手がかりがない相続財産の調査の進め方を弁護士が解説
- <このコラムでお伝えしたいこと>
- 1 はしがき
- 2 相続財産の調査はなぜ大切なのか
- (1) なぜ相続財産をきちんと調べる必要があるのですか?
- (2) 遺産分割に期限はありますか?(相続開始から「10年」の区切り)
- (3) 相続放棄を考えるときにも財産調査は必要ですか?
- (4) 相続登記の義務化とも関係しますか?
- 3 預貯金の調べ方
- (1) まず何から手をつければよいですか?
- (2) 取引明細書からは何が分かりますか?
- (3) 「全店照会」やゆうちょ・JAはどう調べますか?
- (4) どこの銀行に口座があるか、全く分からないときは?
- (5) 貸金庫の有無も確認すべきですか?
- 4 生命保険の調べ方
- (1) 加入先が分からない生命保険は、どう調べますか?
- (2) 照会制度の注意点(落とし穴)はありますか?
- 5 株式・投資信託の調べ方
- (1) どこの証券会社か分からないときは?(ほふりへの開示請求)
- (2) 手がかりが全くなくても、株式は調べられますか?
- 6 不動産の調べ方
- (1) 不動産はどうやって特定しますか?
- (2) 全国の不動産をまとめて調べる方法はありますか?(所有不動産記録証明制度)
- (3) 相続した空き家を放置するとどうなりますか?
- 7 債務(マイナスの財産)の調べ方
- (1) 借金はどうやって調べますか?
- (2) 信用情報に載らない借金はどうやって見つけますか?
- (3) 借金が多そうで相続放棄すべきか迷うときは?
- 8 弁護士のサポート
- (1) 相続財産の調査を弁護士に依頼するメリットは何ですか?
- (2) 弁護士法人みおには、どんなことを相談できますか?
- <Q&Aまとめ>
- Q1.相続財産の調査は、何から始めればよいですか?
- Q2.遺産分割に期限はありますか?
- Q3.どこの銀行に口座があるか分からない預貯金は、調べられますか?
- Q4.加入先が分からない生命保険は、どう調べますか?
- Q5.どこの証券会社か分からない株式は、調べられますか?
- Q6.全国の不動産をまとめて調べる方法はありますか?
- Q7.借金はどうやって調べますか?
- Q8.相続放棄の期限はいつまでですか?
弁護士 石田 優一
<このコラムでお伝えしたいこと>
亡くなったご家族の相続財産(預貯金・生命保険・株式・不動産)と借金を、見落とさずに調べる方法をまとめました。遺産分割の前に、プラスの財産もマイナスの借金も確定させておくことが大切です。ご自身で進めることに限界を感じたら、早めに弁護士へご相談ください。
1 はしがき
身近なご家族が亡くなり、遺産分割(相続人どうしで遺産の分け方を話し合うこと)を控えている——そんなとき、まず必要になるのが「どんな財産や借金が、どこに、どれだけあるのか」を調べる作業です。これを相続財産の調査といいます。
ところが近年、この調査は以前より難しくなっています。インターネット専業の銀行やネット証券が広がり、取引の通知が郵便で届かず、通帳も手元に残らないことが増えました。キャッシュレス化やプライバシー意識の高まりもあって、ご家族であっても財産の全体像を把握しにくくなっているのです。「通帳と権利証さえ見つかれば大丈夫」と思っていても、思わぬ口座や証券、あるいは借金が後から見つかることは珍しくありません。
しかも、調査や手続を先延ばしにすると、かえって不利になる場面があります。たとえば、後で述べるとおり、相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益や寄与分を反映した取り分を主張できなくなります。また、令和6年(2024年)4月からは、相続した不動産の登記も義務化されました。ですから、相続が起きたら、できるだけ早く財産の全体像をつかむことが大切です。
そこでこのコラムでは、これから遺産分割を控え、相続財産をきちんと確定させたい相続人の方に向けて、預貯金・生命保険・株式・不動産・借金それぞれの調べ方と、見落としを防ぐための注意点をご説明します。
2 相続財産の調査はなぜ大切なのか
(1) なぜ相続財産をきちんと調べる必要があるのですか?
遺産分割は、「分ける対象」がはっきりしていて初めて成り立ちます。財産の一部を見落としたまま話し合いをまとめてしまうと、後から出てきた財産について、改めて分割協議をやり直す必要が生じることがあります。
実際、よく調べないまま遺産分割を終えた後になって、別の預貯金口座や不動産、あるいは借金が見つかる、というケースは世の中で起こり得ます。弁護士が調査に関与すれば財産をしっかり調べますが、そうでない場合には、こうした「後出し」のトラブルが起きやすくなります。ですから、遺産分割の前に、プラスの財産だけでなくマイナスの借金まで、できる限り漏れなく調べておくことが望ましいです。
(2) 遺産分割に期限はありますか?(相続開始から「10年」の区切り)
遺産分割そのものに「いつまで」という期限はありません。しかし、令和5年(2023年)4月1日に施行された民法の改正で、相続開始(被相続人=亡くなった方が亡くなった時)から10年を経過した後に行う遺産分割は、原則として「具体的相続分」ではなく「法定相続分」等で画一的に分けることとされました。
少しかみ砕くと、「具体的相続分」とは、生前贈与を受けていた人の取り分を減らす(特別受益)、あるいは介護などで貢献した人の取り分を増やす(寄与分)といった調整を反映した取り分のことです。民法第904条の3では、相続開始から10年を過ぎると、こうした特別受益・寄与分の主張が原則できなくなり、法定相続分(または遺言で指定された指定相続分)で分けるのが原則になると定められています。政府広報オンラインの解説でも、この点が注意喚起されています。
つまり、財産調査や遺産分割を先延ばしにするほど、本来主張できたはずの取り分を主張できなくなるおそれがあるということです。「まだ先でいい」と思わず、早めに財産を確定させて話し合いに入ることが大切です。
(3) 相続放棄を考えるときにも財産調査は必要ですか?
はい、とても重要です。借金などのマイナスの財産が多い場合には、相続放棄(プラスもマイナスも一切引き継がないという家庭裁判所への申述)を検討することになりますが、その判断には財産と借金の全体像の把握が欠かせません。
ここで注意したいのが期限です。民法第915条では、相続の承認・放棄をすべき期間(熟慮期間)は、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月とされています。この3か月の間に調査が間に合わないこともあります。
とりわけ、疎遠だった親族が亡くなって相続人になった場合には、調査に時間を要することが多いものです。実際のご相談でも、こうしたケースでは、まず家庭裁判所に熟慮期間の伸長(期間を延ばしてもらう申立て)を選択することが少なくありません。時間を確保したうえで落ち着いて調査する、という進め方です。「3か月しかない」と焦って結論を出す前に、伸長という選択肢があることを知っておいてください。
(4) 相続登記の義務化とも関係しますか?
関係します。令和6年(2024年)4月1日から、相続登記(亡くなった方名義の不動産を相続人名義に変更する手続)が義務化されました。政府広報オンラインの解説によれば、不動産登記法第76条の2に基づき、相続人は不動産の取得を知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象になり得ます。
登記をするには、そもそも「どの不動産を相続したのか」を把握していなければなりません。ですから、不動産の調査は、遺産分割のためだけでなく、この登記義務に対応するうえでも欠かせない前提になります。
3 預貯金の調べ方
(1) まず何から手をつければよいですか?
まずは、できることから始めるのが現実的です。ご自宅で通帳・キャッシュカード・銀行からの郵便物を探し、取引先の金融機関に見当をつけます。そのうえで、その金融機関の窓口で亡くなった旨を伝え、残高証明書(亡くなった日時点の残高を証明する書類)を取り付けてください。可能であれば、取引明細書(入出金の履歴)もあわせて取得すると、後述のとおり他の財産の手がかりになります。
ここで、うっかりやりがちな注意点があります。金融機関に「亡くなった」と届け出ると、その口座は凍結され、入出金ができなくなります。もし公共料金など残しておきたい引き落としがあり、かつ通帳が手元にある場合には、あえてすぐには届け出ず、通帳の記帳にとどめておくほうがよいケースもあります。この見極めは事情によって変わりますので、迷ったときは弁護士に相談できる状況にしておくと安心です。
(2) 取引明細書からは何が分かりますか?
取引明細書は、他の財産や借金を見つけるための「宝の地図」になります。具体的には、次のような点に注目します。
第一に、ほかのご自身名義の口座への振込の形跡です。実際のご相談の現場でも、自分名義の口座間で入出金が多い方は、口座を使い分けていることが多く、財産をあれこれお持ちであったり、逆に借金が複数あったりする可能性を疑って調べます。振込先が見つかれば、その金融機関・支店にも残高証明書等の取り付けを行います。
第二に、証券会社との入出金です。株式や投資信託を保有していた手がかりになります。第三に、定期的な引き落としや振込です。ローンや個人的な借金など、債務を支払っていた形跡が見えてくることがあります。
なお、明細は、可能であれば10年分ほどさかのぼって取り寄せるのが望ましいです。生前贈与(特別受益)の手がかりになることもあり、前述の遺産分割の場面でも役立つためです。
(3) 「全店照会」やゆうちょ・JAはどう調べますか?
同じ銀行の別の支店にも口座があるかもしれません。そこで、一つの金融機関に、その銀行の全支店にまたがる口座の有無を調べてもらう「全店照会」を依頼するとよいでしょう。以前は対応してもらえないことも多かったのですが、最近は全店照会に応じてもらえるケースが増えています。
あわせて、ゆうちょ銀行やJAバンク(農協)の口座調査もお願いしてください。ただし、ゆうちょ銀行は他の銀行に比べて手続が複雑になりがちですので、窓口とよく相談しながら進めるとスムーズです。
(4) どこの銀行に口座があるか、全く分からないときは?
手がかりがまったくないときの選択肢として、「相続時の口座照会」があります。デジタル庁の案内によれば、令和6年(2024年)4月に施行された「口座管理法」(正式名称は長いですが、マイナンバーで預貯金口座を管理できるようにする法律です)に基づく仕組みで、令和7年(2025年)4月から本格的に使えるようになりました。
これは、亡くなった方が生前にマイナンバーと口座を結び付けていた場合に、相続人が一つの金融機関の窓口で申請すると、預金保険機構を通じて複数の金融機関に口座の有無を照会してもらえる、というものです。ただし、開示されるのは口座がある金融機関などの情報までで、残高は別途、各金融機関に残高証明書を請求して確認します。
もっとも、すべての口座をマイナンバーに結び付けている方は多くありません。ですから、この制度で網羅的に把握するのは難しいのが実情で、実務では「ほかにとっかかりが全くないときに、ひとまず当たってみる」という位置づけになります。過度に期待せず、あくまで手がかりの一つとお考えください。
(5) 貸金庫の有無も確認すべきですか?
はい。預貯金の調査とあわせて、貸金庫の有無も確認してください。貸金庫は、メインで使っている銀行と契約していることが多いので、まずはその銀行を当たれば見つかることが多いです。取引明細に貸金庫の使用料の引き落としがないかも、手がかりになります。
貸金庫からは、思いがけない財産が出てくることがあります。これまでお受けしたご相談でも、貸金庫から古い硬貨(古銭)が見つかり、鑑定を検討したことがありました。とくに疎遠だった方が亡くなった場合には、相談者がまったく知らなかった財産が出てくることも、ときどきあります。「知らないから無い」とは限らない、という前提で調べることが大切です。
4 生命保険の調べ方
(1) 加入先が分からない生命保険は、どう調べますか?
亡くなった方がどの生命保険に入っていたか分からない場合には、生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」が役立ちます。政府広報オンラインの解説によれば、令和3年(2021年)7月から始まった制度で、法定相続人などが申請すると、協会が加盟する各生命保険会社に対して契約の有無を一括で照会してくれます。
生命保険協会の案内によれば、死亡による照会の利用料は、対象となる方1名につきオンライン申請で6,000円、書面申請で7,000円(いずれも税込)です。分かるのは「契約の有無(と保険会社)」までで、契約内容の確認や保険金の請求は、判明した各保険会社に対して個別に行います。結果が出るまでにはおおむね2週間程度かかります。
なお、この制度で相続人の代理人になれるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られ、税理士は代理人になれない点にも留意が必要です。相続手続とあわせて弁護士に任せることもできます。
(2) 照会制度の注意点(落とし穴)はありますか?
この制度は便利ですが、万能ではありません。生命保険協会の案内によれば、すでに支払が開始した年金保険や、保険金が据え置きになっている契約などは、照会の対象にならないとされています。つまり、照会に出てこないからといって「保険は無い」と言い切れないのです。
ですから、照会制度に頼りきりにせず、やはり預貯金の取引明細をよく調べて、保険料の引き落としの形跡がないかを突き合わせていくことが大切です。制度と明細調査の「両輪」で確認する、と考えておくと見落としを防げます。
5 株式・投資信託の調べ方
(1) どこの証券会社か分からないときは?(ほふりへの開示請求)
上場株式や投資信託は、いまは紙の株券ではなく、証券会社の口座で電子的に管理されています。そのため、証券会社が分からないと手続が進みません。そこで使うのが、証券保管振替機構(通称「ほふり」)への「登録済加入者情報の開示請求」です。社債、株式等の振替に関する法律(振替法)に基づく手続で、郵送で申請します。
この開示請求をすると、亡くなった方名義の上場株式等の口座がある証券会社・信託銀行の一覧が分かります。証券保管振替機構の案内によれば、費用は1件6,050円(法務局が発行する法定相続情報一覧図を提出すれば4,950円)、結果が届くまでおおむね1か月ほどです。なお同機構では、令和8年(2026年)10月1日付で費用を改定する旨の案内も出ています。
ただし、分かるのは「どの証券会社・信託銀行に口座があるか」までで、銘柄や残高までは分かりません。ですから、判明した各社に対して、あらためて残高証明書などを請求してください。取引明細に配当金の入金や証券会社との入出金があれば、そこからも手がかりが得られます。
(2) 手がかりが全くなくても、株式は調べられますか?
調べられます。むしろ、今後はほふりへの開示請求が必要になる場面が増えていくと考えられます。というのも、証券会社からの通知はオンライン化が進み、郵便物が手がかりになりにくくなっているうえ、プライバシー意識の高まりから、有価証券を持っていても周囲に話さない方が増えているためです。
加えて、新しいNISA(少額投資非課税制度)の開始で、証券口座を持つ方自体が増えています。ご家族もまったく把握していない証券口座が残っている、という事態は今後さらに起こりやすくなるでしょう。「株はやっていなかったはず」と決めつけず、疑わしければ開示請求で確認しておくと安心です。
6 不動産の調べ方
(1) 不動産はどうやって特定しますか?
まずは、権利証(登記識別情報)や、毎年届く固定資産税の納税通知書を手がかりに、不動産の所在に見当をつけます。そのうえで、法務局で登記情報(登記事項証明書)を調べたり、市区町村役場で名寄帳(なよせちょう。その市区町村内で同じ人が持つ不動産を一覧にした台帳)を取り寄せたりして、所有していた不動産を確認していきます。
調査の入口では、亡くなった方の住所や本籍からあたりをつけるのが基本です。加えて、相談者が持っているわずかな記憶——「田んぼを持っていたかもしれない」「古い家を相続していたかもしれない」といった『かもしれない』情報が、実は有力な手がかりになります。心当たりを一つずつ確認していくことが大切です。
(2) 全国の不動産をまとめて調べる方法はありますか?(所有不動産記録証明制度)
従来の名寄帳は、その市区町村内の不動産しか一覧化できず、複数の市区町村に不動産がある場合は、役場ごとに取り寄せる必要がありました。網羅するのはなかなか大変な作業です。
そこで新たに始まったのが「所有不動産記録証明制度」です。法務省のウェブサイトの説明によれば、不動産登記法第119条の2に基づき、令和8年(2026年)2月2日から始まった制度で、特定の人が全国に所有する(登記名義人となっている)不動産を、一覧にして証明してもらえます。相続人などが請求でき、全国どこの法務局でも(オンラインでも)手続が可能で、手数料は窓口請求で1通あたり1,600円です。全国を横断して調べられる点は、実務上も大きな助けになります。
ただし、注意点もあります。法務省の説明によれば、請求時に指定する氏名・住所と、登記簿上の氏名・住所が一致していない不動産は抽出されないとされています。また、登記されていない建物(未登記建物)も出てきません。ですから、この制度だけに頼らず、これまでどおり名寄帳や固定資産税の通知書とあわせて確認するのが確実です。
(3) 相続した空き家を放置するとどうなりますか?
調査の結果、誰も住まない実家などの空き家が見つかることもあります。空き家は、放置するほど建物が傷み、管理の負担や近隣トラブルのもとになります。「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、「特定空家等」や「管理不全空家等」(適切に管理されず、放置すれば特定空家になるおそれのある空き家)に指定され、市区町村から改善の勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする「住宅用地特例」の対象から外れ、税負担が大きく増えるおそれもあります。
前述のとおり、神戸市では所有者不明の空き家が深刻な課題となっており、市が国の制度を活用して対応に追われています。相続財産をきちんと調べ、名義を整理し、活用や処分の方針を早めに決めておくことが、こうした事態を防ぐことにつながります。なお、神戸市では、一定の要件を満たす老朽空き家の解体費用を補助する制度も設けられています(年度ごとに募集期間や要件が定められます)。空き家に関する公的な支援は、お住まいの自治体によって取扱いが異なりますので、詳しくは各自治体の窓口でご確認ください。
7 債務(マイナスの財産)の調べ方
(1) 借金はどうやって調べますか?
プラスの財産だけでなく、借金の調査も欠かせません。まずは、信用情報機関から信用情報(クレジットやローンの契約・残高などの情報)を取り寄せます。具体的には、CIC、JICC(日本信用情報機構)、全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター)の3機関です。
取り寄せた信用情報に事業者(貸主)の記載があれば、その事業者に相続人として直接連絡し、借金の額を確認します。あわせて、預貯金の取引明細から、定期的に引き落とし・振込がされている事業者が見つかれば、そこにも照会をかけて確認します。
(2) 信用情報に載らない借金はどうやって見つけますか?
ここが実務上の難しいところです。個人どうしの貸し借り(借用書)、連帯保証、事業上の買掛金などは、信用情報には載りません。実際、この点は相談者からよく尋ねられるテーマでもあります。
こうした「信用情報に出てこない借金」は、結局のところ、金融機関の取引明細をよく調べて、定期的な引き落としや振込から、あたりをつけていくことになります。ここでも、明細を丁寧に読み込む作業が効いてきます。
(3) 借金が多そうで相続放棄すべきか迷うときは?
借金がプラスの財産を上回りそうな場合には、相続放棄を検討します。もっとも、前述のとおり、相続放棄には原則3か月という熟慮期間の制約があります(民法第915条)。
調査に時間がかかりそうなときは、家庭裁判所への熟慮期間の伸長の申立てで時間を確保したうえで、じっくり借金の有無を調べる、という進め方が有効です。この伸長を申し立てるかどうか、いつ申し立てるかといった判断は、専門家でないと見極めが難しい場面ですので、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
8 弁護士のサポート
(1) 相続財産の調査を弁護士に依頼するメリットは何ですか?
ここまでご説明してきたとおり、相続財産の調査は、戸籍を一式そろえたうえで、預貯金・生命保険・株式・不動産・借金について、各機関に一つずつ照会をかけていく地道な作業の積み重ねです。慣れていない相続人の方にとっては、途方に暮れてしまう作業だと思います。
たしかに、令和6年(2024年)3月から始まった戸籍の広域交付(本籍地以外の市区町村でもまとめて戸籍を取得できる仕組み)により、戸籍集めは以前より効率化されました。とはいえ、集めた戸籍をもとに各機関へ照会し、結果を突き合わせていく作業は、なお負担の大きいものです。
弁護士に依頼する大きなメリットは、これらの調査を代行できるだけでなく、その後の遺産分割協議の交渉や、相続放棄の手続まで、切れ目なくつなげられる点にあります。前述の口座凍結を避けるための判断や、熟慮期間の伸長の要否・タイミングといった、時間との勝負になる見極めも含めて、方針を立ててサポートできます。
(2) 弁護士法人みおには、どんなことを相談できますか?
弁護士法人みおでは、相続財産の調査から、その後の遺産分割・相続放棄までを見据えたご相談をお受けしています。調査だけで終わらせず、その先の解決までを一貫してサポートできるのが強みです。困ったことは、弁護士に相談するのが一番です。ご自身で進めることに限界を感じたタイミングで、どうぞお気軽にご相談ください。
<Q&Aまとめ>
Q1.相続財産の調査は、何から始めればよいですか?
A1.まずは自宅の不動産の登記や、預貯金の通帳・郵便物の確認など、できることから始めます。金融機関に死亡を届け出ると口座が凍結されるため、残しておきたい引き落としがあり通帳が手元にある場合は、記帳にとどめるほうがよいこともあります。迷ったら弁護士にご相談ください。
Q2.遺産分割に期限はありますか?
A2.遺産分割自体に期限はありませんが、民法第904条の3により、相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益・寄与分を反映した具体的相続分の主張ができなくなります。早めに財産を確定して話し合いに入ることが大切です。
Q3.どこの銀行に口座があるか分からない預貯金は、調べられますか?
A3.亡くなった方が生前にマイナンバーと口座を結び付けていれば、口座管理法に基づく相続時の口座照会で、複数の金融機関の口座の有無を確認できます。ただし紐付けをしていない口座は対象外なので、あくまで手がかりの一つとお考えください。
Q4.加入先が分からない生命保険は、どう調べますか?
A4.生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で、加盟各社への契約の有無を一括照会できます。死亡による照会の利用料はオンライン6,000円・書面7,000円(税込)です。分かるのは契約の有無までで、支払開始済みの年金保険などは対象外です。
Q5.どこの証券会社か分からない株式は、調べられますか?
A5.証券保管振替機構(ほふり)への「登録済加入者情報の開示請求」で、口座のある証券会社・信託銀行が分かります。費用は1件6,050円(法定相続情報一覧図の提出で4,950円)です。銘柄や残高は分からないため、判明した各社に残高証明書を請求します。
Q6.全国の不動産をまとめて調べる方法はありますか?
A6.令和8年(2026年)2月2日から始まった「所有不動産記録証明制度」を使うと、全国の不動産を一覧で証明してもらえます。手数料は窓口請求で1通1,600円です。ただし氏名・住所が登記簿と一致しない不動産や未登記建物は出てこないため、名寄帳等との併用が確実です。
Q7.借金はどうやって調べますか?
A7.CIC・JICC・全国銀行協会の3つの信用情報機関から信用情報を取り寄せ、記載された事業者に相続人として照会します。個人間の借金や保証は信用情報に載らないため、預貯金の取引明細から引き落とし・振込の形跡を確認します。
Q8.相続放棄の期限はいつまでですか?
A8.民法第915条により、原則として相続の開始を知った時から3か月です。調査が間に合わないときは、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てて時間を確保する方法があります。判断に迷う場合は早めに弁護士へご相談ください。





