弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2026.07.14
会社・法人破産

会社の経営に限界を感じたら-破産で再出発を目指す

目次

弁護士 石田 優一

<このコラムでお伝えしたいこと>

会社の破産は、経営者の人生の終わりではなく、やり直しのための手続です。追い込まれる前に早めに動くほど、従業員への支払いや手元に残せる財産の面で、守れるものが増えます。本コラムでは、会社をたたむ決断に直面した経営者が知っておきたい要点を、実務の視点からご説明します。

1 はしがき

「もう続けられないかもしれない」。そう思い始めても、多くの経営者はぎりぎりまで踏みとどまろうとされます。長く続けてきた会社を、自分の手で終わらせる決断は、それほど重いものだからです。

2026年上半期(1〜6月)の兵庫県内の企業倒産は327件にのぼり、300件を超える高い水準が続いています。とりわけ、物価高を価格に転嫁しにくい小規模の小売業や卸売業などで、事業の継続を断念するケースが目立っています。

もっとも、会社をたたむことは「すべてを失うこと」でも「人生の終わり」でもありません。会社の破産は、むしろ経営者ご自身が生活を立て直し、もう一度前を向くための制度でもあります。

このコラムでは、会社の破産とはどのような手続なのか、経営者個人はどうなるのか、そして破産をしても人生をやり直せるのはなぜかを、順にご説明します。

2 会社の「破産」とは、そもそも何ですか?

会社の破産(法人破産)とは、支払いができなくなった会社の財産を、裁判所が選んだ破産管財人(財産の管理・換価・配当を担う人)が処分し、債権者に公平に分配したうえで、会社の法人格そのものを消滅させる手続です。会社は最終的に無くなり、残った会社の借金も会社の消滅とともに消えます。

(1) 「倒産」と「破産」はどう違うのですか?

「倒産」は法律上の用語ではなく、会社が資金繰りに行き詰まって事業を続けられなくなった状態を、広くまとめて呼ぶ言葉です。これに対して「破産」は、破産法に基づく正式な裁判上の手続を指します。

つまり、倒産という大きな入れ物の中に、破産という具体的な手続の一つがある、という関係です。会社をたたむ方法には、ほかにも私的な話し合いによる整理などがありますが、負債が資産を上回り、返済のめどが立たない場合には、破産が中心的な選択肢になります。

(2) 会社が破産すると、従業員や取引先はどうなりますか?

従業員との雇用関係は、会社の破産によって終了します。ここで重要なのが、給料の未払いや、解雇予告手当(解雇の30日前に予告しない場合に支払う手当。労働基準法20条は、30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いを義務づけています)を、きちんと払える状態を保てるかどうかです。

実際のご相談では、事業をぎりぎりまで続けた結果、解雇予告手当を用意できないところまで資金が尽きてしまう例が少なくありません。反対に、まだ資金に余裕がある段階で動けば、給料も解雇予告手当も不払いを出さずに、従業員に禍根を残さず辞めていただけることもあります。この差は、相談の時期の早さから生まれます。

なお、従業員への告知は、原則として破産の直前まで控えることが多いです。なぜなら、事前に広く伝わると、出社されなくなったり、会社の資産が持ち出されたりして、破産の申立てを円滑に進められなくなるおそれがあるからです。ただ、経理や総務など、手続の準備に早い段階から関わっていただく必要のある方は例外で、事情をお話しして協力を求めることになります。

(3) 破産を決めたら、やってはいけないことは何ですか?

一番留意すべきなのは、特定の相手にだけ先に支払ってしまうこと(偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼びます)です。実際のご相談でも、「身内にだけは返したい」「長く付き合ってきた取引先にだけは返しておきたい」というお気持ちをうかがうことは、本当によくあります。

しかし、こうした支払いは、後で破産管財人による否認権の行使(破産法160条以下が定める、不公平な財産処分をなかったことにする権限)の対象になり、かえってその相手に返還を求める形で迷惑をかけてしまうことがあります。また、不自然な資金の動きは、経営者ご自身の責任(会社に対する損害賠償責任など。会社法423条等)を問われるきっかけにもなりかねません。

身内や資産を自分の手元へ移す、帳簿をあいまいにする、といった行為も同じく問題になります。良かれと思った対応が裏目に出ないよう、支払いや資産の扱いは、動く前に弁護士に相談することをおすすめします。

3 会社が破産すると、経営者個人はどうなりますか?

会社と経営者個人は、法律上は別の人格です。ですから、会社の借金を、社長が当然に肩代わりするわけではありません。もっとも、実際には、経営者個人も破産を検討することになる場合が多く、その理由の中心が「連帯保証」です。

(1) 会社の借金は、社長個人も背負うのですか?

会社が金融機関などから融資を受ける際、経営者が連帯保証人になっていることがよくあります。連帯保証人は、主債務者である会社が返せなくなったとき、会社に代わって返済する義務を負います(民法446条以下。連帯保証には、まず会社に請求してほしいと主張する催告の抗弁などが認められません。民法454条)。

そのため、会社が破産して借金を返せなくなると、連帯保証をしている経営者個人に請求が向かい、経営者も自己破産などの債務整理を検討することになります。とくに、おひとりで会社を営んでこられた方には、「会社と自分は同じ」という感覚から、この点を意外に思われることが少なくありません。会社と個人は別だからこそ、それぞれについて手続を考える必要がある、という点は丁寧にご理解いただく必要があります。

他方で、「会社が破産したら、社長は会社の負債をすべて個人で背負うのではないか」という漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、真面目に事業をしてこられた経営者が、連帯保証とは別に、役員としての責任(善管注意義務違反による賠償責任など。会社法330条・民法644条、会社法423条)を問われるケースは、実際にはまれです。ただ、著しい放漫経営や粉飾、直前の不自然な資金移動・偏頗弁済があった場合は別で、責任を問われることがあります。

(2) 会社と経営者個人は、一緒に破産したほうがよいのですか?

会社の破産と経営者個人の破産は、同時に申し立てて一緒に進めるのが一般的です。手続を担う破産管財人を共通にでき、生活の立て直しまで含めて見通しを立てやすいからです。

費用の面でも利点があります。神戸地方裁判所を含む関西の裁判所では、法人と代表者個人の破産を同時に申し立てた場合、裁判所に納める費用(予納金)を抑える取扱いがされています。別々に進めるより、経営者の負担が軽くなるということです。もっとも、具体的な金額は事案の規模や内容によって異なりますので、見込みは弁護士にご確認ください。

4 自己破産をすると、何もかも失ってしまうのですか?

「破産をしたら、財産を根こそぎ持っていかれて、路頭に迷うのではないか」。多くの方がそう思い込んでいらっしゃいます。しかし、実際にはそうではありません。破産後の生活を守るために、手元に残せる財産がきちんと法律で用意されています。

(1) 自己破産をしても、手元に残せる財産はありますか?

自由財産とは、自己破産をしても手元に残すことが認められる財産のことです。代表的なものが現金で、99万円までは原則として残すことができます(破産法34条3項1号は、民事執行法131条3号などの差押えが禁止される金額を基準に、手元に残せる範囲を定めています)。生活に欠かせない衣類や家財なども、差押えが禁止される財産として残せます。

さらに、裁判所が個別の事情に応じて、残せる財産の範囲を広げてくれる制度もあります(自由財産の拡張。破産法34条4項)。実際のご相談でも、自由財産の範囲におさまれば、自動車や保険を残せると分かって、ご安心いただける場面はよくあります。ですから、まず「何が残せるのか」を確認することが、生活の見通しを立てる第一歩になります。

(2) 反対に、手放さなければならないものは何ですか?

残せるものがある一方で、手放さざるを得ないものがあることも、正直にお伝えしなければなりません。とくに自宅は、住宅ローンや事業の借入の担保に入っていることが多く、残すのは難しい場合がほとんどです。

また、解約すると返戻金(払い戻されるお金)が生じる積立型の保険は、その返戻金が財産とみなされるため、解約をお願いすることが多くなります。掛け捨ての保険のように、それ自体に財産的な価値がないものはこの限りではありません。何を残せて何を手放すことになるのかは、財産の状況によって変わりますので、早い段階で全体を整理しておくことが大切です。

(3) 会社や個人の借金は、ゼロになるのですか?

経営者個人の自己破産では、最終的に裁判所の免責許可決定(破産法252条)を受けることで、残った借金の支払義務が免除されます。会社の連帯保証による債務も、この免責の対象になります。会社そのものは破産で消滅するため、免責という制度は経営者個人についてのみ問題になります。

一般に、ギャンブルや浪費による借金など、法律が定める免責不許可事由(破産法252条1項各号)があると、免責が認められないことがあります。具体的には、財産を隠したり、一部の債権者にだけ返済したりする行為が、その典型です。もっとも、そうした事情があっても、裁判所の裁量で免責が認められる場合もあります(裁量免責。破産法252条2項)。

ここで大切なのは、破産管財人に対して、財産や経緯を包み隠さず、誠実に伝えることです。なぜなら、取り繕ったりごまかしたりする対応は、免責の判断において大きな不利益につながりかねないからです。正直に向き合い、理解を得ることが、結局はやり直しへの近道になります。

(4) 家族にも迷惑がかかりますか?

「自分が破産したら、妻や子どもにも迷惑がかかるのではないか」というご相談も、よくいただきます。原則として、家族が本人の借金を当然に肩代わりすることはありません。破産の効果は、あくまで破産する本人に及ぶものだからです。

ただし、配偶者が会社の連帯保証人になっている場合は、その配偶者も返済義務を負うことになり、話は別です。ご家族への影響を小さくとどめるためにも、保証関係を早めに確認しておくことが望ましいといえます。

5 自己破産をしても、人生はやり直せるのですか?

ここまで、会社の破産と、経営者個人がどうなるかをご説明しました。ここからは、破産をした後、経営者がどのように人生をやり直していけるのかを、具体的にご説明します。

(1) 破産すると、二度と事業や仕事ができなくなるのですか?

そのようなことはありません。たしかに、破産手続が始まると、一部の資格や職業に一時的な制限がかかります。もっとも、この制限は永久のものではなく、免責許可決定が確定すれば、当然に解除されます(復権。破産法255条1項)。制限を受けるのは、手続が進んでいる数か月程度の期間にとどまるのが通常です。

会社の取締役についても、破産をしたことは、会社法上、取締役になれない事由(欠格事由)とはされていません。破産手続が始まると会社との委任関係はいったん終了しますが、あらためて選任されれば、再び取締役として経営に関わることができます。破産は「経営者としての再起の道」を閉ざすものではありません。

(2) 破産後、また事業を始めることはできますか?

できます。実際に、破産を経てから、新しい事業を立ち上げて再スタートを切る方もいらっしゃいます。ただ、破産後しばらくは、信用情報機関に記録が残るため、新たな借入やクレジットカードの利用が一定期間難しくなる、という現実はあります。

そこで実務では、いきなり借入に頼るのではなく、自己資金でできる範囲から小さく始める形(スモールスタート)が現実的です。しばらくは知人の会社で働いて力を蓄え、時機を見てもう一度独立される方もいらっしゃいます。時間の経過とともに信用も回復していきますので、「一度の破産で、事業家としての人生が終わる」わけではありません。

6 なぜ「早めの相談」が大切なのか?

ここまで読んで、「破産は思っていたより、やり直しに向いた手続なのかもしれない」と感じていただけたなら幸いです。最後に、その「やり直し」を実現するうえで最も大切な、相談の時期についてお伝えします。

(1) なぜ「もう無理だ」と思う前に相談すべきなのですか?

経営者が「もう無理だ」と実感されるときには、すでに手遅れになっていることが少なくありません。適切な相談の時期は、むしろ「このままでは立ち行かなくなるのではないか」と思い始めた、その段階です。あと半年早く相談していただけていれば間に合ったのに、と感じることは、決して珍しくありません。

遅れることの怖さは、具体的です。第1に、税金や社会保険料の滞納があると、裁判を経ずに預貯金などを差し押さえる滞納処分(国税徴収法などに基づく手続)が、ある日突然行われ、資金が一気に尽きてしまうことがあります。第2に、破産の手続にも費用がかかりますが、事業をぎりぎりまで続けた結果、その費用すら残らなくなってしまうこともあります。会社の破産では、個人の債務整理で利用できる法テラスの立替え(民事法律扶助)を使うことはできませんので、費用をどう確保するかは早い段階からの検討課題になります。

早めに動けば、手元に残っている資金のほか、回収が見込める売掛金や、差し入れていた保証金などを、手続の費用や従業員への支払いにあてることができます。ところが、相談が遅れると、せっかく回収したお金を目先の返済にあててしまい、かえって手元が枯渇する、という悪循環に陥りがちです。ここでも、早さがそのまま「守れるもの」の大きさを左右します。

神戸・兵庫という地域に目を向けると、今なお、阪神・淡路大震災のときの借入を返しきれずに苦しんでいらっしゃった末に、破産を検討される方のご相談もあります。抱え込む期間が長くなるほど、選べる道は狭くなります。だからこそ、ひとりで抱え込まず、早めに専門家の目を入れることが大切なのです。

(2) 弁護士に相談すると、何をしてもらえますか?

私たち弁護士は、会社が背負った借金そのものを無かったことにする魔法を使えるわけではありません。ですが、いつ・どのように手続を始めるのが最善かを一緒に見極め、従業員や取引先への対応、裁判所や破産管財人とのやり取りを整えながら、混乱を最小限に抑えて手続を進めるお手伝いをすることはできます。

弁護士に依頼せず、経営者ご自身だけで破産を進めることは、おすすめできません。なぜなら、申立ての不備を破産管財人から細かく指摘されたり、予納金を通常より高く設定されたりして、かえって時間も費用もかさむことがあるからです。

弁護士法人みおでは、会社をどうたたむかにとどまらず、その後の生活をどう立て直していくかまで、経営者の方と一緒に考えることを大切にしています。会社の資金繰りにお悩みの経営者の方は、追い込まれてしまう前に、まずはお気軽にご相談ください。なお、資金繰りや事業再生の相談窓口としては、国が兵庫県に設置した兵庫県中小企業活性化協議会(神戸市内・相談無料)などの公的な窓口もあります。

<Q&Aまとめ>

Q1.会社が倒産すると、社長個人もすべての財産を失うのですか?

A1.いいえ。会社と個人は別の人格であり、また自己破産をしても、現金99万円をはじめ、生活に必要な財産(自由財産)は手元に残せます(破産法34条3項など)。事情によっては自動車や保険を残せることもあります。もっとも、自宅や解約返戻金のある積立型保険は手放すことが多くなります。

Q2.会社の借金は、連帯保証をしていなくても社長が返さなければなりませんか?

A2.原則として、返す必要はありません。会社の借金は会社のものであり、社長個人が当然に肩代わりするわけではありません。経営者個人が返済を求められるのは、その借金を連帯保証している場合(民法446条以下)が中心です。

Q3.自己破産をすると、家族にも影響がありますか?

A3.原則として、家族が本人の借金を肩代わりすることはありません。ただし、配偶者などが会社の連帯保証人になっている場合は、その方も返済義務を負うため、別に対応が必要です。

Q4.自己破産をしても、また会社を経営したり事業を始めたりできますか?

A4.できます。資格や職業の制限は一時的で、免責許可決定が確定すれば解除されます(復権。破産法255条1項)。破産は会社法上の取締役の欠格事由でもないため、あらためて選任されれば取締役に復帰できます。新たに事業を始めることも可能で、実際に再スタートを切る方もいらっしゃいます。ただし、信用情報の回復には一定の期間がかかります。

Q5.会社と社長個人は、一緒に自己破産したほうがよいのですか?

A5.同時に申し立てて一緒に進めるのが一般的です。手続を効率的に進められるほか、神戸地方裁判所を含む関西の裁判所では、同時申立てによって裁判所に納める予納金を抑える取扱いがされています。具体的な費用は事案によって異なります。

Q6.破産を決めたら、親しい取引先や身内にだけ先に支払ってもよいですか?

A6.おすすめできません。特定の相手にだけ支払う偏頗弁済は、破産管財人の否認権(破産法160条以下)の対象となり、その相手に返還を求める形で迷惑をかけたり、経営者の責任を問われたりするおそれがあります。支払いや資産の扱いは、動く前に弁護士にご相談ください。

Q7.弁護士に頼まず、自分で破産手続をしてもよいですか?

A7.おすすめできません。申立ての不備を破産管財人から指摘されたり、予納金を通常より高く設定されたりして、かえって負担が増えることがあります。円滑にやり直すためにも、弁護士への相談をおすすめします。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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