遺産分割の話合いに悩んだら?|遺産分割協議の進め方を弁護士が解説
- <このコラムでお伝えしたいこと>
- 1 はしがき
- 2 なぜ遺産分割の話合いはもめてしまうのですか?
- (1) もめるかどうかは遺産の多さで決まりますか?
- (2) 法定相続分どおりに分ければ終わりではないのですか?
- 3 主張を1つずつ切り分けて分類する
- (1) 類型1:「法的に無理がある主張である」
- (2) 類型2:「法的に筋は通っているが、感情面では受け入れられない」
- 4 相手が受け入れやすい形で伝えるには?
- (1) 法律論だけで押し切らないほうがよいのはなぜですか?
- (2) 具体的にはどのように伝えればよいですか?
- 5 話合いが難しいと感じたときは弁護士にご相談ください
- <Q&Aまとめ>
- Q1.遺産分割の話合いでもめないためには、何から始めればよいですか?
- Q2.法定相続分どおりに分ければ、公平な遺産分割になりますか?
- Q3.介護をしてきたことは遺産分割で考慮されますか?
- Q4.話合いがまとまらないときはどうすればよいですか?
弁護士 石田 優一
<このコラムでお伝えしたいこと>
遺産分割の話合いでもめないためには、相手の主張を「法的に無理な主張」と「法的には筋が通るものの感情の面で納得しにくい主張」に切り分けることが大切です。争う点と争わない点を整理する考え方をご説明します。
1 はしがき
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空き家や空き地が虫食いのように増えていく「都市のスポンジ化」が問題になっています。神戸市も、街の活力が失われかねないとして、特命チームを設けて対策に取り組んでいます。増えている物件の中には、持ち主が亡くなった後、そのままになってしまったものも含まれます。
実家が空き家のまま残ってしまう背景には、相続人どうしの話合いが止まっているという事情がしばしばあります。「きょうだいの仲は悪くないから、いずれ話し合えばよい」とお考えのうちに、何年も過ぎてしまうこともあります。
遺産分割は、相続人が全員で合意さえすれば成立します。もっとも、実際には、いざ話し始めると、思いがけないところで意見が食い違うことがあります。
このコラムでは、遺産分割の話合いでもめないために、どのような心構えで臨めばよいのかをご説明します。話合いでは解決できないときの手続については、次回のコラムで遺産分割調停を取り上げます。
2 なぜ遺産分割の話合いはもめてしまうのですか?
(1) もめるかどうかは遺産の多さで決まりますか?
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「遺産が多い=もめる」「遺産が少ない=もめない」という必然性はありません。私の経験でも、遺産分割協議でもめたことを理由にご相談をうかがうケースは、必ずしも遺産額が大きい場合に限られません。
特に、遺産の中心が実家の土地建物である場合、話合いのハードルが上がります。なぜなら、預貯金と違って、不動産は数字どおりにきれいに分けることができないからです。
(2) 法定相続分どおりに分ければ終わりではないのですか?
法定相続分は、あくまで出発点です。民法第906条では、遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮してする、と定められています。遺産分割は、相続人同士の感情が大きくかかわりますので、「機械的に分けて終わり」とはいきません。
さらに、生前に受けた贈与などの特別受益や、亡くなった方の財産の維持や増加に特別の貢献をしたことを理由にした寄与分(民法第904条の2)がからむこともあります。
遺産分割は、割合を当てはめれば自動的に答えが出る手続ではありません。
3 主張を1つずつ切り分けて分類する
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話合いがこじれるのは、性質の違う主張が混ざったままに、言い合いになってしまうときです。ですから、相手の主張と自分の主張がどう食い違っているのか、1つずつ切り分けて分類してください。それが、もめないための第一歩です。
相手の主張を分析する際には、次の2つの類型を意識すると分かりやすくなります。
(1) 類型1:「法的に無理がある主張である」
1つ目は、法的に見て無理のある主張です。例えば、遺言があるのにそれを無視して分け方を決めようとする主張が挙げられます。
「家業を継ぐのだから遺産は全部自分のものだ」「長男だから多くもらうのが当然だ」といった主張も、それだけでは法的な根拠がありません。
寄与分も誤解の多いところです。寄与分が認められるには、通常期待される程度を超える「特別の寄与」が必要です。同居していた、時々様子を見に行っていた、という事情だけでは認められにくいのが実情です。
この型の主張は、法的な根拠を示して整理すれば、相手にも理解していただける余地があります。ただし、法的根拠を示しても理解が得られない場合もあります。遺産分割の場面では、法律論に対して、「法律は関係ない」という反論されるケースが、少なくないからです。このような場合は、早期に調停への移行を検討すべきです。そのまま話合いを続けても、解決困難な場合が多いからです。
(2) 類型2:「法的に筋は通っているが、感情面では受け入れられない」
2つ目は、法的には筋が通っているものの、感情の面で納得しにくい主張です。例えば、介護を一手に引き受けてきた相続人が、(寄与分の主張は難しいけれども)法定相続分どおりの分け方に納得できないという場面が典型です。
この型は、法律論で押し切っても解決しません。むしろ、押し切ろうとするほど溝が深まります。まずは、ご自身のお気持ちを丁寧かつ冷静に伝えたうえで、それでも折り合いがつかない場合は、譲歩を検討することが望ましいです。
2つの類型の区別を表にすると、次のとおりです。
| 主張の型 | 見分け方 | 対応の方向 |
|---|---|---|
| 法的に無理のある主張 | 根拠となる条文や資料が示せない | 根拠を示して整理し、譲らない |
| 法的には筋が通る主張 | 法定相続分や条文の裏づけがある | 結論は動かさず、伝え方と進め方を工夫する |
| 感情の面で納得しにくい主張 | 「不公平だ」という思いが中心にある | 事情を整理して受け止め、調整の材料にする |
このように1つ1つの主張を丁寧に切り分けて考えると、全面対決に見えた話合いも、実際には争点が限られていることが分かります。
4 相手が受け入れやすい形で伝えるには?
(1) 法律論だけで押し切らないほうがよいのはなぜですか?
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遺産相続は、法律だけで割り切れる問題ではありません。親族としての関係や、それぞれの生活の事情が背景にあるからです。
民法第906条が「その他一切の事情を考慮して」と定めているのも、同じ発想によるものです。法律自体が、事案ごとの事情を踏まえた解決を予定しています。
ですから、相手の気持ちを頭から否定せず、事情を整理したうえで伝えることが大切です。
(2) 具体的にはどのように伝えればよいですか?
まず、資料をそろえて共有することをお勧めします。預貯金の残高が分かる資料、不動産の評価が分かる資料、戸籍などです。
情報を持っている人と持っていない人がいると、それだけで不信感が生まれます。時間をかけてでも資料を丁寧に用意し、共有しながら話合いをすることが、遠回りのようで近道です。
そのうえで、ご自身がお考えの分割案について、「なぜこの分け方がよいのか」を言葉にして説明します。結論だけを伝えるのではなく、理由も丁寧に伝えることが、相手の納得につながります。
5 話合いが難しいと感じたときは弁護士にご相談ください
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ここまで、主張を切り分けて争点を整理し、相手が受け入れやすい形で伝える進め方をご説明しました。もっとも、これをご自身だけで進めるには、現実にはハードルがあります。
なぜなら、どの主張が法的に通るのかを見極めるには、条文や裁判所の過去の判断を踏まえた検討が必要だからです。また、当事者どうしでは、感情の面の問題と法律の問題を切り分けること自体がなかなか難しいです。
弁護士が代理人として入ることで、事実関係を正確に整理したうえで、資料をもとに、筋の通った主張を展開することができます。相手方との連絡も弁護士が行いますので、直接やり取りをすることによる心理的な負担も大きく軽減されます。
弁護士法人みおでは、遺産分割に関するご相談を承っております。神戸市や神戸近郊にお住まいの方からご来所いただきやすい三ノ宮駅近くに事務所がございます。
もめごとが大きくなりそうだと感じた段階でご相談いただくことで、選択肢を広げることができます。まずはお気軽にご相談ください。
<Q&Aまとめ>
Q1.遺産分割の話合いでもめないためには、何から始めればよいですか?
A1.相手と自分の主張を1つずつ切り分けて分類することから始めてください。法的に無理のある主張なのか、法的には筋が通るけれど感情の面で納得しにくい主張なのかを分け、争うべき点と争うべきでない点を整理します。
Q2.法定相続分どおりに分ければ、公平な遺産分割になりますか?
A2.法定相続分は出発点です。民法第906条は一切の事情を考慮して分割すると定めており、特別受益(民法第903条)や寄与分(民法第904条の2)による調整も時には必要です。事案ごとに、結論は異なります。
Q3.介護をしてきたことは遺産分割で考慮されますか?
A3.寄与分として考慮される場合があります。ただし、通常期待される程度を超える「特別の寄与」が要件です。同居していたという事情だけでは認められにくいため、介護の内容や期間が分かる記録の有無が大きなポイントになります。
Q4.話合いがまとまらないときはどうすればよいですか?
A4.家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます(民法第907条第2項)。歩み寄りが難しい争点があるときは、早い段階で弁護士にご相談いただくことをお勧めします。





