AI・IoT等の新技術

気象ビジネスと気象データの利活用

弁護士 石田 優一

コラムのご紹介

今回のコラムのテーマは,気象データ利活用と気象ビジネスです。保有する企業内データを,インターネット上で提供される様々な気象データと連携させ,AIに分析させることで,豪雨・大雪・高低温等の様々な異常気象に伴うリスクを回避したり,生産性向上や商品・サービスの品質向上につなげることができます。今回のコラムでは,IoT税制の活用にも言及しながら,AI・IoT時代に注目される「気象ビジネス」を取り上げます。


はじめに

異常気象はビジネスにも大打撃を与える

平成30年6月下旬から7月上旬にかけて,台風7号と梅雨前線が原因となって発生した豪雨は,日本各地で大きな被害を発生させ,気象庁により「平成30年7月豪雨」と命名されました。また,日本では,これまで,台風,ゲリラ豪雨,大雪,高温・低温,日照不足,少雨(水不足)等,様々な異常気象に悩まされてきました。そして,様々な異常気象によって,ビジネスの現場も大きな被害を受けてきました。

 

異常気象の原因については研究が進められ,「地球温暖化」や「ヒートアイランド現象」といった環境問題との関連も指摘されています。地球温暖化・ヒートアイランド現象については,省エネや公共交通利用の推奨,都市の緑化等,様々な施策が講じられてきましたが,根本的解決には至っていないのが現状です。

 

また,異常気象についても,発生予想の技術は年々高まっていますが,発生自体を防ぐことは,少なくとも現在の技術では困難です。

 

気象・気候の変化はビジネスにどのような影響を与えるか

異常気象の発生を始め,様々な気象・気候の変化は,ビジネスに大きな影響を与えます。

 

例えば,農業は気温・雨量・日照といった気象条件,水産業は水温・波・風等の気象条件によって,特に大きな影響を受けやすい業種です。また,鉄道・航空等の交通機関や,物流業宿泊・旅行業等も,異常気象の発生によって大きな影響を受けます。

 

他の業種でも,例えば,食品業界や衣料品業界は気温の変化によって売れ行きを左右されますし,スーパーやコンビニ等の業界は天気によって来客者数が大きく変化します。

 

気象データとビジネスを結びつければ

少なくとも現代の技術では,人の手で気象条件を操作することはできません。ですから,ビジネスの側が,気象条件の変化に柔軟に対応することが重要です。

 

気象庁は,平成29年3月,民間気象事業者や気象学関係者,産業界の有識者等とともに,「気象ビジネス推進コンソーシアム」を立ち上げました。このコンソーシアムでは,ビジネスでの気象データ利活用を推進するために,セミナーフォーラムの開催,研究活動等が行われています。

 

また,気象庁は,過去の気象情報や予報情報に関する大量の気象データ(気象ビッグデータ)を,企業等での利活用の推進を目的に,「気象データ高度利用ポータルサイト」で提供しています。

 

企業が,インターネットから容易に取得することのできる最新の気象データを有効活用して,ビジネスに取り入れていけば,気象条件の変化に柔軟に対応して,生産性の向上等につなげていくことができます。

 

気象データをどうやって利活用していくか

農業(アグリビジネス)

農業は,昔から,気温・雨量・日照・風・湿度等,様々な気象条件に左右されてきました。あらかじめ,今後予想される気象条件が明らかであれば,どのような管理をしなければならないかを正確に把握したり,最適な収穫時期を予測したりすることのできるメリットがあります。

 

気象庁や民間の気象事業者が提供する気象データと,AI・IoTの技術を連携させることで,農業の効率化高品質化を図ることもできます。AI・IoT等の技術を活用した農業のことを,「スマート農業」といいます。例えば,兵庫県豊岡市は,平成30年5月31日から,「豊岡市スマート農業プロジェクト」を開始し,IoT等の活用によって水田管理を行う試みを行っています。

 

農林水産省の「スマート農業の実現に向けた研究会」では,現在,気象データや生育データ等の情報を集約して提供するデータプラットフォームの創設が検討されています。

 

農業データ連携基盤の構築について

平成30年2月13日農林水産省作成資料「スマート農業の実現に向けた取組について」より

 

気象データとAI・IoTの技術を連携させることで,より正確な管理と適切な収穫時期の見極めを容易にし,作物の高品質化を図ることにつながります。また,これまで農業従事者の「長年の勘」によって担われてきた作物の管理を,AIによる気象データや生育データ等の分析代替させ,また,主要な農作業を農業ロボット等に代替させることで,深刻化する人手不足の解消につなげられます。

 

スマート農業の技術開発に地域ぐるみで取り組むことで,新たな地域ブランドの創出にもつなげることができます。スマート農業によって既存の特産品の質を高め,ブランド化していくことで,地域活性化にもつながります。

(地域ブランドの保護制度については,「こちらのコラム」もご参照ください。)

 

メーカー・物流業・小売業

メーカー・物流業・小売業にとって,「いつ」「どの商品」「どれだけ」売れるかを正確に分析することは,重要な課題です。これらの分析ができれば,商品の不足過剰供給を防ぐことができ,生産性の向上を図ることができます。

 

商品の売れ行きについて正確に分析するためには,気象データの利活用が重要です。例えば,コンビニをイメージすれば,暑くなればビールや清涼飲料水,アイス等が売れ,寒くなればおでんや肉まん等が売れます。雨になれば来店者数は減りますが,ビニール傘の売上げは好調になります。

 

気象情報を分析して売上予想を行う戦略を,「ウェザーマーチャンダイジング」といいます。過去の気象データと各地域の店舗での商品ごとの売上げの変化から,両者の相関関係をAIに分析させて,今後の予報に応じた適切な発注量調整を行うことで,売れ残りや品薄を防ぐことができます。

 

このような取組みによって,商品の廃棄無駄な輸送を削減することができ,CO2排出量の削減,そして,地球温暖化の抑制にもつながります。気象データの活用が,「異常気象の発生を防ぐ」という思わぬ効果をもたらすことになります。

 

医療関係

原因については十分に解明されていませんが,特定の気象条件で痛み,吐き気,めまい等の症状が生じる「気象病」という病気があります。

 

例えば,毎日の体調を記録しておけば,気象データとの相関関係を自動的に分析してくれるアプリがあれば,日々の体調をあらかじめ予想して予防することができます。また,このようなアプリから各患者のデータを収集して,気象病の原因解明に活用することも考えられます。

 

他にも,花粉症,インフルエンザ,デング熱といった季節性の病気の蔓延予想等,気象データは,医療関係においても様々な有効活用が可能です。

 

その他

気象データを有効活用する方法は,他にも多種多様です。創造力次第で,新しい気象ビジネスを発案し,IoT技術ビジネスモデル特許につなげられるかもしれません。

 

IoT税制の活用

IoT税制とは,IoT関連のシステム等(対象設備)を導入して労働生産性を向上させる見込みを立てることで,(1)対象設備の30%特別償却か,(2)原則3%の税額控除のいずれかの減税措置を受けられる制度のことです。AI・IoTによる気象データの利活用は,様々な業種にとって有用性の高いものですが,その一方で,初期投資に高額な費用を要するデメリットがあります。IoT税制を活用することで,初期投資の負担を抑えることができます。詳しくは,「こちらのコラム」をご覧ください。

 

ここまでご説明したとおり,気象データとIoTの技術を連携させることで,生産性向上の実現につなげることができます。IoT税制をうまく活用することで,気象ビジネスの普及につなげることができます。

 

おわりに

気象ビジネスという言葉は,まだまだなじみが薄いですが,今後,AI・IoT時代の中で重要なキーワードの1つになっていくと思われます。

 

気象ビジネスは,創造力次第で,多種多様な業種で取り入れられるものです。

ぜひ,IoT税制も活用しながら,AI・IoTによる気象データ利活用や,気象ビジネスへの参入をご検討ください。

 
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このコラムを書いた人

弁護士 石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
情報処理安全確保支援士、応用情報技術者の資格を持つ若手弁護士。IT、IoT、営業秘密など、いつでもすぐに、最新の問題に対応するリーガルサービスを提供できるよう、5年先、10年先を読みながら、日々研鑽を積んでいる。
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