弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2026.08.24
遺産相続のトラブル

遺産分割調停とは?手続の流れと留意点を弁護士が解説

弁護士 石田 優一

<このコラムでお伝えしたいこと>

遺産分割の話合いで歩み寄りが難しい争点があるときは、家庭裁判所の遺産分割調停に進むのが現実的です。調停は法廷ではなく話合いの場ですが、法的な根拠に基づく合理的な主張が求められます。手続の流れと心構えをご説明します。

1 はしがき

前回のコラムでは、遺産分割の話合いでもめないための心構えとして、相手の主張を切り分けて「類型化」することをご説明しました。もっとも、切り分けた結果、どうしても歩み寄れない争点が残ることがあります。

例えば、実家の評価額に大きな隔たりがあるとき、生前の贈与をめぐって主張が真っ向から対立しているときなどです。このような場合、話合いを続けても解決しないまま、年月だけが過ぎてしまいます。

そこで検討することになるのが、家庭裁判所の遺産分割調停です。「裁判所」と聞くと身構えてしまう方は多いかもしれません。しかし、調停手続は、一般に裁判所といえばイメージするような「法廷での言い争い」とは大きく異なります。

このコラムでは、遺産分割調停がどのような手続なのか、おひとりで臨むことにどのような不安があるのかを整理し、心構えをご説明します。

2 遺産分割調停とはどのような手続ですか?

(1) 遺産分割調停とは何ですか?

遺産分割調停とは、遺産の分け方について相続人間で話合いがつかないときに、家庭裁判所で話合いを進める手続です。民法第907条第2項は、協議が調わないときは、家庭裁判所に分割を請求できると定めています。調停は、他の相続人全員を相手方として申し立てます。

(2) 法廷で言い争う手続ですか?

法廷ではありません。調停が行われるのは、テーブルと椅子が置かれた調停室です。傍聴人もいません。

調停手続は、一般に、裁判官1人と家事調停委員2人で進められます。もっとも、実際の期日では、家事調停委員2名と話をしながら進むことがほとんどです。

また、申立人と相手方は、原則として別々の待合室で待ち、交互に調停室へ入って話をします。ですから、相手と面と向かって言い合いをすることは、基本的にありません。

(3) どこの裁判所に申し立てるのですか?

遺産分割調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所に申し立てます(家事事件手続法第245条第1項)。

例えば、神戸市内(西区を除きます)にお住まいの相続人を相手方とする場合は、神戸家庭裁判所が申立先です。明石市にお住まいの相続人が相手方であれば、神戸家庭裁判所明石支部が申立先にです。相続人が複数いらっしゃる場合は、「どの裁判所に申し立てれば確実に全員が集まるか」を踏まえて、申し立てる裁判所を検討してください。

3 調停はどのように進みますか?

(1) 全体の流れはどうなっていますか?

遺産分割の調停は、争点を順番に片付けていく形で進みます。おおまかな流れは次の表のとおりです。

段階 話し合う内容
申立て 相続人全員を当事者として、戸籍や遺産の資料をそえて申し立てる
相続人と遺産の確認 だれが相続人か、何が遺産に含まれるかを確定する
遺産の評価

不動産などの評価額について、認識を共有する

(※もし争いがあれば、不動産業者の査定書や不動産鑑定士の鑑定書を提出する)

だれがいくら取得するかの検討 特別受益や寄与分を踏まえ、各相続人がいくら取得するかを検討する
分割方法の検討 (不動産などは)現物分割・代償分割・換価分割のうち、どの方法をとるかを調整する
調整成立

すべての相続人の間で合意ができれば調停が成立する

(※合意できなければ、審判へ移行する)

一般に、期日は1回では終わりません。おおむね1か月から2か月に1回のペースで期日が入り、争点を1つずつ整理していきます。

(2) どのくらいの期間がかかりますか?

裁判所が公表する令和6年(2024年)の司法統計年報(家事編)によれば、遺産分割事件の審理期間は、6か月を超え1年以内という区分が最も多くなっています。1年を超える事件も少なくありません。私の経験でも、6か月以内で調停を終えられるケースは少ない印象です。

調停を申し立てるときは、ある程度の期間がかかることを見込んでおくことが大切です。もっとも、争点を早い段階で整理できれば、期日の回数を抑えることにつながります。

(3) 話がまとまらないとどうなりますか?

調停が不成立になった場合は、審判の手続に移ります。改めて申立てをし直す必要はありません。

審判では、裁判官が、遺産に属する物または権利の種類および性質その他一切の事情を考慮して判断します。話合いではなく、法律に基づいて、裁判官の判断で分け方が決まりますので、調停よりも一層、法的理解に基づく主張が必要です。

4 おひとりで出席することへの不安について

(1) 相手に言い負かされてしまいませんか?

調停は交互に話を聴く形で進みますので、相手の声高な主張にその場で押し切られる、という場面は基本的にありません。この点は、ご安心ください。

ただ、同じ主張でも、法的な根拠と資料に結びつけて説明できるかどうかどうかで、調停委員が受ける印象は大きく変わります。そのため、単に気持ちを伝えるだけではなく、なるべく法律論を踏まえた主張をお伝えすべきです。

(2) 調停委員は味方になってくれますか?

調停委員会は、中立公正な立場で双方の言い分を聴く役割です。どちらか一方の味方ではありません。

調停を有利に進めるためには、積極的に主張を伝えたり、資料を提出したりすることが重要です。ただし、やみくもに大量の資料を提出したり、感情に任せた主張をしたりすることは、調停委員の心証を悪くして不利になることがありますので、注意してください。

(3) うまく言い分を伝えられるか不安です

おひとりで期日に出席されたものの、思うように進まなかったという段階でご相談にいらっしゃる方は、少なくありません。調停の場で必要なのは、気持ちを訴えることだけではありません。どの事実を、どの資料で裏づけ、どの法的な枠組みに乗せるのかという組み立てが求められます。もし、ご自身で主張を伝えることが難しいとお悩みであれば、弁護士への依頼をご検討いただきたいです。

5 調停では「合理的な主張」が求められます

(1) 調停では何が求められるのですか?

調停は話合いの手続ですが、当事者だけで行う話合い以上に、法的な整理が求められる場です。なぜなら、調停委員は、審判になったときの見通しも意識しながら調整を進めるからです。

例えば、特別受益や寄与分の主張は、「どのような事実があれば認められるのか」という枠組みに沿って組み立てる必要があります。相続開始の時から10年を経過した後の分割では、原則としてこれらの規定が適用されないという期間制限もあります。

(2) 何をもって合理的といえるのですか?

不動産の評価も同じです。固定資産評価額、路線価、不動産業者の査定のいずれを前提とするかで結論が変わります。ですから、何を根拠にどの金額を主張するのかが問われます。

そして、何をもって合理的といえるのかは、実務の蓄積を踏まえなければ判断が難しいところです。ここが、おひとりで進めるときの一番の壁になります。

6 調停は弁護士とともに進めることに大きな意味があります

(1) 弁護士に依頼すると何が変わりますか?

ご依頼いただければ、争点ごとに主張の組み立てと資料の準備を整えたうえで、期日に臨むことができます。譲るべき点と譲るべきでない点を、法律論や審判に移行した場合の見通しを踏まえて検討いたします。

また、期日には代理人として同席しますので、その場でお答えに困ったときも、不安な思いを抱きながらご自身でお答えする必要がなくなります。書面の作成や裁判所とのやり取りも弁護士が行います。

(2) 調停の途中からでも相談できますか?

弁護士法人みおでは、遺産分割の調停に関するご相談を承っております。調停の途中からのご依頼にも対応しています。お困りの際は、ぜひご相談ください。

<Q&Aまとめ>

Q1.遺産分割調停とはどのような手続ですか?

A1.遺産の分け方について相続人の間で話合いがつかないときに、家庭裁判所で話合いを進める手続です。裁判官1人と家事調停委員2人以上で組織される調停委員会が、双方から交互に事情を聴きながら合意を目指します。

Q2.遺産分割調停はどこの家庭裁判所に申し立てますか?

A2.相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所です。例えば、神戸市内(西区を除きます)の相続人が相手方であれば神戸家庭裁判所、明石市であれば神戸家庭裁判所明石支部が申立先です。

Q3.遺産分割調停はどのくらいの期間がかかりますか?

A3.令和6年(2024年)の司法統計年報(家事編)によれば、審理期間は6か月を超え1年以内という区分が最も多くなっています。弁護士の経験に基づく感覚でも、6か月以内で解決するケースは、あまりありません。期日はおおむね1か月から2か月に1回のペースで開かれます。

Q4.調停が不成立になったらどうなりますか?

A4.自動的に審判の手続に移ります。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して分け方を決めます。調停よりも一層、法律論に基づいた主張が求められます。

Q5.遺産分割調停は弁護士に依頼せず、自分だけで出席できますか?

A5.ご本人だけで出席することもできます。ただし、調停では法的な根拠と資料に基づく主張の組み立てが求められます。争点があるときは、弁護士にご依頼いただくことをお勧めします。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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