弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2026.07.28
交通事故の問題

お子さまが交通事故の被害に遭ったら?弁護士が解説

弁護士 石田 優一

<このコラムでお伝えしたいこと>

お子さまが交通事故の被害に遭ったご家族に向けて、保険会社と交渉を進める際のポイントなどを解説します。お子さまの不注意でどこまで減額されるのか、収入のないお子さまの将来の収入はどう計算されるのか。裁判例なども踏まえながらご説明します。

1 はしがき

お子さまが交通事故の被害に遭うケースは、後を絶ちません。最近では、令和8年3月、明石市で、歩道を歩いていた小学生の男の子が、店舗に入ろうとした車にはねられて亡くなるという、痛ましい事件が報道されました。

大切なお子さまが交通事故の被害に遭って、大変ショックを受けられている中で、交通事故の損害賠償についても考えていかなければならないことは、大変ご負担の大きいことであると思います。私たち弁護士は、そのようなお気持ちの負担を少しでも軽減するために、お子さまの交通事故事案の解決を全力でサポートいたします。

このコラムでは、お子さまの交通事故事案について、法的にどのようなことが課題になるかを、詳しく解説します。

2 事故の直後に、ご家族が確認しておきたいことは?

(1) 人身事故として届け出ていますか?

まず確認していただきたいのが、警察への届出です。人身事故として扱われると、警察が実況見分を行い、実況見分調書が作成されます。この調書は、後で事故の状況が争いになったときの重要な資料になります。

物損事故のままにしておくと、この調書が作られません。お子さまがけがをされた場合は、必ず人身事故として届け出てください。

(2) 必要な検査は、受けていますか?

後遺障害が問題になりそうな事案では、検査の時期がとても大切です。適切な検査を適切なタイミングで受けていないと、後で後遺障害の程度を争うことが難しくなります。

ご相談の中には、お子さまが検査を嫌がって困っていらっしゃるというお話もあります。小さなお子さまですから、無理もないことです。ただ、将来に備えて、必要な検査は受けていただくようおすすめします。

検査の内容や時期に迷われたときは、その時点で弁護士にご相談いただくのがよいと思われます。

(3) 相手が自転車のときは、どうなりますか?

お子さまの事故では、相手が自動車とは限りません。自転車にはねられることもあります。

自転車には自賠責保険がありません。ですから、相手が保険に入っているかどうかが、賠償を受けられるかどうかを大きく左右します。

この点、兵庫県内では、自転車を利用する人に自転車損害賠償保険等への加入が義務づけられています。「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」13条によるもので、平成27年10月1日から施行されています。兵庫県のホームページでも、加入状況の確認が呼びかけられています。

ですから、相手が自転車のときも、まずは保険の加入状況を確認してください。あわせて、ご家庭で加入されている傷害保険や、自動車保険の人身傷害保険が使えることもあります。保険証券をご確認ください。

3 子どもの「将来の収入」は、どう計算されますか?

ここまで、過失相殺の考え方をご紹介しました。ここからは、賠償額の中心を占める逸失利益についてご説明します。お子さまの事故においては、逸失利益が大きな争点になるケースが珍しくありません。

(1) 逸失利益とは何ですか?

逸失利益とは、事故がなければ将来得られたはずの収入のことです。

お子さまの場合、就労可能な年数が長いため、この逸失利益が賠償額の大部分を占めることが多いです。

(2) 収入のない子どもの「基礎収入」は、どのように算定しますか?

お子さまには、事故のときの収入がありません。それでも、逸失利益が認められないわけではありません。

実務では、賃金センサス(厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした平均賃金の統計)の全年齢平均賃金を基礎収入とするのが原則です。

(3) 障害のある子どもは、減額されてしまいますか?

この点について、近年、大きな判断が示されました。

大阪高判令和7年1月20日の事案は、先天性の障がいがあった子どもが、事故で亡くなったというものです。

大阪高裁は、障がいを理由にした減額を認めませんでした。この判決は、次のような考え方を示しています。

「未成年者の逸失利益に全労働者平均賃金を用いる際、あえて増額または減額して用いることが許容されるのは、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由が存在する場合に限られる」

そのうえで、この事案にはそのような事由がないとして、減額せずに賠償を命じました。

お子さまに障害があることを理由に減額を求められたときは、その主張をそのまま受け入れるべきではありません。

(4) 進学の見込みは、考慮されますか?

基礎収入は、原則として学歴計の平均賃金です。もっとも、大学を卒業する蓋然性が高いと認められる場合には、大卒の平均賃金が用いられることがあります。

基礎収入をいくらとみるかは、これまでお受けしたご相談の中でも、最も争いになりやすい部分です。中でも、進学の見込みは特に問題になります。

そこで大切になるのが、資料の積み上げです。実際のご相談でも、在学されていた学校の進学実績や、お子さまご本人の進学希望を、一つひとつ丁寧に説明していく作業を重ねています。

特に、お子さまが亡くなっている事案では、ご本人の希望をどう示すかが難しくなります。このようなケースにおいて、まずは、ご遺族からじっくりお話をうかがうことを出発点としています。あわせて、担任の先生のご協力が得られるのであれば、その活用も検討します。

4 その他のポイント

(1) 示談成立までの生活費が心配です

示談が成立するまでには、時間がかかります。その間、治療費や付添いのために働けないことによる収入の減少が、ご家庭に重くのしかかります。

自賠責保険には仮渡金という制度もあります。もっとも、金額が限られているため、実際に請求する場面は多くありません。

当面の資金繰りにお困りのご家庭について、事案によっては、保険会社に損害金の一部の仮払いをご検討いただくこともあります。交渉すれば必ず認められる性質のものではありませんが、ケースによっては、仮払いをいただく余地がないか、検討することもあります。

(2) 賠償金は、誰が請求するのですか?

賠償を請求する権利は、お子さまご本人のものです。もっとも、未成年者は単独で有効な訴訟行為をすることができません(民事訴訟法31条)。ですから、親権者であるご両親が法定代理人として手続を進めることになります。

なお、民法721条により、胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなされます。事故の当時にお腹の中にいたお子さまも、請求の主体になり得ます。

(3) いつまでに請求すればよいですか?

期間の制限があります。不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年で時効にかかるのが原則です(民法724条1号)。

ただし、人の生命または身体を害する不法行為の場合は、この「3年間」が「5年間」に読み替えられます(民法724条の2)。お子さまの人身事故は、こちらに当たります。

(4) 示談は、急いだほうがよいですか?

急ぐ必要はありません。むしろ、内容を十分に検討しないまま示談してしまうことのほうが心配です。

弁護士にご相談いただくタイミングについては、遅すぎるということは基本的にありません。示談が成立する前であれば、間に合います。

逆に言えば、いったん示談が成立してしまうと、後から覆すことは容易ではありません。ですから、示談書(免責証書)に署名される前に、一度ご相談いただくことをおすすめします。

5 弁護士のサポート

重大な事案では、ご両親が精神的に疲弊していらっしゃることがよくあります。弁護士法人みおでは、まずご家族のお気持ちを十分にうかがったうえで、方針をご提案するよう心がけています。

弁護士にご依頼いただくと、次のようなことをお任せいただけます。保険会社との交渉、後遺障害の等級認定に向けた被害者請求、基礎収入や過失割合についての主張と資料の収集、そして訴訟になった場合の対応などです。

特に、お子さまの事案では、基礎収入をどう主張するかによって結果が変わってきます。例えば、進学の見込みを裏づける資料をどう集め、どのように説明するかなど、専門的な知見も踏まえた検討が必要なケースはよくあります。

お子さまの交通事故では、ご両親のサポートが何より大切です。弁護士のアドバイスを受けていただきながら、適切な方針で解決に向かい、お子さまを支えていただければと思います。

弁護士法人みおは神戸市内に事務所を構えており、明石、芦屋、三木、淡路島などからもお越しいただきやすい場所にあります。お子さまの交通事故のことでお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

<Q&Aまとめ>

Q1.収入のない子どもでも、逸失利益は認められますか?

A1.認められます。賃金センサスの全年齢平均賃金を基礎収入とするのが原則です。

Q2.障害のある子どもの逸失利益は、減額されますか?

A2.当然に減額されるものではありません。大阪高等裁判所令和7年1月20日判決は、減額を認めませんでした。全労働者平均賃金を減額して用いることが許されるのは、それを基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由がある場合に限られる、という考え方です。同判決は確定しています。

Q3.賠償金の請求は、いつまでにすればよいですか?

A3.損害および加害者を知った時から5年です。人の生命または身体を害する不法行為には、民法724条の2により5年の期間が適用されます。ただし、自賠責保険への被害者請求は原則3年ですので、注意が必要です。

Q4.弁護士に相談するのは、どのタイミングがよいですか?

A4.示談が成立する前であれば間に合います。ただし、後遺障害が問題になりそうな事案では、必要な検査を適切な時期に受けるためにも、治療中の段階でのご相談が望ましいです。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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