自営業・フリーランスの休業損害|交通事故被害者が有利に交渉するには
- <このコラムでお伝えしたいこと>
- 1 はしがき
- 2 自営業・フリーランスの休業損害はどのように計算されますか
- (1) 休業損害とは何ですか?
- (2) 売上げがそのまま補償されるのですか?
- (3) 会社員の場合と何が違いますか?
- 3 経費は基礎収入にどう影響しますか
- (1) 固定経費は加算されるのですか?
- (2) 経費の中身はどのように検証するのですか?
- 4 申告所得が低いときはどうなりますか
- (1) 確定申告書の所得額で決まってしまうのですか?
- (2) 確定申告をしていない場合はどうなりますか?
- 5 休業した日数はどのように認められますか
- 6 弁護士のサポート
- <Q&Aまとめ>
- Q1.自営業の休業損害はどうやって計算しますか?
- Q2.売上が落ちた分をそのまま請求できますか?
- Q3.家賃や駐車場代は休業損害に加算できますか?
- Q4.赤字に近い申告でも休業損害はもらえますか?
- Q5.確定申告をしていない場合は請求できませんか?
弁護士 石田 優一
<このコラムでお伝えしたいこと>
交通事故で仕事を休んだ自営業・フリーランスの方の休業損害について解説します。休業損害の立証について給与所得者よりも法的観点が複雑なため、保険会社と争いになることが大変多い争点です。弁護士の立場から、過去の交渉経験を踏まえて解説します。
1 はしがき
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自営業やフリーランスの方の場合、給与所得者と比べて、休業損害をめぐって保険会社と争いになるケースが多いです。
このコラムでは、自営業やフリーランスの被害者の方に向けて、休業損害の計算の考え方をご説明します。
2 自営業・フリーランスの休業損害はどのように計算されますか
(1) 休業損害とは何ですか?
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休業損害とは、交通事故によるけがやその治療のために働けなくなり、本来であれば得られたはずの収入が失われたことに対する損害です。
計算の考え方は、職業を問わず共通です。1日あたりの基礎収入に、休業した日数を掛けて算出します。問題は、自営業・フリーランスの方の場合、この「1日あたりの基礎収入」をどう決めるかです。
(2) 売上げがそのまま補償されるのですか?
売上げがそのまま基礎収入として計算されるわけではありません。この点は、大変誤解が多いところです。
休業損害として賠償の対象になるのは、事業によって手元に残るはずだった利益です。仕入代金や外注費のように、仕事をしなければ支払わずに済む費用は、休んでいる以上は出ていきません。ですから、売上から必要経費を差し引いた所得を出発点にして計算します。
その所得を確認する資料として、まず用いられるのが事故前年の確定申告書です。もっとも一般的な計算方法は、申告された所得金額と、後でご説明する固定経費を足したうえで、365日で割って1日あたりの基礎収入を求める方法です。
(3) 会社員の場合と何が違いますか?
会社員の方との違いは、次の表のとおりです。自営業・フリーランスの方は、収入を証明するハードルが高い問題があります。
| 比較する点 | 会社員の場合 | 自営業・フリーランスの場合 |
|---|---|---|
| 収入を示す資料 | 勤務先が作成する休業損害証明書と源泉徴収票 | 事故前年の確定申告書と、その添付書類 |
| 基礎収入の考え方 | 事故前3か月間の支給額をもとに1日あたりを計算するのが一般的 | 所得金額に固定経費を加え、365日で割るのが一般的 |
| 休んだ日数の示し方 | 勤務先が欠勤日を証明する | 本人の説明と業務の実態から個別に判断される |
この違いがあるために、自営業・フリーランスの方は、休業損害の計算方法を積極的に説明する必要があります。
3 経費は基礎収入にどう影響しますか
(1) 固定経費は加算されるのですか?
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休業中も支払わなければならない固定経費は、基礎収入に加算されます。固定経費とは、仕事をしていても、していなくても、事業を維持するために出ていく費用です。
実務でよく問題になるのは、家賃、駐車場代、水道光熱費といった費目です。事務所や店舗を借りていれば、休んでいる間も賃料は発生します。事業用の車を停めている駐車場も同じです。
他方、仕入代金や外注費のように、稼働に応じて増減する費用は加算されません。ですから、確定申告書に並んだ経費を、性質ごとに仕分けていく作業が必要になります。
(2) 経費の中身はどのように検証するのですか?
経費として計上されているものを、ひとつずつ丁寧に検証します。この作業が、自営業・フリーランスの方の休業損害では最も重要です。
その手がかりになるのは、書類だけではありません。実務では、ご本人からうかがうお話しが大きな手がかりになります。同じ「水道光熱費」でも、事業のためにどう使われていたのかは、帳簿の数字を眺めているだけでは分かりません。
弊所でお受けするご相談でも、確定申告書を先に拝見したうえで、気になった点をご本人にお尋ねし、有利に働きそうな事情がないかを検討していく進め方をとっています。
【具体例】例えば、一人親方として内装工事を請け負っているAさんが、事故でけがをしたとします。工具や車両のリース料、資材置場の賃料は、Aさんが現場に出られない間も発生します。このような費用は、固定経費として基礎収入に加算する方向で検討することになります。
4 申告所得が低いときはどうなりますか
(1) 確定申告書の所得額で決まってしまうのですか?
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確定申告書の所得額が、そのまま結論になるとは限りません。実務では、確定申告書では赤字に近い申告内容になっていても、実態を丁寧に説明することで、それを上回る基礎収入が認められるケースがあります。
もっとも、申告書と異なる収入を主張する以上、相応の立証が求められます。
裁判例では、申告された所得額が生活の実態に見合わないとして、賃金センサス(厚生労働省の賃金構造基本統計調査による平均賃金)を用いて基礎収入を認めたものがあります。
どこまで資料を用意すれば、どの程度休業損害が認められるかは、事案によって異なります。まずは手元の資料をお持ちいただいて、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
(2) 確定申告をしていない場合はどうなりますか?
確定申告をしていない場合でも、休業損害の請求はできます。ただし、収入を示す資料がない分、立証の負担は大きくなります。
このようなご相談では、日々の売上と経費を整理して資料化していただくようお願いしています。通帳の入金記録、請求書や領収書の控え、受注のやり取りといったものが手がかりになります。
資料が乏しいまま交渉に入ると、低い水準の金額で押し切られるおそれがあります。手元にあるものは、たとえ断片的でも捨てずに保管しておいてください。
5 休業した日数はどのように認められますか
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痛みを抱えたまま一部だけ稼働した日も、休業損害の対象から一律に外れるわけではありません。稼働が制限された程度に応じて、部分的な減収として評価される場合があります。
自営業の方は、休めば取引先を失うという事情から、無理をして現場に出ることが少なくありません。そうした事情は、こちらから説明しなければ相手方には伝わりません。実務では、ご本人のお話しを丁寧に整理して、保険会社の理解を求めていくことになります。
6 弁護士のサポート
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自営業・フリーランスの方の休業損害は、基礎収入の考え方、固定経費の仕分け、休業日数の評価と、論点が幾重にも重なります。実務では、弁護士でなければ説得力のある主張を組み立てることが難しいケースが多くあります。
弁護士にご依頼いただくと、確定申告書や帳簿を拝見したうえで、どの点を主張すればどれだけの効果が見込めるかを検討できます。力を入れる論点を絞り、バランスよく交渉を進めることが大切です。
ご相談の時期は問いません。治療中でも、示談の提示を受けた後でもお受けしています。
弁護士法人みおの神戸支店は、神戸市内はもちろん、明石・芦屋・西宮・三木・三田・淡路島の各エリアからもお越しいただきやすい場所にあります。まずは、ご相談いただければ幸いです。
<Q&Aまとめ>
Q1.自営業の休業損害はどうやって計算しますか?
A1.事故前年の所得金額に固定経費を加え、365日で割って1日あたりの基礎収入を求め、これに休業日数を掛けるのが一般的です。売上そのものが補償されるわけではありません。
Q2.売上が落ちた分をそのまま請求できますか?
A2.できません。休業損害の対象は、手元に残るはずだった利益です。仕入代金や外注費のように、休んでいれば支払わずに済む費用は差し引いて計算します。
Q3.家賃や駐車場代は休業損害に加算できますか?
A3.加算できる場合があります。休業中も支払いが続く固定経費は、基礎収入に加算するのが一般的です。家賃、駐車場代、水道光熱費などが問題になります。
Q4.赤字に近い申告でも休業損害はもらえますか?
A4.もらえる場合があります。申告内容が赤字に近くても、経費の中身や事業の実態を丁寧に説明することで、申告額を上回る基礎収入が認められるケースがあります。
Q5.確定申告をしていない場合は請求できませんか?
A5.請求はできます。ただし、通帳の入金記録や請求書の控えなどで収入を示す必要があります。資料が整わない場合は、平均賃金を用いて算定される場合もあります。





