉での解決が難しい場合、調停や訴訟での解決を検討します。

明らかに話合いの余地がないケースでは直ちに訴訟に移行することが得策ですが、一方で、話合いの余地がある程度残っているケースであれば、先に調停での解決を試みるケースも多いです。

調停や訴訟に移行した場合、遺留分制度に対する正確な法的知識が求められます。そのため、弁護士にご依頼いただくことをおすすめしています。

7.遺留分を侵害された?と思ったら弁護士にご相談を

このコラムをお読みいただいて、「もしかして遺留分を侵害されているのでは?」と感じたときは、ぜひ当事務所にご相談ください。弁護士からの専門的なアドバイスで、「泣き寝入り」を防ぐことができます。

遺留分侵害に関するご相談は初回30分無料です。まずは、お気軽に弁護士へご相談ください。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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