弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2024.07.22
遺産相続のトラブル

遺言書の検索方法について弁護士が解説

弁護士 石田 優一

弁護士 是永 淳志

1 遺産分割の話合いを進める前に遺言書の検索を

ご親族が亡くなったときは、その遺産をどのように分けるか、相続人同士での話合い(遺産分割協議)を進める必要があります。その際にしなければならないことは、「遺言書の検索」(遺言書が残っているかどうかを探すこと)です。

もしかすると、亡くなったご親族が、「遺言書」を残しているかもしれません。なぜ、事前に遺言書を探しておかなければならないのか、理由をいくつかご紹介します。

(1) もう一度話合い(遺産分割協議)をやり直さなければならないケースがあるから

遺産分割の話合いが終わった後(遺産分割協議が整った後)で、遺言書が見つかった場合に、必ずその話合いで決めたことが無効になるわけではありません。話合いに参加した相続人全員が、「遺言書のとおりにせず、話合いをした内容どおりで進める」ことを合意すれば、遺言書どおりに分ける必要はなくなります。

もっとも、相続人のだれかが、「遺言書が見つかったのであれば、遺産分割協議もやり直すべきだ!」と主張すれば、紛争に発展してしまいます。

また、次のようなケースでは、問題が生じます。

母親が亡くなり、私と妹で、遺産を2分の1ずつ分けることで、遺産分割の話合いを終えました。ところが、しばらくして、母親が遺言書を作成していたことが分かりました。その遺言書には、「遺産のすべてを弟(私のおじ)に遺贈します。」と書かれていました。

このように遺言書に書かれていた場合、(遺留分の問題はありますが)そもそも私と妹は遺産を受け取れなかったわけですので、遺産分割協議が無効と判断される可能性が高いです。

遺言書を探しておかなかったせいで、遺産分割協議をやり直さないといけなくなったり、遺産分割協議をした意味がなくなったりすることがあります。

(2) 遺産分割での争いがすべてムダになってしまうケースがあるから

遺産分割で親族ともめてしまうケースは、珍しくありません。遺産分割をめぐって親族間で対立し、険悪な関係に発展した後で、もし遺言書が見つかったら・・・。「遺言書があることが分かっていれば、こんなに親族同士で争う必要はなかったのに・・・」と後悔します。

このようなことにならないためにも、遺産分割の話合いを始める前に、「遺言書の検索」をしておくことは、大変重要です。

2 遺言書の検索はどのように進めればよい?

(1) 自宅を探す

まずは、遺品整理と同時に、亡くなった方のご自宅を探してください。例えば、タンスや、机、書類棚などに、遺言書が残されているかもしれません。ご自宅に金庫がある場合は、必ずその中身を確認してください。

もし、遺言書を見つけたときは、必ず、家庭裁判所で「検認」という手続をしなければなりません。封がされてれば、その場で絶対に封を開けないでください。この場合は、家庭裁判所での検認手続の中で、開封をしなければなりません。

(2) 貸金庫を探す

遺言書を、銀行や信用金庫などの貸金庫に預けているケースもあります。貸金庫がある場合は、相続人全員の承諾を得たうえで、貸金庫を開扉してください。貸金庫の中に遺言書が入っていたときは、家庭裁判所での検認手続を忘れずに進めてください。

(3) 公証役場に問い合わせる

遺言(公正証書遺言)を公証役場で作成している場合は、公証役場に問い合わせることで、その有無を確認することができます。問い合わせ先の公証役場は、遺言を作成した公証役場でなくても差し支えないです。全国どこからでも、検索することができます。

例えば、相続人が自分で検索する場合に必要な書類は、おおむね次のとおりです。

・遺言を残した人が亡くなったことを証明する書類(除籍謄本など)

・相続人であることを証明する戸籍謄本

・本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど)

公証役場によって少しずつ運用が異なるケースがありますので、事前に公証役場に確認されることをおすすめします。

(4) 法務局に問い合わせる

新しく始まった「自筆証書遺言書保管制度」に基づいて、法務局に遺言書が保管されていないかも、確認が必要です。

「遺言書保管事実証明書」を法務局で取り寄せれば、遺言書が保管されているかどうかを確認することができます。

例えば、相続人が自分で「遺言書保管事実証明書」を取り寄せる場合に必要な書類は、おおむね次のとおりです。

・遺言を残した人が亡くなったことを証明する書類(除籍謄本など)

・相続人であることを証明する戸籍謄本

・本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど)

3 お困りの際は弁護士にご相談ください

遺言書の検索についてお困りの際は、弁護士にご相談ください。弁護士にご依頼いただければ、必要書類の取り寄せや、公証役場・法務局への問い合わせを、すべて一任することができます。

また、遺言書がない場合には、引き続き、他の相続人との遺産分割の話合い(遺産分割協議)について、サポートさせていただくことができます。

その他、弁護士であれば、相続人の所在が分からない場合の調査や、相続財産の調査など、その他の様々な手続に、ワンストップで対応することができます。

遺産相続のことでしたら、お気軽に、「みお神戸」の弁護士にお問い合わせください。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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