弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2025.02.26
終活のサポート

デジタル遺産の相続財産調査について弁護士が解説

弁護士 石田 優一

弁護士 是永 淳志

1 デジタル遺産の相続財産調査

ご親族が亡くなった後に、遺産分割や相続税の申告手続を進めるために、相続財産を調査しなければならないケースがあります。相続財産の調査において、最近問題になる機会が増えているのが、「デジタル遺産」の調査です。

「デジタル遺産」とは、亡くなった方がデジタル形式で保管していた財産のことをいいます。電子マネーや、暗号資産、FXなどが、「デジタル遺産」に該当します。今後、NFTなど、新しい「デジタル遺産」が次々に登場することが予想されます。

デジタル遺産を未調査のままで放置していると、遺産分割の終了後に「未分割の遺産」があるとして争いが再燃したり、相続税の申告に誤りがあったとして延滞の扱い(あるいは追徴課税)を受けたりするリスクがあります。

また、(1)亡くなった方に債務がある場合に多額のデジタル遺産の存在を発見できずに相続放棄の判断をしてしまうケース、あるいは、(2)デジタル遺産を把握していないために遺留分の計算を誤ってしまうケースなども想定されます。

このコラムでは、デジタル遺産の相続財産調査について、詳しく取り上げたいと思います。

2 デジタル遺産の調査方法

まずは、デジタル遺産の一般的な調査方法について、ご紹介します。

(1) デジタル機器を確認する

PC、タブレット、スマートフォン、ウェアラブル端末(Apple Watch)などのデジタル機器を開いて、手がかりを探す方法です。これらのデジタル機器の中身を確認することで、暗号資産や電子マネーのアカウント情報など、有力な情報が得られることはよくあります。

例えば、電子メールや、ブラウザのブックマークなどが、手がかりになります。

デジタル機器の中身を確認するために、相続人がログイン上のパスワードを入力しても、不正アクセス禁止法が禁止する不正アクセス行為には該当しません。

ただし、相続人が複数いらっしゃる場合は、相続人全員の承諾を得て(できれば相続人全員の立会いのもとで)中身を確認することをおすすめします。

第1に、デバイス機器によってはパスワードの誤入力を繰り返すことでデータが消去されるケースもあり、他の相続人の理解を得ずに単独で作業を進めることは、リスクが高いからです。

第2に、他の相続人の承諾を得ずに単独で作業を進めると、事後的に、他の相続人から、「データを勝手に消去・改ざんしてデジタル遺産隠しをしていないか?」と疑われる原因になりうるからです。

(2) クレジットカード明細を確認する

電子マネーなどは、クレジットカードでチャージするケースも多く、クレジットカード明細から発見できることがあります。

(3) 携帯電話料金明細を確認する

auPayなど、携帯電話料金と合算で料金を支払うことができるサービスを利用するケースも増えています。携帯電話料金明細を確認することで、電子マネーなどを発見できることがあります。

特に、携帯電話料金が明らかに高額な場合は、このようなサービスの利用可能性が高いです。

(4) 預貯金口座の通帳(入出金明細)を確認する

預貯金口座の入出金情報から、電子マネーのチャージ履歴や、生前に利用していたクレジットカードの存在など、有力な手がかりを発見できることがあります。

3 価値のある相続財産に含まれるデジタル遺産

次に、価値のある相続財産として、遺産分割や遺留分の計算上考慮すべきデジタル遺産について、ご紹介します。

(1) 暗号資産

暗号資産については、一般に価値のある相続財産と考えられます。

(2) 電子マネー

電子マネーも、一般に価値のある相続財産と考えられます。ただし、電子マネーは、規約上現金化が難しいこともあります。この場合は、(遺産分割の場面であれば)相続人の1人が電子マネーのままで取得する方法によらざるを得ません。

(3) FX

FXも、決済後の残高が、価値のある相続財産に該当すると考えられます。

なお、FXについては、短期間で残高が大きく低下し、マイナスとなるケースもありますので、ご本人が亡くなった後、早めに取引を停止することが望ましいです。

4 サブスクサービスの解約問題

観点はズレますが、亡くなった方が動画配信サービスなどのサブスクサービスを利用していた場合、解約忘れが生じ、気づいたときには多額の利用料金が延滞状態になるケースがあります。

相続人としては、クレジットカード明細や携帯電話料金明細、預貯金口座の通帳(入出金明細)などを頼りに、未解約のサブスクサービスがないかを入念に調査することが必要です。

なお、有料課金制のクラウドサービスやメールサービスなどについては、解約することで重要な情報にアクセスできなくなり、相続財産調査を進める際の支障になるケースがありますので、注意が必要です。

5 弁護士の立場からサポートできること

弁護士であれば、デジタル遺産をはじめ、亡くなった方の相続財産調査を承ることができます。

弁護士に相続財産調査を依頼することで、その後の遺産分割、遺留分侵害額請求、相続放棄など必要な法的手続について的確なアドバイスを受け、スムーズに次のステップに進むことができます。

相続のことでお困りの際には、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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