会社の経営が行き詰まる前に弁護士にご相談すべき理由
- <このコラムでお伝えしたいこと>
- 1 はしがき
- 2 会社が行き詰まったときの選択肢
- (1) 法人破産とは何ですか?
- (2) 破産のほかに、どのような方法がありますか?
- (3) 早く動くほど、なぜ選べる道が広がるのですか?
- 3 早めにご相談いただくと、何が変わりますか?
- (1) 手続に必要な費用を確保できますか?
- (2) 従業員の方への影響を小さくできますか?
- (3) 取引先への対応は、どう進めればよいですか?
- (4) 店舗や事務所の明渡しは、いつから準備すればよいですか?
- 4 限界まで我慢すると、どのようなことが起こりますか?
- (1) 一部の債権者にだけ返済してもよいですか?
- (2) 会社の財産を隠すと、どうなりますか?
- (3) 言いにくい事情も、最初に話したほうがよいのでしょうか?
- 5 どこに相談すればよいですか?
- (1) 公的な相談窓口にはどのようなものがありますか?
- (2) 弁護士に相談すると、何をしてもらえますか?
- 6 弁護士のサポート
- <Q&Aまとめ>
- Q1.法人破産はどのような場合にできますか?
- Q2.弁護士費用が用意できないのですが、相談してもよいですか?
- Q3.一部の債権者にだけ返済してもよいですか?
- Q4.従業員の未払賃金はどうなりますか?
- Q5.取引先には自分から説明したほうがよいですか?
- Q6.初回の相談には何を持っていけばよいですか?
弁護士 石田 優一
<このコラムでお伝えしたいこと>
資金繰りが苦しくなった会社の経営者に向けて、法人破産を考えるときの選択肢と、早めに弁護士へ相談する意味をご説明します。手元の資金を使い切ってからでは、選べる道が狭まります。破産・廃業すべきか迷っている段階でのご相談をおすすめします。
1 はしがき
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「原材料の高騰が続き、人件費の負担も重くなる一方で・・・」。兵庫県内の中小企業からは、このような声が聞かれます。新型コロナウイルスへの支援制度が終わり、日々の運転資金が厳しいという相談も増えています。
資金繰りが苦しくなると、まずは新たな借入や返済の猶予で乗り切ろうとされます。それでも追いつかないとき、頭をよぎるのが「破産」の二文字です。
ただ、「弁護士に相談するのはまだ早い」とお考えになって足踏みされる方は少なくありません。実際のご相談でも、そのようなお気持ちをよくうかがいます。
もっとも、相談が遅すぎることはあっても、早すぎることは基本的にありません。このコラムでは、会社が行き詰まったときの選択肢と、早めに弁護士へ相談する意味をご説明します。
2 会社が行き詰まったときの選択肢
(1) 法人破産とは何ですか?
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法人破産とは、支払いができなくなった会社の財産を裁判所の手続で清算し、債権者に公平に配当する手続です。
会社などの法人の場合は、これに加えて「債務超過」も破産手続開始の原因になります。債務超過とは、その財産をもって債務を完済することができない状態をいいます。
ですから、支払いが完全に止まるまで待たなければならない、というわけではありません。法人の財産が目減りしきってからでは、債権者への配当も難しくなるからです。
(2) 破産のほかに、どのような方法がありますか?
事業に収益力が見込める場合には、民事再生など、事業を続けながら立て直す手続もあります。また、国が全国47都道府県に設置する「中小企業活性化協議会」への相談も選択肢の一つです。協議会は、中小企業の収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援を担う公正中立な機関です。
主な選択肢の違いは、次の表のとおりです。
| 手続・支援 | どのような場面で | 主なポイント |
|---|---|---|
| 法人破産 | 支払不能または債務超過になったとき(破産法15条1項・16条1項) | 裁判所が破産管財人を選び、会社の財産を換価して配当します。手続の終了により会社は消滅します。 |
| 民事再生 | 事業に収益力が見込め、再建の可能性があるとき | 再生計画について、債権者の同意と裁判所の認可が必要です。 |
| 中小企業活性化協議会の収益力改善・再生支援 | 財務に課題があるものの、事業に見込みがあるとき | 中小企業基盤整備機構の説明によれば、第一次段階までは無料で利用できます。 |
| 同協議会の再チャレンジ支援 | 再生が極めて困難で、円滑な廃業を考えるとき | 廃業に向けた助言や、代理人弁護士の紹介を受けられます。 |
(3) 早く動くほど、なぜ選べる道が広がるのですか?
ここまでご紹介した選択肢の多くは、手元にいくらかの資金と時間が残っていることを前提にします。資金を使い切ってからでは、実際には破産しか残らない、ということにもなりかねません。
一つの目安は、金融機関との関係です。リスケジュール(返済の猶予)を断られた段階では、なるべく早く弁護士にご相談いただきたいところです。
3 早めにご相談いただくと、何が変わりますか?
(1) 手続に必要な費用を確保できますか?
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破産手続開始の申立てをするときは、申立人が、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければなりません。つまり、破産をするにも一定の費用が必要です。
ところが、ご相談の時点で、弁護士費用も予納金も用意できない状態になっていることがあります。これが「もっと早くお越しいただいたら・・・」と感じる典型的な場面です。
このような場合、例えば、まず売掛金の回収を試みます。在庫商品があり、売却して現金化できる見込みがあれば、その換価も検討します。それも難しいときは、ご親族の支援をいただけないかを検討することもあります。いずれにしても、手元に何も残っていない状態では、打てる手が限られます。
注意していただきたいのは、作った資金の使い道です。ご相談では、売掛金や在庫の換価金をすべて返済に回し、使い果たしてしまった、というお話しをうかがうことがよくあります。
また、在庫を相見積もりも取らずに、適正な価格か分からないまま売却してしまう例もあります。財産を処分される前に、一度ご相談いただくことをおすすめします。
(2) 従業員の方への影響を小さくできますか?
使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告しなければなりません。予告をしないときは、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
心情的に解雇をためらって、ご相談が遅れるケースは多いように思われます。長く働いてくださった方を思えば、当然のお気持ちです。
ただ、ためらっている間に資金が尽きると、解雇予告手当さえ支払えなくなります。結果として、従業員の方にいっそうご迷惑をおかけすることになりかねません。
会社が倒産し、賃金が支払われないまま退職した方には、未払賃金立替払制度があります。賃金の支払の確保等に関する法律7条に基づき、独立行政法人労働者健康安全機構が未払賃金の一部を立て替える制度です。
立替払の額は未払賃金総額の8割です(ただし、退職日の年齢による限度額があります)。対象は、退職日の6か月前から請求日の前日までに支払期日が到来した定期給与と退職金で、賞与は含まれません。
なお、日ごろの労務管理が整っていないと、この制度の利用にも支障が生じます。タイムカードや賃金台帳を適正に備えておくことが、いざというときに従業員の方を守ります。
(3) 取引先への対応は、どう進めればよいですか?
取引先へのご連絡は、原則として弁護士から行います。ご依頼をいただいた後は、経営者の方が直接お話しにならないようお願いしています。
なぜなら、その場で返済を前提にした和解をさせられたり、返済を迫られたりして、かえって混乱を招くおそれがあるからです。
受任通知を出した後も、経営者の方に直接連絡をしてくる債権者はいらっしゃいます。そのようなときは、直接の連絡を控えていただくよう、弁護士名で通知します。
(4) 店舗や事務所の明渡しは、いつから準備すればよいですか?
賃借している事務所・工場・店舗の明渡しや、リース物件の返却も、早めにご相談いただければ余裕をもって計画を立てられます。
逆に、時間がないまま進めざるを得ない場合には、段取りが固まらないまま動くことになり、混乱が生じやすくなります。
【具体例】例えば、神戸市内で小売業を営むAさんの会社が、店舗を賃借しているとします。仮に在庫と什器を残したまま明渡しの期限を迎えれば、その処分に追われることになります。事前に計画を立てておけば、避けやすい事態です。
4 限界まで我慢すると、どのようなことが起こりますか?
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兵庫県内の企業倒産は、高い水準が続いています。東京商工リサーチが令和8年(2026年)7月に公表した集計によれば、同年上半期の県内の倒産件数は327件で、3年連続で300件を超えました。
全国でも、2026年上半期の企業倒産は5,346件で、前年同期比7.1%の増加でした(東京商工リサーチ・2026年7月公表)。物価高や人手不足に加え、過剰債務の重さが背景にあると指摘されています。
苦しい時期が長引くほど、経営者の方は「なんとか穴を埋めよう」と動かれます。ところが、その対応のなかに、後で問題になるものが含まれていることがあります。
(1) 一部の債権者にだけ返済してもよいですか?
取立ての厳しい債権者や、ご親族に優先して支払ってしまう方は珍しくありません。お気持ちとしては理解できるところです。
しかし、支払不能になった後などにされた特定の債権者への返済や担保の提供は、破産手続開始後に否認されることがあります。否認とは、その行為の効力を否定して、財産を破産財団に取り戻す制度です。
また、債権者を害することを知ってした財産の処分なども、否認の対象になりえます。
すでに偏った返済をされた後で、ご相談にいらっしゃる方もいます。そのような場合、経緯を丁寧に聞き取ったうえで、否認のリスクがどの程度あるかを検証し、その大小をお伝えします。
(2) 会社の財産を隠すと、どうなりますか?
債権者を害する目的で会社の財産を隠したり、損壊したりする行為は、詐欺破産罪に当たります。破産手続開始の決定が確定したときは、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金に処せられ、またはこれらが併科されます。
財産を第三者に移して、形のうえで手放したように見せる対応も同じです。「少しくらいなら」というご判断が、刑事責任につながるおそれがあります。
(3) 言いにくい事情も、最初に話したほうがよいのでしょうか?
はじめにすべてお話しいただきたい、というのが率直なお願いです。後になって発覚した場合、弁護士として辞任せざるを得ないこともあります。
弁護士は、職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負います。弁護士から債権者に事情が漏れる心配はありません。
5 どこに相談すればよいですか?
(1) 公的な相談窓口にはどのようなものがありますか?
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中小企業活性化協議会は、全国47都道府県に設置されています。兵庫県では、兵庫県中小企業活性化協議会が、神戸市中央区港島中町の神戸商工会議所会館内に置かれています。相談は無料で、秘密は厳守されるとされています。
神戸市では、「ひょうご・神戸経営相談センター」(神戸市産業振興センター内)を案内しています。事業所の所在地によって、窓口の名称や内容が異なる場合がありますので、あらかじめ確認しておくことが望ましいです。
(2) 弁護士に相談すると、何をしてもらえますか?
弁護士は、法的整理を選ぶかどうかの見通しを立てたうえで、債権者・従業員・取引先への対応をまとめてお引き受けします。手続の順序と時期を設計できる点が、弁護士にご相談いただく大きな意味です。
初回のご相談には、次の資料をお持ちいただけると助かります。最近の決算書(できれば3期分)、資金繰り表またはメモ、債権者の一覧メモ、そして法人印です。
税金や社会保険料の滞納があれば、その一覧もご用意ください。すべてそろわなくても差し支えないです。資料集めに時間をかけて相談の時期を逃すほうが、かえって不利になります。
6 弁護士のサポート
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弁護士法人みおでは、法人破産や廃業に関するご相談を承っています。破産をすべきかどうか迷っていらっしゃる段階でも、ご相談いただけます。
手続を終えられた経営者の方から、「安心した」というお言葉をいただくことは多いです。資金繰りに苦しむ毎日から解放されることの意味は、とても大きいと感じています。
相談が遅すぎることはあっても、早すぎることは基本的にありません。資金繰りにお悩みのときは、どうか無理をなさらず、早い段階で弁護士にご相談ください。
<Q&Aまとめ>
Q1.法人破産はどのような場合にできますか?
A1.支払不能または債務超過のいずれかに当たる場合です(破産法15条1項、16条1項)。支払いが完全に止まるまで待つ必要はありません。
Q2.弁護士費用が用意できないのですが、相談してもよいですか?
A2.ご相談ください。売掛金の回収や在庫の換価によって、費用を作れる場合があります。手元の資金を使い切る前のほうが、選べる方法は多く残ります。
Q3.一部の債権者にだけ返済してもよいですか?
A3.おすすめできません。支払不能になった後などにされた特定の債権者への返済は、否認されることがあります(破産法162条1項)。
Q4.従業員の未払賃金はどうなりますか?
A4.未払賃金立替払制度があります。厚生労働省の説明によれば、立替払の額は未払賃金総額の8割で、退職日の年齢による限度額があります。請求は、破産手続開始の決定の日の翌日から起算して2年以内です。
Q5.取引先には自分から説明したほうがよいですか?
A5.原則として弁護士からご連絡します。直接お話しになると、その場で和解や返済を求められ、混乱を招くおそれがあります。
Q6.初回の相談には何を持っていけばよいですか?
A6.決算書(できれば3期分)、資金繰り表またはメモ、債権者の一覧メモ、法人印です。そろわない場合でも、まずはご相談ください。





