離婚調停に初めて出席する前に準備しておきたいこと(弁護士解説)
弁護士 石田 優一
パートナーとの別居中、家庭裁判所から離婚調停への呼出しが・・・
パートナー(夫・妻)と不仲になって別居中、家庭裁判所から離婚調停への呼出しを受けて、「どうすればよいか分からない・・・」とお困りの方へ。弁護士の立場から、離婚調停に初めて出席する前に知っておきたいこと/事前に準備しておきたいことをアドバイスいたします。
離婚調停とは?
離婚調停とは、裁判所において、夫婦間で離婚についての話合いを進めるための手続です。
「調停」は、裁判所での手続ではありますが、よくテレビドラマで目にするような「法廷」での手続ではなく、机と椅子の置かれた小さな部屋で進められることが一般的です。調停委員2名(+裁判官)とお話しをしながら、手続が進んでいきます。
裁判所の公式サイトで、「ご存知ですか?家事調停」というビデオが公開されています。こちらのビデオを視聴すれば、離婚調停のイメージを知ることができます。
離婚調停の進め方は、ケースによって少しずつ異なりますが、大きな流れは共通しています。離婚調停がどのような手順で進んでいくかをあらかじめ理解しておけば、安心して、第1回の調停期日に臨むことができます。
離婚調停の大きな流れ
離婚調停において、調停委員は、次のような流れで話を進めていきます。
1.手続についての説明
まずは、調停委員から、離婚調停とはどのような手続か、簡単な説明があります。
2.離婚に対する意思の確認
まずは、離婚について応じるつもりか/応じないつもりか、意思を確認されます。仮に、離婚について全く話合いを進める余地がないと裁判所が判断した場合は、その後のステップには進まず、調停不成立で終了します。離婚が調停不成立で終わった場合には、離婚を求める側が、「裁判」で争ってくることが一般的です。
3.離婚条件についての意向確認
お互いに離婚に応じる意向がある場合には、具体的な離婚条件について意向を確認されます。離婚条件とは、具体的には次のようなものです。
(1) 財産分与 (2) 子どもの養育費 (3) 親権 (4) 子どもとの面会交渉 |
その他、慰謝料を請求するか、年金分割を請求するかについても、意向を確認されます。
4.夫婦間の意向の調整
夫婦それぞれの離婚条件に対する意向が明らかになった後は、調停委員が意見を述べながら、2人の考えの一致を目指して、調整を図ります。裁判官から、「裁判所としてどのような解決がよいと考えるか」について、意見が示されるケースもよくあります。
5.調停の成立
最終的に、夫婦間の考えが一致したら、その内容を裁判所が「調停条項」にまとめて、調停が成立します。
大まかな流れは、以上のとおりです。もっとも、調停が1回の期日で完結することは珍しく、多くのケースでは、何回の期日を重ねて調停成立に至ることがほとんどです。調停期日は、1~2か月に1回ほどのペースで開かれます。
離婚調停の前に準備しておきたいこと
第1回の調停期日に出席する前に、あらかじめ準備しておくとよいことを、ご紹介します。
1.離婚に応じるかどうかを考えておく
第1回の調停期日において必ず確認されるのが、「離婚に応じる意思があるかどうか」です。回答は、次の3パターンです。
(1) 「離婚に応じる」と(はっきり)伝える (2) 「離婚条件次第」と伝える (3) 「離婚に応じる気はない」と伝える |
さて、この3パターンのうち、どれを選択すべきでしょうか。
(1) 「離婚に応じる気はない」と伝えるべき場合
パートナーから離婚調停の申立てをされたからといって、必ずしも離婚に応じる必要はありません。「離婚に応じる気はない」とはっきり意思を伝えれば、離婚調停の成立を阻止することができます。
パートナーのほうが収入額が明らかに多く、離婚せずに夫婦関係を継続することで「婚姻費用」(生活費)を請求できる場合、離婚に応じるべきか、慎重に考えるべきです。離婚が成立すれば、当然ながら、「婚姻費用」(生活費)を受け取ることができなくなるためです。
また、「夫婦関係の修復をしたい」思いが強く、すぐに離婚に踏み切れない場合も、「離婚に応じる気はない」とはっきり意思を伝えるべきです。
ただし、別居期間が長期化しているケースは、たとえ離婚調停が不成立に終わっても、離婚裁判で離婚が認められます。その点も踏まえて、「離婚に応じる気はない」と伝えることが最善の選択肢かどうか、じっくり検討する必要があります。
(2) 「離婚に応じる」と(はっきり)伝えるべき場合
「離婚に応じる」とはっきり伝えるべきケースは、「何よりも早く離婚すること」を優先したいときです。夫婦関係が悪化しており、できる限りパートナーとの関係性を早期に解消したいのであれば、当初の段階から「離婚に応じる」とはっきり伝えることが適切です。
ただし、離婚条件について争いたい点があれば、すぐに「離婚に応じる」と伝えることは望ましくありません。「離婚条件次第」と回答し、「条件が悪ければ離婚は受け入れられない」と主張する余地を残すべきです。
(3) 「離婚条件次第」と伝えるべき場合
(1)「離婚に応じる気はない」と伝えるべきケース/(2)「離婚に応じる」と(はっきり)伝えるべきケースのいずれでもないと感じたときは、「離婚条件次第」と回答すべきです。「迷ったら「離婚条件次第」と回答する!」と思っていただいて、間違いはないと思います。
2.離婚条件について調停委員に伝えたいことを考えておく
第1回の離婚調停に臨む前に、離婚条件についてどのようなことを調停委員に伝えたいか、イメージを持っておくことが大切です。離婚条件のイメージを考える際、次のようなことを意識するとよいです。
(1) パートナーがどのような財産を持っているか-財産分与の問題
離婚調停においては、パートナーが自己の財産を誠実に開示しないケースも珍しくありません。このような可能性も考えたうえで、あらかじめ、「パートナーがどのような財産を持っているか」をリスト化しておくことをおすすめします。
財産分与の対象となる財産には、現金・預貯金・不動産・車などのほか、将来受け取れる退職金や、加入している保険なども含まれます。
(2) (購入した自宅がある場合)自宅をどうしたいか-財産分与の問題
財産分与で争いになりやすいのが、購入した自宅のことです。自宅については、売却して金銭化するか、あるいは、維持して夫婦のいずれかが居住し続けるかについて、夫婦間で考えが対立することがよくあります。円滑に離婚調停を進めるうえでは、「購入した自宅をどうしたいか」について、明確に考えを伝えておくことが大切です。
(3) 養育費をいくら受け取りたい/支払えるか
養育費についても、いくら受け取りたいか、あるいは、いくらであれば支払えるか、イメージを持ったうえで調停期日に臨むことをおすすめします。養育費については、裁判所が公開する「養育費・婚姻費用算定表」で相場額を概算することができます。
あらかじめ相場額を概算したうえで、養育費として受け取りたい(支払える)金額をイメージしておくことをおすすめします。
ただし、パートナーの収入額が不明瞭な場合は、養育費の相場額を計算することができません。このような場合は、第1回の調停期日において、「まずは、パートナーの収入額を開示してほしい」と伝える必要があります。
(4) その他の離婚条件
その他、「親権は絶対に譲れない」「子どもとの面会(面会交流)についてここだけは譲れない」など、こだわりたい離婚条件がある場合には、第1回の調停期日において、明確に伝えておくことが望ましいです。
3.第1回の調停期日で解決する必要はありません
離婚調停は、1回の調停期日で終わるケースはほとんどありません。通常は、何回も調停期日を重ねて、お互いに譲歩を繰り返して、やっと離婚成立に至ります。
逆に、「絶対に1回の調停期日で終わらせたい」とこだわりを持つと、不利な離婚条件を押しつけられて、後悔する結果になりかねません。
「第1回の調停期日では、自分の考えを最低限伝えられれば十分!」と割り切っておくほうが、納得できる解決につながります。
お困りの際は弁護士にご相談ください
夫婦間の問題は、法律のことだけではなく、感情も絡むため、おひとりですべてを解決することは難しいケースが多いです。離婚調停に不安を感じている方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。
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当事務所では、これまで、離婚・夫婦問題に関する多数のご相談を承って参りました。そのノウハウを活かして、アドバイスを差し上げます。