先代から引き継いだ会社の経営に限界を感じたら?破産のススメ(2/2)
- <このコラムでお伝えしたいこと>
- 1 はしがき
- 2 社長個人の破産は、どのような手続ですか
- 3 自宅・車・保険はどうなりますか
- (1) 自宅に住み続けることはできますか?
- (2) 引っ越しの費用はどうすればよいですか?
- (3) 手元に残る財産はどのくらいですか?
- (4) 破産の後に得た収入はどうなりますか?
- 4 免責について知っておいていただきたいこと
- (1) 免責が認められないことはあるのですか?
- (2) 事業以外の理由で借金が増えていた場合はどうなりますか?
- (3) 免責されない債務はありますか?
- (4) 破産管財人にはどう向き合えばよいですか?
- 5 ご家族と、これからの生活
- (1) 家族に影響はありますか?
- (2) これから働くことはできますか?
- (3) 手続が終わった後は、どうなりますか?
- 6 迷っていらっしゃる段階でご相談ください
- (1) いつ相談すればよいのですか?
- (2) 弁護士法人みおでは、どのようなサポートができますか?
- <Q&Aまとめ>
- Q1.会社の破産と、社長個人の破産は何が違うのですか?
- Q2.破産をすると、自宅にはいつまで住めるのですか?
- Q3.引っ越しの費用を使ってもよいのですか?
- Q4.手元にはいくら残せるのですか?
- Q5.破産の後に働いて得たお金は取られてしまいますか?
- Q6.事業で借りたお金が返せなくなっただけでも、免責は認められますか?
- Q7.浪費やギャンブルがあると、免責は受けられないのですか?
- Q8.破産をしても支払わなければならない債務はありますか?
- Q9.家族や子どもに影響はありますか?
- Q10.破産をすると、もう会社の役員にはなれないのですか?
弁護士 石田 優一
<このコラムでお伝えしたいこと>
会社を引き継いだ社長ご自身の破産と免責について、ご相談で実際に多い、自宅・車・保険・ご家族への影響を中心にご説明します。破産は終わりではなく、人生のリスタートです。破産に躊躇している段階からのご相談をおすすめします。
1 はしがき
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会社の破産を決めた社長が、次に気にされるのは、ご自身とご家族の暮らしのことです。
実際のご相談でも、いちばん多いのはご自宅についてのお話です。住み続けるのが難しいことはご理解いただけても、引っ越しの費用や引っ越し先の確保に不安を感じていらっしゃる方が多いです。
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。破産の手続は、誠実に経営を続けてこられた方が、ご自身と周りの方の生活を立て直すために選ぶ手続でもあります。
前回の「会社の破産編」では、会社(法人)の手続をご説明しました。このコラムでは、社長ご自身の破産と免責について、ご相談で実際に多い点を中心にご説明します。
2 社長個人の破産は、どのような手続ですか
会社の破産との
いちばん大きな違いは、免責のしくみがあることです。会社の破産では、会社そのものがなくなりますので、免責という制度はありません。
社長個人の破産では、手元の財産を清算したうえで、残った債務の支払義務を免除してもらうことができます。これを、「免責」といいます。
ですから、会社の破産と社長個人の破産は、目的が違う手続です。社長個人の手続では、免責を受けられるかどうかが中心の課題になります。
3 自宅・車・保険はどうなりますか
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ここからは、ご相談でもっともお尋ねの多い、身近な財産の扱いをご説明します。
(1) 自宅に住み続けることはできますか?
住宅ローンが残っているご自宅の場合、最終的には退去することになるのが一般的です。抵当権などの担保権は、破産手続によらずに行使できるからです。
もっとも、申立てをした翌日に出なければならない、というものではありません。売却の手続が進むまで、しばらくは住み続けられるケースが多いです。
ただ、いつかは退去することになる場所です。ですから、ご相談者には、早い段階から引っ越し先を確保していただくようお願いしています。
お住まいの地域で条件に合う物件を探すには、時間がかかることもあります。お子さんの学校のことがあれば、なおさら早めの準備が安心です。
(2) 引っ越しの費用はどうすればよいですか?
引っ越しの費用は、生活に必要な費用として支出せざるを得ないものです。実際のご相談でも、生活に必要な費用の一部として正当な支出であったとご説明する例が多いです。
ただ、金額や使い方によっては、破産管財人から使途をたずねられることがあります。ですから、まとまった支出をされる前に、一言ご相談いただくと安心です。
領収書などの記録を残しておいていただくことも、後の説明を楽にします。
(3) 手元に残る財産はどのくらいですか?
手元に残る財産を、自由財産といいます。まず、99万円以下の金銭は自由財産とされています。また、法律上差し押さえることができない財産も、自由財産です。
ここで、誤解しやすい点をお伝えします。財産として数えられるのは現金だけではありません。生命保険を解約したときに戻ってくる金額や、自動車の評価額も、財産として数えられます。
ですから、「必ず99万円が現金で残る」というものではありません。この点は、ご理解いただきにくいところですので、ご相談の際に丁寧にご説明しています。
ご自身の財産がどう扱われるかは、評価額によって変わります。ですから、保険証券や車検証などをお持ちいただければ、見通しをお伝えしやすくなります。
(4) 破産の後に得た収入はどうなりますか?
破産財団になるのは、破産手続開始の時に持っていた財産です。ですから、手続が始まった後に働いて得た収入は、原則としてご自身で自由に使えます。
この点は、生活を立て直すうえで大切なところです。手続の途中でも、収入を得て暮らしを整えていくことはできます。
4 免責について知っておいていただきたいこと
(1) 免責が認められないことはあるのですか?
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破産法252条1項は、免責が認められない場合を挙げています。例えば、財産を隠すこと、浪費や賭博などで著しく財産を減らすことです。帳簿を隠したり偽ったりすること、裁判所の調査で虚偽の説明をすることも挙げられています。
もっとも、事業のための借入が返せなくなったという事情そのものは、ここに挙げられていません。ですから、経営が行き詰まったことを理由に免責が認められないわけではありません。
(2) 事業以外の理由で借金が増えていた場合はどうなりますか?
ご相談では、なぜ債務が膨らんだのかを丁寧にうかがいます。事業のための融資以外に理由がなかったかを、あわせて確かめます。
仮に、浪費や賭博などの事情が見つかったとします。その場合でも、そこで終わりになるわけではありません。
破産法252条2項には、救済のしくみが置かれています。不許可の事由に当たる場合であっても、裁判所は免責許可の決定をすることができます。破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して、免責を許可することが相当と認めるときです。これを裁量免責といいます。
ですから、実際のご相談でも、反省文の提出をお願いすることがあります。これからの節制についてもご一緒に確認し、裁量免責の方向に進むよう留意しています。
気になる事情があっても、隠さずお話しいただくことが大切です。早くうかがえるほど、打てる手当ても増えます。
(3) 免責されない債務はありますか?
免責の対象から外れる債権があります。破産法253条1項に、その例が挙げられています。税金などの請求権、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、養育費などの扶養に関する義務についての請求権です。
ですから、税金や養育費は、手続が終わった後も支払っていく必要があります。金額や納付の見通しは、ご相談の際に一緒に整理します。
(4) 破産管財人にはどう向き合えばよいですか?
破産管財人は、破産者を追い詰めるために選ばれる人ではありません。財産の内容を確かめ、手続を適正に進める役割を担っています。
破産者には、破産に関して必要な説明をする義務があります(破産法40条1項1号)。また、開始の決定後は、不動産・現金・有価証券・預貯金などの内容を記載した書面を裁判所に提出することになっています(同法41条)。
ですから、ご相談者には、破産管財人の意見によく耳を傾け、真摯に対応していただくようお伝えしています。裁量免責の判断でも一切の事情が考慮されますので、誠実な対応そのものが大切です。何よりも、知らないことは知らないと真実をお伝えして、取りつくろわないことが、いちばん確かな対応です。
5 ご家族と、これからの生活
(1) 家族に影響はありますか?
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破産は、ご本人についての手続です。ですから、基本的にご家族への影響はありません。
お子さんの進学や就職に法律上影響が生じることもありません。ご家族の名義の財産が、当然に処分されるわけでもありません。
ただし、ご家族が会社の借入の連帯保証人になっている場合は別です。免責許可の決定は、債権者が保証人に対して持つ権利には影響しないと定められています。
ですから、だれが保証人になっているかは、早めに確認しておく必要があります。そのうえで、ご家族には事情をお伝えいただくことをおすすめします。
(2) これから働くことはできますか?
できます。破産をしたことだけを理由に、働けなくなるわけではありません。将来に、会社の役員になることもできます。
一部の資格や職業については、手続の間だけ制限がかかることがあります。もっとも、免責許可の決定が確定すれば復権しますので、制限は続きません。
実際のご相談でも、経営者として培ってこられた経験を活かして、新たな場で働き始められた方は多くいらっしゃいます。
(3) 手続が終わった後は、どうなりますか?
免責許可の決定が確定すると、破産債権についての責任を免れます。そこから、生活の立て直しが始まります。
これまでお受けしたご相談でも、すべてが終わった後に、安堵の表情でお礼のお言葉をいただくことが多くありました。
肩の荷を下ろして、次の一歩を踏み出していらっしゃる姿を見ると、再スタートを支援できたことに大きなやりがいを感じます。
6 迷っていらっしゃる段階でご相談ください
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最後に、ご相談の時期についてお伝えします。
(1) いつ相談すればよいのですか?
迷っていらっしゃる段階で結構です。会社の破産と社長ご自身の破産は並行して進めることが多いため、まとめてご相談いただけます。
早い段階でお話をうかがえれば、引っ越し先の確保や、手元に残せる財産の見通しについて、余裕をもって準備できます。
(2) 弁護士法人みおでは、どのようなサポートができますか?
弁護士法人みおでは、社長ご自身の破産について、次のようなサポートを行っています。手元に残せる財産の見通しの整理、ご自宅の退去時期と引っ越しの段取りのご相談が挙げられます。
また、破産管財人へのご説明の補助、免責に向けた準備のお手伝いも行います。会社の手続と個人の手続を、あわせて進めることもできます。
もっとも、状況によって、とるべき手続は異なります。ですから、破産だけを前提にせず、まずは現在の状況をおうかがいしたうえで、適切な進め方をご提案します。
神戸市内はもちろん、明石市や芦屋市など近隣の地域からもご相談をお受けしています。
先代から引き継いだ会社のことで一人で抱えていらっしゃるなら、どうぞお気軽にご相談ください。ご自身とご家族のこれからをご一緒に考えます。
<Q&Aまとめ>
Q1.会社の破産と、社長個人の破産は何が違うのですか?
A1.免責のしくみがあるかどうかが、大きな違いです。会社の破産では、会社そのものがなくなるため免責の制度はありません。個人の破産では、残った債務の支払義務を免除してもらえます(破産法253条1項)。
Q2.破産をすると、自宅にはいつまで住めるのですか?
A2.住宅ローンが残る自宅は、最終的に退去することが一般的です。抵当権は破産手続によらずに行使できるからです(破産法65条1項)。売却の手続が進むまで、しばらくは住み続けられるケースが多いです。
Q3.引っ越しの費用を使ってもよいのですか?
A3.引っ越しは生活に必要な支出ですので、その一部として説明できるケースが多いです。ただし、金額によっては使途をたずねられます。まとまった支出の前にご相談いただくと安心です。
Q4.手元にはいくら残せるのですか?
A4.99万円以下の金銭は自由財産とされています(破産法34条3項1号)。ただし、生命保険の解約返戻金相当額や自動車の評価額も財産として数えられますので、必ず99万円が現金で残るわけではありません。
Q5.破産の後に働いて得たお金は取られてしまいますか?
A5.取られません。破産財団になるのは破産手続開始の時に持っていた財産ですので(破産法34条1項)、その後に得た収入は原則としてご自身で自由に使えます。
Q6.事業で借りたお金が返せなくなっただけでも、免責は認められますか?
A6.認められる見込みがあります。破産法252条1項が挙げる免責が認められない場合の中に、事業のための借入が返せなくなったことは含まれていません。
Q7.浪費やギャンブルがあると、免責は受けられないのですか?
A7.そこで終わりになるわけではありません。裁判所は、一切の事情を考慮して免責を許可することができます(破産法252条2項)。これを裁量免責といいます。隠さずご相談ください。
Q8.破産をしても支払わなければならない債務はありますか?
A8.あります。税金などの請求権、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は、免責の対象から外れています。養育費などの扶養に関する請求権も同じです(破産法253条1項)。
Q9.家族や子どもに影響はありますか?
A9.基本的にありません。進学や就職に影響することもありません。ただし、ご家族が連帯保証人になっている場合は、その保証債務は残ります(破産法253条2項)。
Q10.破産をすると、もう会社の役員にはなれないのですか?
A10.なれます。会社法331条1項が定める取締役になれない人の中に、破産をしたことは挙げられていません。一部の資格の制限も、免責許可の決定の確定によって復権します(破産法255条1項1号)。





