遺産分割に期限はある?10年ルールを弁護士が解説
- <このコラムでお伝えしたいこと>
- 1 はしがき
- 2 遺産分割そのものに期限はあるのですか
- (1) 遺産分割協議に期限はありますか?
- (2) それでは、何に期限があるのですか?
- 3 10年ルールとは、どのような制度ですか
- (1) 10年ルールとは何ですか?
- (2) 期限は、いつから数えるのですか?
- (3) 古い相続では、いつまでに動けばよいのですか?
- 4 10年を過ぎると、実際に何が変わるのですか
- (1) 取り分はどのように決まりますか?
- (2) 時間がたつと、主張の裏づけはどうなりますか?
- 5 放置している間に、手続はどう重くなるのですか
- (1) なぜ、なかなか相談に踏み出せないのでしょうか?
- (2) 長期間放置すれば相続人は増えていくのですか?
- (3) 連絡の取れない相続人がいると、どうなりますか?
- 6 期限を止める方法と、弁護士のサポート
- (1) 10年の期限を止めることはできますか?
- (2) 弁護士に依頼すると、何をしてもらえますか?
- (3) 相談をためらう必要はありますか?
- <Q&Aまとめ>
- Q1.遺産分割に期限はありますか?
- Q2.10年はいつから計算するのですか?
- Q3.10年以上前に始まった相続は、もう手遅れですか?
- Q4.10年を過ぎると、取り分はどうなりますか?
- Q5.10年ルールを阻止する方法はありますか?
- Q6.他の相続人と連絡が取れません。どうなりますか?
- Q7.相談の前に準備しておくとよいものはありますか?
弁護士 石田 優一
<このコラムでお伝えしたいこと>
遺産分割の話し合い自体に期限はありません。ただし相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を主張できなくなります。早めに動くことが、ご自身の取り分を守ることにつながります。
1 はしがき
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「遺産分割の話は、いつかまとめればよい」とお考えの方は、少なくないかもしれません。その結果、話し合いが止まったまま何年も過ぎてしまうケースは、実際に多くあります。
近年、所有者が亡くなった後に名義の整理が進まず、空き家や空き地がそのまま残ってしまう問題が指摘されています。神戸市でも、こうした物件の解消に向けて特命チームを設けるなど、対応を強化しています。長期間放置された不動産問題は、ご家族の問題にとどまらず、地域の問題にもつながっていきます。
令和5年(2023年)4月1日から、遺産分割のルールが大きく変わりました。相続開始から10年を過ぎると、特別受益や寄与分を主張できなくなる、いわゆる「10年ルール」です。このコラムでは、長く未分割のままになっている遺産をお持ちの方に向けて、どのようなことを知っておくべきかをご説明いたします。
2 遺産分割そのものに期限はあるのですか
(1) 遺産分割協議に期限はありますか?
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遺産分割の話し合い(遺産分割協議)そのものに、法律上の期限はありません。相続開始から何年たっていても、相続人全員の合意ができれば遺産を分けることができます。
その結果、他の相続人との交渉が進まないまま放置されてしまう例が最も多く見られます。この理解そのものは誤りではありません。ただ、期限がないのは「分けること」だけです。
(2) それでは、何に期限があるのですか?
期限があるのは、特別受益と寄与分の主張です。特別受益とは、亡くなった方から生前にまとまった贈与を受けていた相続人がいる場合に、その分を計算に入れ直して公平を図る仕組みです。寄与分とは、介護や事業の手伝いなどで亡くなった方の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に、その分を多く認める仕組みです。
この2つを反映させた相続分を「具体的相続分」といいます。ですから、期限を過ぎて主張できなくなると、法律で定められた割合(法定相続分)や遺言で指定された割合(指定相続分)だけで分けることになります。
ここまで、期限の対象を整理しました。ここからは、その期限の中身をご説明いたします。
3 10年ルールとは、どのような制度ですか
(1) 10年ルールとは何ですか?
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10年ルールとは、「相続開始の時から10年を過ぎた後にする遺産分割では、特別受益と寄与分の規定が適用されない」という制度です。民法第904条の3に定められており、令和5年4月1日から適用されています。
なぜこのような期限が設けられたのでしょうか。なぜなら、時間がたつほど、生前の贈与や介護の実情を裏づける資料が失われ、公平な計算が難しくなるからです。
(2) 期限は、いつから数えるのですか?
起算点は、相続開始の時、つまり亡くなった日です。遺産の存在を知った日や、話し合いを始めた日ではありません。
注意が必要なのは、この制度が令和5年4月1日より前に始まった相続にも適用される点です。もっとも、いきなり主張できなくなるわけではなく、猶予期間が設けられています。
(3) 古い相続では、いつまでに動けばよいのですか?
相続が始まった時期による期限の違いは、次の表のとおりです(2026年8月時点の法令に基づきます)。
| 相続が始まった時期 | 特別受益・寄与分を主張できる期限 |
|---|---|
| 令和5年4月1日以後に始まった相続 | 亡くなった日から10年 |
| 令和5年4月1日より前に始まった相続で、亡くなった日から10年を過ぎるのが令和10年4月1日より後になる場合 | 亡くなった日から10年 |
| 令和5年4月1日より前に始まった相続で、すでに10年を過ぎている場合や、令和10年4月1日より前に10年を過ぎる場合 | 令和10年4月1日まで(遅くとも令和10年3月末までに動くことが大切です) |
つまり、何十年も前に始まった古い相続であっても、令和10年3月末までは、これまでどおり特別受益や寄与分を主張できます。逆にいえば、その時期を過ぎると、長年の不公平を計算に入れる道が閉ざされます。
4 10年を過ぎると、実際に何が変わるのですか
(1) 取り分はどのように決まりますか?
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10年を過ぎた後の遺産分割は、法定相続分または指定相続分によって行われます。生前に多額の援助を受けた相続人がいても、その分を差し引いて計算することはできません。長く介護を担ってきた方が、その貢献を取り分に反映させることもできなくなります。
【具体例】例えば、亡くなったお父様の遺産について、長男Aさんだけが住宅の購入資金の援助を受けていたケースを考えてみましょう。仮に相続開始から10年を過ぎていたとします。このような場合、次女Bさんがその援助を計算に入れるよう求めても、原則として認められないと考えられます。
(2) 時間がたつと、主張の裏づけはどうなりますか?
期限の前であっても、時間の経過そのものが主張を難しくします。特別受益が争点になる事案では、昔の財産の動きと使い道を明らかにしなければならず、法的な検討が難しくなることが多くあります。実務では、この争点をきっかけに弁護士へのご相談をお考えになる方が多くいらっしゃいます。
時間がたつと、金融機関の取引明細を途中までしかさかのぼれなくなります。銀行の記録は永久に残るものではないため、援助の事実を示す資料そのものが手に入らなくなるのです。
寄与分でも同じことが起きます。介護の貢献を裏づける中心的な資料は、医療記録と近親者の証言です。ところが、古い医療記録は保存期間を過ぎて残っていないことがあり、近親者の記憶も時間とともに曖昧になっていきます。ですから、寄与分を考えている方は、早い段階で資料を集めておくことをお勧めします。
5 放置している間に、手続はどう重くなるのですか
(1) なぜ、なかなか相談に踏み出せないのでしょうか?
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親族間のことを第三者に相談することを躊躇し、その結果として放置に至るケースが多く見られます。「身内のもめごとを外に持ち出すようで躊躇する」というお気持ちは、やむを得ないことです。
ただ、そのような思いから長期間遺産分割を先延ばしにすれば、寄与分や特別受益を主張する機会を逃したり、空き家問題を生じさせたり、証拠が散逸したりと、様々な弊害が生まれます。解決できず長期間放置された遺産分割がある場合は、早めに弁護士にご相談いただきたいです。
(2) 長期間放置すれば相続人は増えていくのですか?
遺産分割を長期間放置していると、相続人が増えていきます。分けないまま相続人が亡くなると、その方の相続人が新たに加わるからです。これを数次相続といいます。相続人が10人を超えるケースも、世の中では珍しくありません。
人数が増えると、必要な戸籍の範囲も広がります。戸籍の収集だけでも、必要書類を集めるのに大きな労力を要することがよくあります。
また、連絡が取れない相続人の数も増えていきます。
このような問題を抱えている場合は、早期に弁護士にご依頼いただくことをお勧めします。
(3) 連絡の取れない相続人がいると、どうなりますか?
連絡が取れない方、そもそもどこにいらっしゃるか分からない方が1人でもいらっしゃれば、家庭裁判所の審判で解決するほかなく、大変時間を要します。全員の同意を前提とする話し合いでは、決着させられないからです。
そして、人数が増え、所在の分からない方が生じる可能性は、時間がたつほど高まります。早く動くことにこそ意味がある、というのが実務の実感です。
6 期限を止める方法と、弁護士のサポート
(1) 10年の期限を止めることはできますか?
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できます。10年が過ぎる前に家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停や審判の申立て)をしておけば、その後の手続では特別受益や寄与分を主張できます。話し合いがまとまらないまま期限が近づいているときは、この申立てが重要です。
また、期間が満了する前の6か月以内に、やむを得ない事由で遺産分割を請求できなかった場合には、その事由がなくなった時から6か月を過ぎる前に申し立てれば、例外として主張が認められます。ただし、これは限られた場合の救済ですので、これを見込んで待つことは望ましくありません。
遺産分割調停は、相手方となる相続人の住所地の家庭裁判所に申し立てるのが原則です。例えば、神戸市内(西区を除きます。)にお住まいの相続人を相手方とする場合は、神戸家庭裁判所が窓口になります。
(2) 弁護士に依頼すると、何をしてもらえますか?
弁護士に依頼すれば、戸籍の収集による相続人の確定、所在の分からない相続人の調査、金融機関への取引明細の照会、他の相続人との交渉、調停や審判の代理まで、一貫してサポートできます。顔を合わせづらい相手方とのやり取りも、弁護士が窓口となりますので、ご本人が直接対峙する必要もなくなります。
(3) 相談をためらう必要はありますか?
その必要はありません。遺産分割は、ご自身の正当な権利を主張するものですから、弁護士へのご相談を躊躇する必要はまったくありません。納得のいかないままに放置し続けるのではなく、弁護士にご相談いただいて次のステップに進むことをお勧めします。
早い段階でご相談いただくことで、選べる手立ては確実に広がります。弁護士法人みおでは、長く止まってしまった遺産分割のご相談を数多く承っております。
当事務所は、神戸市内はもちろん、明石・芦屋・西宮・三木・三田・淡路島の各エリアからもお越しいただきやすい場所にありますので、まずはお気軽にご相談ください。
<Q&Aまとめ>
Q1.遺産分割に期限はありますか?
A1.遺産分割の話し合い自体に期限はありません。ただし、相続開始から10年を過ぎると、特別受益と寄与分を主張できなくなります(民法第904条の3)。
Q2.10年はいつから計算するのですか?
A2.亡くなった日から計算します。遺産の存在を知った日や、話し合いを始めた日ではありません。
Q3.10年以上前に始まった相続は、もう手遅れですか?
A3.手遅れではありません。令和5年4月1日より前に始まった相続には猶予期間があり、令和10年4月1日までは特別受益や寄与分を主張できます。遅くとも令和10年3月末までに動くことが大切です。
Q4.10年を過ぎると、取り分はどうなりますか?
A4.法定相続分または指定相続分だけで分けることになります。生前の援助や介護の貢献を計算に入れることはできません。
Q5.10年ルールを阻止する方法はありますか?
A5.10年が過ぎる前に家庭裁判所へ遺産分割の請求をしておけば、その後も特別受益や寄与分を主張できます。話し合いが進まないときは、申立てをご検討ください。
Q6.他の相続人と連絡が取れません。どうなりますか?
A6.全員の同意が得られないため、家庭裁判所の審判によって解決することになります。所在の調査から必要になり、相当の時間がかかります。
Q7.相談の前に準備しておくとよいものはありますか?
A7.亡くなった方の戸籍や不動産の登記事項証明書、預金の通帳、遺言書があればご用意ください。生前の援助や介護に関する資料も、手元にある範囲でご持参いただくと検討が進みます。





