労務管理

「特定技能」資格で外国人を雇用する際の契約書・支援計画づくりと雇用管理のポイント

弁護士 石田 優一

 

平成31年4月から改正入管法が施行し,介護・外食・宿泊の3分野をスタートに,「特定技能」という新しい外国人労働者の受入れ制度が始まります。このコラムでは,「特定技能」は今までの在留制度と何が違うのか,そして,雇用契約書・支援計画・雇用管理のポイントを,徹底解説します。


※ このコラムは,平成31年2月時点で公表されている資料に基づいて執筆しており,今後の動向に応じて順次更新していく予定ですが,常に最新情報が反映されてはおりませんことをご容赦ください。最新情報につきましては,法務省のサイトなどをご参照ください。

 

第1章 はじめに

平成31年4月,改正入管法が施行され,新たに「特定技能」の在留資格が認められます。入管法の改正審議においては,技能実習生の失踪理由に関する調査ミスが問題化したり,事実上の移民政策ではないかという議論を呼んだりと,紆余曲折がありましたが,平成30年12月8日に成立し,同月14日に公布されました。在留資格「特定技能」は,平成31年4月から介護・外食・宿泊の3業種で解禁され,その後,飲食料品製造業,農業,建設業など11業種(計14業種)で順次解禁される予定です。

新制度によって,雇用人材として外国人を受け入れることが広く解禁され,外国人雇用が私たちにとってより身近なものとなります。ただ,外国人をこれまで雇用したことがない多くの経営者は,外国人を雇用することに対して高いハードルをイメージしているのではないでしょうか。

たしかに,外国人雇用には,在留資格や,言葉・文化の違いといった,特有の難しい問題があります。ただ,これらの違いをきちんと理解することができれば,外国人雇用は決してハードルが高いわけではありません。なぜなら,外国人雇用において適用される基本ルールは,労働基準法,労働安全衛生法,労働契約法といった日本人と共通のものであり,決してゼロから特別なルールを理解しなければならないわけではないからです。

今回のコラムでは,改正法の施行と同時に受入れがスタートする介護・外食・宿泊の3業種を特にクローズアップしながら,在留資格「特定技能」で外国人を受け入れるために知っておくべき法律問題を徹底解説いたします。

外国人

 

第2章 そもそも在留資格「特定技能」とは何なのか

1 在留資格とは何か

(1) 在留資格の基礎知識

このコラムは,これまで外国人を雇用したことがない経営者の方も対象としておりますので,はじめに,在留資格の基本的な仕組みから説明したいと思います。

外国人雇用になじみのない方にとっては,「在留資格」ではなく,「ビザ」,「就労ビザ」という言葉のほうが分かりやすいかもしれません。ただ,「在留資格」と「ビザ」という言葉は混同して使われがちですが,正確には意味が異なります。

「ビザ」(正式には「査証」といいます。)というのは,日本に上陸するためにあらかじめ取得しておかなければならないもので,在外の日本総領事館や日本大使館において取得することができます。一方で,「在留資格」とは,日本に上陸してから,日本に「居続けることができる」資格のことです。「ビザ」をあらかじめ取得しておくことで,空港などで日本への上陸が許可され,その人には「在留資格」が与えられるのです。

 

(2) 在留資格を取得するまでの一般的な流れ

例えば,外国人が日本の企業に正社員として採用され,日本に来るケースを想定します。このようなケースでは,「技術・人文知識・国際業務」という種類の在留資格の取得を目指すことが一般的です。この在留資格は,簡単にいえば,「大学などを卒業したレベルの外国人やそれなりの実務経験がある外国人が専門知識・技術を活かして日本で正社員として働くような場合」を想定したものです。

まず,雇用先である日本の企業が,地方入国管理局(いわゆる「入管」のことです。)で「在留資格認定証明書」を申請して取得します。在留資格認定証明書には,ビザの申請の際や,日本への上陸の際に,「この方は日本に来てもいい人ですよ」とあらかじめ「お墨付き」を与える意味があります。申請については,企業担当者が直接行うケースもありますが,行政書士などの専門家に依頼することが一般的です。

次に,在留資格認定証明書を採用予定の外国人に送付して,現地の日本総領事館や日本大使館においてビザを発給してもらいます。ビザにも様々な種類があり,在留資格の種類におおむね対応しています。このケースでは,「技術・人文知識・国際業務」という種類の就業査証(いわゆる「就労ビザ」のことです。)を取得することになります。

そして,外国人は,パスポート,ビザ,在留資格認定証明書の3点セットをもって日本に赴き,空港などで上陸許可を受けると,晴れて「在留資格」が与えられることになります。

 

(3) 外国人を採用するうえで知っておかなければならないこと

外国人を採用する際には,雇用先が重要な役割を担うことになります。なぜなら,雇用先は,採用予定の外国人のために,「在留資格認定証明書」を取得しなければならないからです。

厳密にいえば,「在留資格認定証明書」がなくてもビザの申請をすることはできるのですが,その場合,ビザの申請に格段の手間と時間がかかりますので,現実的ではありません。

「在留資格認定証明書」の申請手続については,行政書士などの専門家に委ねることができますので,必ずしも採用担当者が実務書を開いてイチから勉強しなければならないわけではありません。

ただ,在留資格と雇用条件とは密接な関係にありますので,雇用契約書を作成したり,人事管理を行ったりするうえで,一定の在留資格に関する知識は求められます。

例えば 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格であれば,業務の内容がその外国人の専門的知識・技術を活かしたものであることが求められます。その点をきちんと意識せずに,専門的知識・技術と関連のない業務ばかりをさせることを予定したり,採用後にそのような業務ばかりをさせていたりすると,その外国人が在留資格を取得できない,あるいは取り消されるなどのリスクを負うことになったり,企業側の責任を問われたりするおそれがあります。

最悪の場合,不法就労助長罪(入管法73条の2第1項)に問われて処罰されるおそれもあります。不法就労助長罪は故意がなくても過失があれば処罰対象となるため(同条2項),「この仕事に就かせてはいけないことを知りませんでした」と言い逃れをすることは困難です。もし外国人を就労させるにあたって不安なことがあれば,そのまま放置せず,すぐに外国人雇用に詳しい弁護士などに相談すべきです。

 

2 在留資格はどのような外国人に認められるのか

在留資格は,外国人であればだれでも与えられるというものではありません。在留資格には様々な種類がありますが,それぞれ取得するために必要な要件が決められていて,その要件を満たさなければ,在留資格を取得することはできません。

どのような外国人の入国を認めるかは,国際慣習法で,国家が自由裁量で決定できるものとされています(最大判昭和32年6月19日参照)。そのため,どのような外国人に在留資格を認めるかは,国によって異なり,各国の政策の違いが大きく現れます。

日本では,長年にわたって,就労を目的とした外国人の受入れに対して慎重な政策が採られてきました。仕事を求めて多数の外国人が日本に流入することで,日本の雇用や社会保障制度などに重大な影響を及ぼすおそれが懸念されてきたからです。これまで,就労を目的とした外国人の在留は,原則として,専門的な知識や技能を有する人が,その知識や技能を必要とする業務に従事する場合に限定されてきました

最近,コンビニや飲食店などで見かける機会が増えた外国人は,資格外活動許可を受けて働いている外国人留学生などで,就労を目的とした在留資格で雇用されている人材ではありません。資格外活動許可を受けたとしても,就業時間に制約があり,フルタイムで働くことはできません

このような流れを大きく転換させるのが,在留資格「特定技能」の創設です。「特定技能」の場合は,これまでの制度で求められてきた専門的な知識や技能が必須とはいえない仕事を目的とした在留が認められます。

 

3 在留資格「特定技能」とは

「特定技能」制度の創設によって,専門的な知識や技能までは求められない業務に就労する目的で,在留資格が与えられるようになります。例えば,飲食店であれば,注文取りやレジ対応,野菜切りや買い出しといった作業を行うスタッフとして,フルタイムで外国人を雇用することができるようになるわけです。

「特定技能」制度による外国人の受入れは,当面,ベトナム,フィリピン,カンボジア,中国,インドネシア,タイ,ミャンマー,ネパール,モンゴルの9か国に限定される予定です。「特定技能」制度が定着していけば,今後,受入対象が拡大していくことが予想されます。

「特定技能」制度の目的は,人材不足が深刻化している業界において外国人を受け入れて,人材確保を図ることにあります。そのため,「特定技能」制度を活用できるのは統計的に人材不足が問題になっている産業分野に限定され,統計的な予想を踏まえて分野別に受入れ人数の上限が設定されます。このような制度設計には,外国人が過剰に流入して,日本人の雇用に影響を与えることを防ぐ意味があります。

また,「特定技能」の在留資格を取得することができる外国人は,従事しようとする産業分野の知識や日本語能力が一定水準にある者に限定されます。このような水準に達していない外国人は,即戦力としての活躍が期待できないばかりでなく,能力不足を理由として劣悪な雇用条件のもとに置かれる懸念もあるからです。

「特定技能」制度は,平成31年4月からスタートし,介護・外食・宿泊の3業種から解禁される予定です。また,平成31年10月から飲食料品製造業で解禁されることが決まっており,そのほかに,農業,建設,造船,自動車整備,漁業,航空,ビルクリーニング,素形材産業,産業機械製造業,電気電子情報関連の10業種で順次解禁されることが予定されています。

「特定技能」の在留資格には,通算5年を上限に在留が認められる「特定技能1号」と,更新によって無期限での在留が認められるほか,家族の帯同も認められる「特定技能2号」の2種類があります。「特定技能1号」については前述した14業種で認められる予定ですが,一方で,「特定技能2号」については建設と造船の2業種のみからスタートすることが予定されています。

ここからは,はじめに解禁される介護・外食・宿泊の3業種について,「特定技能」制度が導入される意味や活用方法について説明したいと思います。なお,以後「特定技能」というときは,特に区別する表現を用いない限りは,「特定技能1号」のことを指します。

パスポートなど

 

第3章 介護業界で「特定技能」の人材をどのように活用するか

1 これまでの介護業界に関する在留資格とは

(1) 在留資格「介護」

介護業界に関しては,平成29年に「介護」という在留資格が新設されました。この在留資格は,日本の介護福祉士の資格を取得した外国人に対して,介護職への従事を目的とした在留を認めるものです。外国人が在留資格「介護」を取得する典型的な流れは,留学生として日本に入国し,大学や専門学校などの介護福祉士養成施設で2年以上修学したうえで,国家試験に合格すること(平成33年度までの卒業者には経過措置あり)です。

 

(2) EPA介護福祉士候補者

また,インドネシア(平成20年度から),フィリピン(平成21年度から),ベトナム(平成26年度から)については,経済連携協定(EPA)による介護人材の受入れがすでに行われています。それぞれの国で看護学校を卒業し,日本での介護福祉士資格の取得を目指す人(EPA介護福祉士候補者)に対して,「特定活動」の在留資格を与え,日本の介護福祉士養成施設での3年以上の就労経験(フィリピン・ベトナムについては就労コースの場合)を通じて国家試験合格を目指させる制度です。国家試験に合格することができれば,「介護」の在留資格を取得することができます。

 

(3) 技能実習制度

このほかに,外国から介護人材を受け入れる制度として活用されてきたのが,技能実習制度です。

技能実習制度とは,開発途上国などの人材を日本の企業などで一定期間受け入れ,技能・技術・知識を習得させることによって,開発途上国などの人材育成や経済発展につなげていくことを目的としたものです。

技能実習生は,日本語や介護の基本的知識に関する講習を受けた後に,受け入れ先企業に雇用されて,技能実習指導員の指導のもとで,約1年間の実習を受けます。そして,試験に合格した技能実習生は,さらに2年間の実習を受けることができます。一定の要件を満たすと,いったん帰国したうえで,さらに2年間の実習を受けられる場合もあります。このように,原則3年又は5年の実習を通じて,日本の介護に関する知識と経験を養い,本国の介護現場を担う人材となることが想定されています。

制度の仕組み上,技能実習制度のもとで日本に在留することのできる期間は限定されています。また,技能実習制度の場合,訪問看護サービスへの従事が認められない,受入れ可能人数に制限があるといった制約があります。

 

(4) まとめ

これまで介護業界に関して認められてきた在留制度は,技能実習制度を除けば,日本の介護福祉士資格を有していることや,その資格の取得を目指すことを前提としたものでした。

これまでの制度は,海外で介護に関する知識と経験を養った人材を広く受け入れ,即戦力として活用するものではありませんでした。

ただ,日本の介護福祉士資格はいわゆる名称独占資格であって,資格がなければ介護に関する業務に従事できないわけではありません。たとえ日本の介護福祉士資格を有していなくても,介護に関する十分な知識と経験がある人材であれば,即戦力として現場で活躍することができると考えられます。

「特定技能」制度によって,日本の介護福祉士資格を有しない外国人が,即戦力として介護現場で活躍する道が開かれることとなります。

 

2 「特定技能」制度の創設でどのように変わるか

介護分野においては,今後予想される人材不足数を踏まえて,今後5年間で,6万人を上限に受入れを行うこととされています(平成30年12月25日閣議決定「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」)。

介護分野の「特定技能」では,入浴,食事,排せつの介助などの業務や,レクリエーションの実施,機能訓練の補助などの付随的な支援業務が認められます。

「特定技能」の在留資格を取得するためには,介護分野に関する知識日本語能力が必要です。介護分野に関する知識を問う「介護技能評価試験(仮称)」と,一般的な日本語能力を問う「日本語能力判定テスト(仮称)」など,そして,介護分野に関する日本語能力を問う「介護日本語評価試験(仮称)」に合格することが必要です。

このうち,「介護日本語評価試験(仮称)」は,介護現場で使用される日本語の能力を測る試験で,外食業分野や宿泊業分野に同様の試験はありません。介護現場では業界独特の専門用語が使用されており,その用語を理解できないことが介護業務に大きな支障を及ぼすことから,特別な試験が課されることになっています。もっとも,日本人にとっても難しい専門用語を問う試験であることから,この試験に合格することが外国人にとって大きなハードルになるのではないかという懸念はあります。

以上に述べた試験にすべて合格することが原則ですが,介護分野で3年(又は5年)の技能実習を修了した人については,各試験が免除されます。技能実習において講習や試験を受けているほか,3年(又は5年)の実務経験を経ているため,十分な即戦力を有しているといえるからです。

特定技能で介護の仕事を3年以上続けた場合には,介護福祉士の資格を取得することで,「介護」の在留資格への変更が可能になる予定です。

「特定技能」制度の創設によって,外国において日本の介護の知識と日本語能力を養った外国人が,日本の介護現場で即戦力として雇用され,3年経過後に介護福祉士の資格を取得することで,無期限に日本の介護現場で働くことができるようになります。また,技能実習修了者にとっては,すぐに本国に戻って就職する選択肢に加えて,日本の介護現場で引き続き経験を養う選択肢が与えられることになります。

雇用先から見れば,人材不足を即戦力のある外国人の雇用によって解消したり,優秀な技能実習生に引き続き働いてもらうことで技能実習制度を安定した人材確保に活用したりすることができるメリットがあります。

介護の様子

 

第4章 外食業界で「特定技能」の人材をどのように活用するか

1 これまでの外食業界に関する在留資格とは

外食業界において外国人を雇用する場合,これまでの制度であれば,「技能」の在留資格を活用することが一般的でした。技能実習制度では,外食業は対象職種とされていません。

「技能」の在留資格は,産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動に対して認められます。例えば,外食業界であれば,本場中国で修業をした本格的な中華料理の調理師や,フランスで修業したワインソムリエなどが該当します。中華料理であっても,例えば,大衆的なラーメン屋などでは「技能」の在留資格は認められません。また,「技能」の在留資格を取得するためには,原則として10年以上の実務経験(専門学校などで学んだ期間を含みます)が必要とされています。

このように,「技能」の在留資格は,ベテランの料理人が専門の外国料理店で働くようなケースを想定しています。大衆向けのファミリーレストランや居酒屋,ファーストフード店などで外国人を雇用する際には,「技能」の在留資格を活用することはできません。これらの店で外国人が働いている姿を見かけることはしばしばありますが,いずれも,資格外活動許可を受けた外国人留学生などのアルバイトや,永住者などの就労に制限がない外国人です。

ファミリーレストランの24時間営業の中止が相次いでいることからも明らかなように,外食業界では,人材不足が深刻化しています。そこで,外食業界において人材不足を解消するための手立ての1つとして,これまで消極的であった外国人人材を広く受け入れることが検討されるようになったわけです。

 

2 「特定技能」制度の創設でどのように変わるか

外食業分野においては,今後予想される人材不足数を踏まえて,今後5年間で,5万3000人を上限に受入れを行うこととされています(平成30年12月25日閣議決定「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」)。

外食業分野の「特定技能」では,飲食物の調理や,接客,店舗管理のほか,買い出しや配達などの付随的な業務も認められます。

「技能」の在留資格では認められなかったラーメン屋,居酒屋,ファミリーレストランなどでのスタッフ業務も,「特定技能」であれば認められるようになります。

「特定技能」の在留資格を取得するためには,外食業分野に関する知識日本語能力が必要です。外食業分野に関する知識を問う「外食業技能測定試験(仮称)」と,一般的な日本語能力を問う「日本語能力判定テスト(仮称)」などに合格することが必要です。

「特定技能」制度の創設によって,外国において外食業の知識と日本語能力を養った外国人が,日本の飲食店などで即戦力として雇用され,人材不足が深刻化する外食業界にとって,貴重な人材となることが期待されています。

外国人

 

第5章 宿泊業界で「特定技能」の人材をどのように活用するか

1 これまでの宿泊業界に関する在留資格とは

宿泊業界において外国人を雇用する場合,これまでの制度であれば,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を活用することが一般的でした。

技能実習制度では,現在のところ,宿泊業は対象職種とされていません。なお,現在,宿泊業を技能実習制度の対象職種にしようとする動きがあり,検討されています。

「技術・人文知識・国際業務」は,専門的・技術的分野の外国人受入れに活用することができる在留資格です。この在留資格は,「技術」類型と「人文知識・国際業務」類型に区分され,さらに,「人文知識・国際業務」類型は「人文知識」カテゴリーと「国際業務」カテゴリーに区分されます。

「人文知識」カテゴリーの在留資格は,「法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務に従事する活動」(以下「人文知識の活動」といいます。)に対して認められます。また,「国際業務」カテゴリーの在留資格は,「外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務に従事する活動」(以下「国際業務の活動」といいます。)に対して認められます。

宿泊業界での人文知識の活動として想定される業務は,例えば,宿泊客層の変化を分析・予測したうえでのサービス内容の企画や,会計事務などです。また,宿泊業界での国際業務の活動として想定される業務は,例えば,外国人観光客への外国語対応などです。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するためには,一定の学歴や実務経験が求められ,かつ,その知識や経験を業務で活かすことが求められます。

例えば,宿泊客の案内や一般的なフロント受付などを主な業務内容とする人材の採用には,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を活用することはできません。これらの人材として,資格外活動許可を受けた外国人留学生などを活用することはできますが,就労可能な時間に制限があるため,フルタイム採用はできません。

宿泊業界は,外食業界とともに離職率が高く,深刻な人手不足が問題になっています。また,日本を訪れる外国人観光客数は大幅な増加傾向にあり,2020年の東京オリンピックや,2025年の大阪万博開催に先立ち,宿泊業界での人材確保は重要な課題となっています。そこで,宿泊業界において人材不足を解消するための手立ての1つとして,これまで消極的であった外国人人材を広く受け入れることが検討されるようになったわけです。

 

2 「特定技能」制度の創設でどのように変わるか

宿泊分野においては,今後予想される人材不足数を踏まえて,今後5年間で,2万2000人を上限に受入れを行うこととされています(平成30年12月25日閣議決定「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」)。

宿泊分野の「特定技能」では,フロント,企画・広報,接客,レストランサービスなどの旅館・ホテルでの一般的なスタッフ業務が認められます。「特定技能」制度のもとでは,特に専門的な知識・技能を必要とする業務に限定されることなく,ある程度の知識・技能が求められる幅広い業務に従事することができます。

「特定技能」の在留資格を取得するためには,宿泊業分野に関する知識日本語能力が必要です。宿泊業分野に関する知識を問う「宿泊業技能測定試験(仮称)」と,一般的な日本語能力を問う「日本語能力判定テスト(仮称)」などに合格することが必要です。

「特定技能」制度の創設によって,外国において宿泊業の知識と日本語能力を養った外国人が,日本の旅館やホテルで即戦力として雇用され,人材不足が深刻化する宿泊業界にとって,貴重な人材となることが期待されています。

ホテルマン

 

第6章 雇用契約書作成上の留意点

1 改正入管法が定める雇用契約のルール

改正入管法2条の5第1項では,特定技能制度に基づいて外国人を雇用する場合には,法務省令で定める基準に適合するように雇用条件を定めなければならないことが定められています。そして,法務省令として,「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(仮称,以下「基準省令」といいます。)が制定される予定です。

基準省令の草案はすでに公表されておりますので,その内容に従って,どのような基準に適合しなければならないかについて説明します。もっとも,基準省令はあくまでも草案段階ですので,見直しがされる可能性があることにご留意ください。

また,法務省令で定める基準に適合する雇用条件をどのように契約書の形にするかについては,モデル雇用契約書が近く公表される予定ですので,お待ちいただければと思います。

ここでは,特定技能制度のおおまかなルールを理解していただくために,基準省令案の概要を示します。主な基準は,次のとおりです。

 

(1) (雇用する外国人の特定技能の分野に属する)相当程度の知識・経験を必要とする技能を有する業務又は熟練した技能を要する業務に従事させるものであること

「特定技能」の在留資格は,「技術・人文知識・国際業務」や「技能」の在留資格ほどの専門的な知識や技能を要件としてはいませんので,この基準はある程度緩やかなものです。

ただ,例えば,外食業界においてほとんど買い出しばかりを任せる要員としたり,特定技能で認められる業務とは無関係なことをさせたりすることは,この基準に反して許されません。前章までで説明した特定技能制度についてきちんと理解したうえで,それぞれの分野でどこまでの範囲の業務が対象になるかをきちんと検討しておく必要があります。

 

(2) 所定労働時間が通常の労働者の所定労働時間と同等であること

特定技能制度に基づいて外国人を雇用する場合には,フルタイムが原則で,パートタイム雇用は認められません。

 

(3) 外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること

同様のルールは,技能実習制度にも存在しています。技能実習生と日本人労働者との賃金格差が問題となった事例として,デーバー加工サービス事件(東京地判平成23年12月6日)があります。この裁判例では,技能実習生は受入れのために企業が相応のコストを負担していること,技能実習生は十分な日本語能力を有せず日本人労働者と完全に同等の業務遂行能力を有していたとはいえないことなどを理由に,技能実習生と日本人労働者との賃金格差は合理的な範囲にとどまっていると判断しています。

このことを踏まえると,特定技能制度においても,業務遂行能力の違いなどの合理的な理由に基づいて特定技能の外国人労働者と日本人労働者との間に一定の賃金格差を設けることは許されると考えられます。

ただ,最近では「同一労働同一賃金」という考え方が定着しつつあり,賃金格差が合理的な範囲にとどまっているかどうかの判断は次第に厳格になっていく可能性がありますので,賃金格差を設ける場合には,実務や裁判例の動向に応じた慎重な検討が必要です。

 

(4) 報酬の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について差別的な取扱いをしていないこと

これも,(3)と同様の考え方が当てはまると考えられます。待遇に格差を設ける場合には,その合理的な理由を説明することができるように慎重な検討が求められます。

 

(5) 外国人が一時帰国を希望した場合は必要な有給休暇を取得させるものとしていること

あくまでも労働基準法に定める有給休暇を取得させなければならないことを定めているにすぎないことから,有給休暇を取得されることで事業な正常な運営を妨げることを理由に雇用先が時季変更権を行使することは否定されません。

もっとも,時季変更権の行使を変更するに当たっては,旧正月などの外国文化特有の休暇取得の必要性にも配慮することが求められます。

 

2 その他の雇用契約書作成上の留意点

(1) 雇用契約書に対する意識の違い

雇用契約書の内容をどこまで重視するかは,国の文化によって大きな違いがあります。外国人を雇用する場合は,日本人を雇用する場合よりもいっそう,雇用契約書の内容の検討に重きを置くことが求められます。

 

(2) 在留資格への配慮

外国人労働者の場合,何らかの事情により,採用内定後に,在留資格を取得することができない事情が生じることがあります。このような事情が生じうることは,特定技能においても例外ではありません。

採用内定通知書などには,在留資格を取得することができない事情が生じた場合において,採用内定を取り消すことができる旨の定めを設けておくべきです。

なぜなら,判例(大日本印刷事件,最二判昭和54年7月20日)の考え方によれば,採用内定によって解約権を留保した就労始期付の労働契約が成立するものと解されているため,採用内定取消しの効力をめぐって争いになるおそれがあるからです。

また,採用内定を取り消す場合に,外国人が在留資格の取得などのために要した費用を雇用主がどこまで負担するかについても,明示しておくべきです。

さらに,外国人が日本に在留中に,在留資格が取り消されたり,在留資格が変更されて就労の継続ができなくなったりする場合があります。このような場合を雇用契約書に解雇事由として明記しておくことで,トラブルを防止することができます。なお,このような事情を理由とする解雇においては,一般に「労働者の責に帰すべき事由」(労働基準法20条1項但書)があるものとして解雇予告手当を支払わなくてよいものと考えられますが,解雇予告手当を支払わないのであれば,労働基準監督署長の認定を受けなければならないことに注意が必要です(労働基準法20条3項,19条2項)。

 

(3) 雇用契約書の翻訳の必要性について

雇用契約書について,必ず翻訳語版を交付すべき義務を負うわけではありませんが,労使間のトラブルを防ぐ観点でいえば,少なくとも労働条件明示義務(労働基準法15条1項)において明示しなければならない労働条件などは,母国語で説明するか,翻訳語版を交付することが適切な対応です。

雇用契約書を翻訳することまでは難しいのであれば,例えば,厚生労働省の公表する「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を活用して重要な労働条件を母国語で通知する対応が考えられます。

また,雇用契約の内容について外国人から質問を受けた場合には,できる限り,母国語で分かりやすく説明することが,望ましい対応です。

 

外国人

 

第7章 支援計画策定上の留意点

「特定技能1号」の在留資格を取得させて外国人を雇用する場合には,支援計画を策定し,それに基づいた支援を行わなければならないことが定められます(改正入管法2条の5第6項)。

支援計画に定めなければならない事項は,基準省令案によれば,次のような内容です。

 

・入国前の生活ガイダンスの提供
・入国時の空港等への出迎えと帰国時の空港等への見送り
・保証人になることその他の外国人の住宅確保に向けた支援
・在留中の生活オリエンテーション
・生活のための日本語習得の支援
・外国人からの相談・苦情への対応
・各種行政手続についての情報提供・支援
・日本人との交流促進支援
・本人の責に帰すべき事由によらないで雇用契約を解除する場合の転職支援

 

基準省令案によれば,支援計画は,日本語のほか,外国人労働者が十分に理解することができる言語でも作成し,その外国人にコピーを交付しなければならないものとされています。

支援計画の策定や実施を雇用先が自ら行うのは大変ですが,これについては,「登録支援機関」のサポートを受けることができるようになります。「登録支援機関」としては,各産業分野の業界団体や,これまで技能実習制度のもとで監理団体となっていた協同組合などが主に想定されますが,技能実習制度の監理団体とは異なって営利性のないことは要件とされていないため,民間企業がその役割を担うようになることも考えられます。

雇用先は,信頼のおける登録支援機関を見つけることさえできれば,支援計画の策定などのサポートを受け,自らは外国人人材の活用方法を模索することに専念することができます。

 

第8章 雇用管理のポイント

1 支援計画の実施以外の対応の必要性

雇用先は,少なくとも,支援計画で定めた事項には対応しなければなりません。ただ,支援計画の実施は,あくまでも,特定技能制度を活用するうえで外国人労働者に提供しなければならない最低限のサービスです。雇用先は,そのことをきちんと意識し,言葉や文化の違いによって日本で生活するうえで不自由に感じていることに対してこまめに相談に乗り,的確な支援を行うことが求められます。

 

2 安全衛生

外国人労働者の雇用管理において特に留意すべきなのが,安全衛生に関することです。介護・外食・宿泊のいずれの分野も現場での業務を伴うことから,適切な安全衛生管理がなされていなければ労働災害が発生するおそれがあります。

雇用先は,安全衛生管理の観点から重要な事項について母国語でのマニュアルを作成することが望ましい対応です。

また,安全上必要な指示については,日本語で指示を出してもきちんと伝わるように教育を実施しておくべきです。

さらに,安全上必要な注意事項について,ピクトグラムを活用して分かりやすく注意を促すことも考えられます。

このような配慮を欠いた結果として労働災害が発生した場合,雇用先の安全配慮義務違反を理由に,法的責任を問われるおそれもあります。例えば,ナルコ事件(名古屋地判平成25年2月7日)では,日本語をほとんど理解できない外国人の研修生が加工作業中に指を切断した労働災害について,作業手順・注意事項・事故発生時の対応などについて母国語で記載した書面の交付や母国語での説明を怠っていたことを理由に,雇用主の安全配慮義務違反を認めています。

 

3 宗教上の配慮

配慮を欠いたことでただちに法的責任を問われるものではありませんが,外国人労働者を雇用するうえで重要なのは,宗教上の配慮です。礼拝時間の確保社員食堂のハラール対応など,宗教上の事情をきちんと理解してできる限りの配慮をすることは,よりよい外国人の人材を確保するうえでは重要なことです。

 

4 まとめ

よりよい外国人の人材を確保するためには,雇用先も努力が必要な時代になっています。なぜなら,SNSの普及などにより,日本への就職を目指す外国人は,受入れ先企業の情報を共有するようになっているからです。優秀な外国人ほど,外国人に対する適切な配慮のあるよりよい職場環境を求めています。

「求人さえ出せば外国人はいくらでも集まる」という発想では,優秀な人材を確保することはできません。これからの時代は,優秀な外国人を受け入れようとする各企業の創意工夫によって,「外国人が働きやすい職場環境づくり」を目指すことが求められます。

 

第9章 おわりに

今回のコラムでは,「特定技能」制度の基本的な仕組みと,雇用上の留意点について説明しました。ただ,外国人雇用には,在留資格や入管制度という複雑な問題が絡むことから,このコラムをお読みいただいても,「やはりよく分からない」と感じられる方が多いかもしれません。

当事務所では,「特定技能」制度を活用してみたいが,雇用条件の整備や雇用管理をどうしたらよいのか分からない,とお悩みの企業様に向けて,法的アドバイスや,契約書作成サポート,外国人労働者とのトラブルが発生した際の紛争対応など,様々なリーガルサポートをご提供しております。神戸市内や兵庫県内の企業様のほか,大阪,京都,その他地域からのご相談にも対応いたしますので,お悩みの際は,ぜひお気軽にご相談ください。

 

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このコラムを書いた人

弁護士 石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
情報処理安全確保支援士、応用情報技術者の資格を持つ若手弁護士。IT、IoT、営業秘密など、いつでもすぐに、最新の問題に対応するリーガルサービスを提供できるよう、5年先、10年先を読みながら、日々研鑽を積んでいる。
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