弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2024.06.24
遺産相続のトラブル

相続財産調査の進め方を弁護士が解説

弁護士 石田 優一

弁護士 是永 淳志

1.ご親族が亡くなったときは相続財産の調査が必要です

ご親族(被相続人)がお亡くなりになったとき、ご遺族は、悲しみに暮れながら、葬儀・法要や、遺品整理など、様々なことをしなければなりません。その中で忘れてはいけないのが、相続財産の調査です。相続財産の調査を早期に進めなければならないのは、なぜでしょうか。それには、いくつか理由があります。

(1) 相続放棄をすべきかどうか決めるため

もし、ご親族が残したものが「負の財産」であった場合(財産よりも債務のほうが大きかった場合)、相続放棄をしなければなりません。相続放棄は、原則として、ご親族が亡くなったことを知ってから「3か月」以内にしなければなりません(民法915条1項)。

【ケース1】

父が、1月10日に亡くなりました。相続人は、母・私・弟の3人です。父には、わずかな現金・預金のほか、特に財産はなかったので、相続関係については特に何もしていませんでした。4月20日になって、消費者金融から督促通知があり、父には100万円の借金があることが明らかになりました。

【ケース1】では、被相続人が亡くなったことを相続人が知ってから「3か月」を過ぎた時点で、「負の遺産」の存在が明らかになっています。「負の遺産」が明らかになった時点で、すでに相続放棄ができる期限を過ぎているため、原則として相続放棄ができません(家庭裁判所の判断で、相続放棄を後から伸長してもらえるケースもありますが、あくまでも例外です)。

【ケース2】

父が、1月10日に亡くなりました。相続人は、母・私・弟の3人です。父には、100万円のカードローンがありましたので、相続放棄をしました。ところが、後になって、父が、証券会社に口座を持っていて、時価300万円程度の株を保有していることが分かりました。

【ケース2】では、すでに相続放棄をした後に、相続財産の存在が明らかになっています。いったん相続放棄をした後は、原則として、後で撤回することはできません(民法919条1項)。相続放棄をする前には、相続財産の調査を確実に行っておくことが重要です。

(2) 相続税の申告が必要かどうか考えるため

【ケース3】

父が、1月10日に亡くなりました。相続人は、母・私・弟の3人です。父には、300万円程度の現金・預貯金のほかに、特に財産はないという認識で、相続税の申告はしませんでした。ところが、後になって、父が、証券会社に口座を持っていて、時価5,000万円程度の株を保有していることが分かりました。相続税の申告を怠っていたことを指摘されました。

相続税の申告は、被相続人が亡くなってから10か月以内にしなければなりません。相続財産が少額なために相続税の申告が必要ないと誤解していて、後になって相続税の申告が必要であることが明らかになった場合、延滞税が加算されたり、追徴課税を受けたりするおそれがあります。

このような事態にならないためにも、早期に相続財産の調査を進めることは重要です。

(3) 遺産分割協議で不利にならないため

また、相続人の中で自分だけが相続財産の存在を知らないと、遺産分割協議において、他の相続人から(相続財産の一部を隠されるなどして)不利な扱いを受けるおそれがあります。

以上のとおり、相続財産の調査を早期に進めることは、様々な問題を生じさせないために、大変重要です。

2.相続財産調査をご自身で進める方法

(1) 一般的に調査すべき相続財産

一般的には、次のような相続財産を調査の対象とします。

【プラスの財産】

・不動産

・価値のある動産類(貴金属など)

・現金

・預貯金

・株券などの有価証券

・保険

【マイナスの財産】

・カードローン/キャッシング/クレジット利用など

・住宅ローン

・自動車ローン

・債務の保証(ローンの保証人になっている場合など)

(2) まずは遺品整理から

遺品整理をいただくことで、預貯金通帳・契約書・ご本人作成のメモなど、相続財産の調査につながる重要な物が様々発見されるケースは多いです。その後の調査の手がかりを確実に発見するために、丁寧に遺品整理を進めることが重要です。

(3) 遺言書の有無も確認する

遺言書の有無も確認しましょう。遺言書には、作成当時にどのような財産があったか、列挙されているケースが多いからです。

ア 自宅に遺言書が保管されていないかを探す

遺品整理の中で、遺言書が発見されるケースはしばしばあります。遺言書が見つかったときは、家庭裁判所に検認の申立てをしなければなりませんので、その点も気をつけましょう。封がされている遺言書を、検認の手続によらずに勝手に開封しないように、注意してください。

イ 貸金庫に保管されていないかを確認する

遺言書が、貸金庫に保管されているケースもあります。貸金庫を生前に利用していた可能性がある場合は、金融機関に問い合わせて、貸金庫契約の有無を確認する必要があります。

ウ 法務局に問い合わせる

被相続人が、「遺言書保管制度」(法務局に遺言書を保管することができる制度)を利用している場合は、遺言書が法務局に保管されています。

「遺言書保管事実証明書」を最寄りの法務局に請求すると、遺言書の有無を知ることができます。

エ 公証役場に問い合わせる

被相続人が公正証書遺言を作成している場合は、遺言書は公証役場に保管されています。

「遺言検索システム」という最寄りの公証役場から遺言の有無を確認できる制度を利用すれば、公証役場に遺言が保管されているかを全国どこからでも調査することができます。なお、この制度は、無料で利用することができます。

(4) 不動産を所有しているかどうかを調査する

相続人が把握していない不動産を所有していた可能性がある場合には、名寄帳(土地家屋台帳や固定資産税台帳)を市区町村役場から取り寄せて、所有不動産の一覧を手に入れる方法で調査することが一般的です。名寄帳で目星を付けた後は、各不動産の登記簿謄本や公図を取得して、さらに詳しい調査を行います。

(5) 預貯金について調査する

一部の預貯金通帳が遺品整理で発見されないケースは、珍しくありません。その場合、どの金融機関に口座を持っていたかを確認するために、普段利用していた金融機関口座の取引履歴明細や払戻伝票などを取り寄せて、手がかりを探る方法があります。

このような調査を進めることで、預貯金通帳を網羅的に探すだけではなく、他の相続人が(1)不当に預貯金を引き出していないか、(2)多額の生前贈与を受けていないか、といった情報を得られることもあります。

(6) 株式などの有価証券について調査する

遺品整理の中で、証券会社からの書類が残っていないか、預貯金通帳や金融機関口座の取引履歴明細に証券会社の入出金がないか、本人作成のメモに手がかりがないかといった情報から、証券会社の口座の有無について見立てをします。そのうえで、証券会社に有価証券の残高などを照会します。

(7) 保険加入について調査する

遺品整理の中で、保険会社の書類が残っていないか、預貯金通帳や金融機関口座の取引履歴明細に保険会社への入金(保険料の支払)がないか、本人作成のメモに手がかりがないかといった情報から、保険加入の有無について見立てをします。そのうえで、保険会社に契約の有無を照会します。

(8) 価値のある動産類について調査する

価値のある動産類は、自宅に保管している場合のほか、貸金庫に保管しているケースもあります。貸金庫を生前に利用していた可能性がある場合は、金融機関に問い合わせて、貸金庫契約の有無を確認する必要があります。

(9) 借金や保証の有無について調査する

信用情報機関(CIC・JICC・全銀協)から信用情報を取り寄せることで、過去に利用したクレジット利用・キャッシング・ローンなどの情報を知ることができます。相続人として、亡くなった方の信用情報を取り寄せることができますので、まずは、信用情報の取り寄せから進めるケースが多いです。

もっとも、信用情報では、知人・勤務先からの借入れなどは把握することができません。確実にすべての借金や保証を調査するためには、信用情報の取り寄せだけでは足りず、遺品整理で契約書が保管されていないかを探すことも重要です。

その他、不動産登記簿謄本から、ローンの有無を確認する方法もあります。

(10) その他の調査方法

その他、亡くなった方が作成した家計簿や日記、SNSの投稿などから、手がかりが見つかることもあります。亡くなった方の生前の暮らしを思い出しながら、調査を進めることが重要です。

3.相続財産の調査は弁護士に依頼できます

相続財産の調査をすべてご自身だけで進めるのは大変です。相続財産の調査は、弁護士に依頼することができます。

弁護士であれば、経験と知識に基づいて、円滑に相続財産の調査を進めることができます。

また、弁護士であれば、弁護士会照会という方法で一般の方ができない調査を行ったり、他の相続人と遺産分割の交渉を進めながら相続財産の開示を求めたりと、専門家ならではの調査をすることができます。

相続財産の調査についてお困りの際は、ぜひ「みお神戸」の弁護士にご相談ください。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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