弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2023.03.15
借金の問題

破産をするか悩んでいるフリーランスの方へ(弁護士からのアドバイス)

1.フリーランスで生活苦を抱える方へ

最近、フリーランスとして働く方が増加しています。そのため、フリーランスの方から、借金問題のご相談をうかがう機会が増えています。

フリーランスの方が借金問題を抱える理由は、思うように案件が増えない、子どもの教育費が大きくなった、病気になってしまったなど様々です。

今回のコラムでは、借金問題に苦しみながら、破産をするかどうか迷っているフリーランスの方に、弁護士の立場からアドバイスしたいことをまとめました。

2.このまま借金を返し続けるか、それとも、債務整理をするかの見極めは?

(1) 大切なことは「今返せているか」ではなく「今後返しきれるか」

借金問題を解決する方法には、破産のほかに、個人再生や任意整理などがあります。これらを総称して、「債務整理」といいます。

これまでの経験上、債務整理のご相談にいらっしゃる方で多いのが、「お金がほとんどなくて来月の返済ができない」というケースです。少しでも返済に回せるお金がある限りは返済をギリギリまで続け、全く返済のめどが立たなくなった段階で弁護士にご相談をされる方が大変多いです。

もちろん、このような段階から債務整理のご依頼をお受けすることも(ケースにはよりますが)可能なことが多いです。ただ、できれば、まだ返済の余力がある段階から、債務整理について検討していただくことをおすすめしたいです。

なぜなら、破産手続をはじめ、債務整理を進めるうえでは、相応の費用が必要になるからです。(後ほど説明するように、お金がほとんどない状態からの債務整理も不可能ではないですが)ある程度余裕がある状況のほうが、債務整理に必要な費用をすぐに用意することができ、スムーズに債務整理を進めることができます

それでは、「債務整理をしたほうがよいかな?」と考えるタイミングは、いつなのでしょうか。それは、現在の収入状況や借金額を考えて、すべて返しきることが難しい感じるようになった段階です。

(2) 「すべて返しきることが難しい」の見極めはどうすればよい?

「すべて返しきることが難しい」とは、どのような段階のことでしょうか。

例えば、次のようなケースが挙げられます。

・返済を続けているのに、借金額があまり減っていない状況が続いている

・少ない貯金を取り崩さなければ返済できない状態がしばらく続いている

・収入が思うように増えない状態が続き、借金をしないと余裕のある暮らしができない状況にある

・フリーランスとしての仕事がうまく行かず、収入が下がって返済に影響が出始めている

・病気や育児・介護などで、フリーランスの収入に大きな影響が生じる状況にある

以上のようなケースは、いずれも、「来月の返済がもうできない!」ような状態ではありません。ただ、「将来的に借金を返し終えることが可能か?」という視点で考えると、いずれも、かなり不安があります。

これらのケースに限らず、「このままでは将来的に借金を返し終えることは難しい!」と感じた場合は、お早めに債務整理を検討することをおすすめします。

(3) フリーランスだからこそ意識すべきこと

会社員や公務員とは異なり、フリーランスの場合、今後の収入見込みを予想するのが難しい問題があります。「今の収入であれば何とか返し終えられるかな?」と思っていても、突然主要な取引先から契約を切られたり、案件を減らされたりすることで、生活状況が一変することも珍しくありません。

そのため、フリーランスの方は、「将来的に借金を返し終えることが可能か?」の見極めについて、会社員や公務員よりも厳しめに見立てをすることが重要です。

(4) リボ払いのご利用が多いケースは要注意!

リボ払いのご利用が多い方の場合は、「まだ返せるから大丈夫!」という錯覚に陥りやすいことに注意しなければ生りません。リボ払いは、あらかじめ完済までの回数が決まっている分割払いとは異なり、毎月の返済が一定額に抑えられることから、利用される方が多くいらっしゃいます。

毎月の返済が一定額に抑えられるということは、見方を変えれば、返済を続けてもなかなか債務が減っていかないということでもあります。ただ、請求された額は返済を続けられていることから、かなり債務額が膨らんでいても、完済ができない状況に気づけないケースが多いのです。

リボ払いのご利用が多い方は、「今返せているか」ではなく「今後返しきれるか」という視点で現状を考えることが、特に重要です。

3.フリーランスの方が破産を躊躇する理由

フリーランスの方が破産を躊躇する理由には、どのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを取り上げます。

(1) フリーランスの仕事を続けられなくなるのではないか?と不安になる

フリーランスの方の場合、確かに、破産によって仕事に影響が生じる場合があります。

ア 価値のある事業用資産がある場合

1つは、価値のある事業用資産をお持ちの場合です。例えば、オフィスを所有している場合や、最近事業のために購入した自動車がある場合などは、その資産を手放さなければならないケースがあります。

ただ、フリーランスの方の多くは、オフィスや自動車などの事業用資産を所有していなくても、最小限の備品とレンタルオフィスがあれば事業を続けられるような働き方をされています。そのため、破産による仕事への影響は、一般にあまり大きくありません

※クレジットカードやローンでPCなどの備品を購入して、その返済を終えていない場合は、カード会社やローン会社にその備品を引き渡さなければならないケースはあります。その場合は、中古品などできる限り費用を抑えたうえで、必要最小限の備品を購入する必要が生じることはあります。

イ 取引先との契約で破産が解除事由となっている場合

フリーランスの方が取引先と締結することの多い契約形態である「業務委託契約」の場合、「破産をしたとき」が契約解除事由となっていることがしばしばあります。そのため、破産を選択した結果、取引先から契約を解除される可能性を完全に否定することはできません。

もっとも、現実には、破産を理由に契約解除をされるケースは、かなり少ないように思われます。なぜなら、フリーランスの方の場合、破産をしても仕事を続けられるケースが多いため、取引先としても契約を解除する必要性に乏しいからです。

また、万が一、一部の取引先から契約を解除されたとしても、他の取引先の案件を続けたり、新規案件を獲得したりすることで、仕事を続けることは可能です

ウ 破産による仕事への影響は限定的なことが多い

以上のとおり、破産によってフリーランスの仕事に生じる影響は、限定的なことが多いです。また、破産手続は経済的生活の再生も目的としていますので、破産後もフリーランスとしての仕事を続けていくことは、制度趣旨からも望ましいあり方です

たとえフリーランスの仕事に影響が生じたとしても、そのまま借金に苦しみ続ける負担の大きさからすれば、軽微なものです。「フリーランスの仕事を続けられなくなるのではないか?」という不安によって、借金に苦しみ続けることは、決しておすすめできません。

(2) 弁護士に依頼したいが費用のことを心配している

ご依頼を躊躇する理由としてお聞きすることが多いのが、「費用が高くて用意できないのでは?」という不安です。

たしかに、破産をするためには、相応の費用が必要になります。具体的においくらの費用が必要かはケースバイケースですが、少なくとも35万円程度が必要になります。

ただし、弊事務所の場合、手持ち現金があまりない方でも、次のような費用の積立てという方法でご依頼をいただくことが可能です。

1.ご依頼をいただいた時点で、各債権者(カード会社・ローン会社・銀行・消費者金融など)に弁護士から通知をして、同じタイミングで返済をストップしていただきます。

2.それ以後は、債権者への返済の代わりに、(当事務所が指定する預かり口座に)費用の積立てをしていただきます。

3.破産手続に必要な費用がご用意できた段階で、破産申立てを進めます。

以上のような方法で進めることにより、ご依頼の時点で手持ち現金があまりない場合でも、破産をすることはできます。

もっとも、破産手続をスムーズに進める観点からは、ある程度ご依頼時点で資金があり、必要な費用をすぐにご用意いただけることが望ましいです。(ギリギリまで返済を続けるのではなく)できる限り早い段階で、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

[補足情報]同時廃止事件と破産管財事件

◇ 破産事件は、破産管財人が裁判所から選任される破産管財事件と、破産管財人が選任されない同時廃止事件とがあります。

◇ 破産管財事件のほうが、同時廃止事件の場合よりも、一般に費用が多く必要になります。

◇ 個人事業主の場合、原則として破産管財事件として取り扱われることになっています。

◇ ただし、フリーランスの場合、事業用資産をほとんど持っておらず、取引先との間で売掛金・買掛金のような複雑な債権債務関係がなく、働き方も労働者とあまり変わらない限り、例外的に、(少額の費用で足りる)同時廃止事件として取り扱われることが多いです。

◇ 詳細については、直接弁護士にご相談ください。

※過去の関西圏の裁判所に破産申立てをした際の事例に基づいた説明です。地域によって、事情が異なることがあります。

(3) 自宅不動産を残したいから破産ができない

たしかに、マンションや一戸建てのような(自分が所有する)自宅不動産は、破産によって手放されなければならないケースが多いです。どうしても自宅不動産を残したい場合は、破産は難しいかもしれません。

このような場合も、破産に代えて、個人再生や任意整理といったその他の債務整理の方法で、借金問題を解消することができるケースが多くあります。自宅不動産を残したい場合でも、弁護士への相談自体を躊躇することはおすすめしません。

4.まずはご相談にお越しください

フリーランスの方の借金問題について、弁護士がアドバイスを差し上げられることはたくさんあります。ただ、フリーランスの方の場合、働き方が人それぞれで、ケースバイケースでの判断が必要なことが多いため、コラムとして「一般にこうです!」と書けることが限られます

まずは、弊事務所にご相談をいただき、弁護士に直接ご事情をお伝えください。これまでの経験に基づいて、経験が、ご相談者様の事情に合った最適な解決策を検討し、お答えいたします。

弊事務所は、借金問題のご相談を何度でも無料でお受けしております。債務整理のご依頼まで費用はかかりませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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