弁護士法人 みお綜合法律事務所神戸支店
2024.07.19
遺産相続のトラブル

遺産分割で寄与分を主張したい方に向けた弁護士解説

弁護士 石田 優一

第1章 寄与分って何?

1 はじめに

ご親族が亡くなって遺産分割の話合いを進めるとき、「ずっと私1人で介護をしてきたのに、他の相続人と受け取れる遺産が同額なのは納得できない」「ずっと事業を手伝ってきたので、その努力を受け取れる遺産に反映してほしい」といった思いを抱える方は多くいらっしゃいます。このような思いを叶える制度が、「寄与分」です。次のようなケースを、ご紹介します。

2 寄与分が問題になる具体例

【ケース1】

私は、もともと、両親と同居をしていました。母親が亡くなった後、高齢の父親を10年ほど介護してきました。父親は、10年前に認知症を発症し、その後、ひとり歩き(いわゆる徘徊)が増えたため、私が常に見守らないと行けない状態になりました。3年前に倒れてから寝たきりの状態になり、その後は、父親が亡くなるまで、介護を続けていました。

先日、父親は亡くなりました。私には、別居している兄と、妹がいます。父親が遺した財産は、自宅不動産(500万円)と、1000万円の預貯金です。

兄からは、自宅を私がもらって、預貯金1000万円を兄と妹で2分の1ずつ分けることを提案されています。私がずっと父親のサポートをしてきたにもかかわらず、預貯金を全く分けてもらえないことには、納得がいきません。

(1) 寄与分を考えない場合

このようなケースにおいて、私、兄、妹の法定相続分は、それぞれ3分の1です。父親の遺産の総額は1500万円ですので、私が自宅不動産(500万円)を、兄と妹が預貯金500万円ずつを取得すれば、法定相続分どおりに遺産分割をしたことになります。

ただ、これでは、10年間にわたる私のサポートが全く評価されておらず、形式的には公平でも、実質的には不公平な分け方です。もし、私がいなければ、父親は介護施設への入所などをすることになり、1000万円の預貯金の大部分を使っていたと考えられます。

このような私のサポートを評価して、遺産分割の場面で反映するのが、寄与分の制度です。

(2) 私に寄与分300万円が認められた場合

仮に、私に300万円の寄与分が認められたとします。その場合は、次のように考えます。

(1) 【遺産】1500万円-【寄与分】300万円=1200万円(みなし相続財産)

(2) 1200万円÷3=400万円

(3) 次の金額を、具体的相続分とする。

【私】400万円+寄与分300万円=700万円

【兄】400万円

【妹】400万円

このように、寄与分が認められた相続人は、他の相続人よりも、寄与分に相当する額を多く受け取ることができます。このケースであれば、私は、自宅不動産(500万円)のほか、200万円の預貯金を受け取ることができます。

3 寄与分制度の意味

このように、寄与分制度があることで、亡くなった方のことをサポートした人が多く遺産を受け取って、実質的な公平を実現することができます。

4 寄与分は遺産分割協議・調停・審判の中で主張する

寄与分は、遺産分割の話合い(協議)や、裁判所での調停・審判の中で主張することができます。寄与分の額について、相続人同士での話合いが整わなければ、最終的に、裁判所が寄与分の額を決めます。

第2章 寄与分が認められるケースは?

1 法律ではどう書かれているか?

民法
(寄与分)
第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、・・・寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
【2 以下省略】

寄与分が認められるのは、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合です。単に「寄与」をしただけではなく、「特別の寄与」をしたことが必要です。

「特別の寄与」が認められるケースについて、いくつかご紹介します。

2 介護が「特別の寄与」に該当するケース

先ほどご紹介した【ケース1】のような事例が、介護が「特別の寄与」に該当しうるケースです。親族の1人が介護を担った場合、介護施設やヘルパーサービスの利用が減り、その結果、介護費用が大きく抑えられます。このような理由から、貢献の程度が大きければ、「特別の寄与」があったものとして、寄与分が認められます。

3 事業を手伝ったこと(労務の提供)が「特別の寄与」に該当するケース

【ケース2】

先日、私の父親が亡くなりました。相続人は、私と兄の2人です。父親は、若い頃から農業で生計を立てていましたが、10年前に腰を痛めてから、農作業をほとんどできなくなりました。それ以来、私が農作業の大部分を手伝って、サポートしていました。

この事例のように、家業を無償(あるいは無償に近い低額な報酬)で手伝っていた場合、その貢献の程度が大きければ、「特別の寄与」があったものとして、寄与分が認められます。

4 経済的援助(財産上の給付)が「特別の寄与」に該当するケース

【ケース3】

先日、私の父親が亡くなりました。相続人は、私と兄の2人です。父親は、10年前に病気で働けなくなり、自宅のローンを支払えなくなりました。そこで、私が、生活費から工面して、代わりにローンを返済しました。

「特別の寄与」といえるためには、亡くなった方との関係性を考えて通常期待される程度を超えた貢献が必要です。そのため、単に、父親が経済的に困っていることを理由に、生活費を若干援助するだけでは、「特別の寄与」とは評価されません。

ただ、この事例のように、経済的援助の程度が大きく、通常期待される程度を超えた貢献があったと評価できる場合は、「特別の寄与」があったものとして、寄与分が認められます。

第3章 寄与分について争いたいときは?

寄与分は、ご自身の貢献を反映したものですから、主張することを躊躇する必要は全くありません。

寄与分の額は、ケースによりますが、数百万円程度認められることも珍しくありません。

寄与分を主張できる可能性が高いのであれば、他の相続人に対して、明確にその主張を伝えることをおすすめします。

ここからは、寄与分を主張するために、どのようなことを準備して、どのような流れで主張すべきか、解説します。

1 事前準備

寄与分を主張したい方は、まず、証拠を整理することが重要です。

(1) 介護(療養看護)を理由にした寄与分の主張

例えば、亡くなった方が生前に利用していた医療記録(カルテ)を取り寄せることで、生前に介護(療養看護)がどれほど必要な状況であったかの手がかりとなります。

介護用オムツを購入した際の領収証など、介護にかかわる中で支出した費用が分かるものも、重要な証拠となりえます。

その他、ご自身で記録していた日記や、近親者の供述なども、証拠となりえます。

自宅での介護(療養看護)は、いわば「人知れず」されている方が多いですので、おのずと、証拠収集に苦労することが多くなります。些細な証拠であっても、できる限り多く集めることが重要です。

(2) 事業を手伝ったこと(労務の提供)を理由にした寄与分の主張

例えば、ご自身で作成した記録や、取引関係者・近隣者の供述などが、証拠となりえます。

その他、事業関連で購入した備品をご自身のクレジットカードで支払っていたなど、事業に積極的に関与した事情が分かる証拠を、なるべく多く探すことが重要です。

(3) 経済的援助(財産上の給付)を理由にした寄与分の主張

例えば、経済的援助をする際に使用した預貯金口座の入出金明細が、証拠となりえます。

その他、亡くなった方に代わって支払をした際の領収証など、経済的援助の事実が分かる証拠を、なるべく多く探すことが重要です。

2 他の相続人との話合い(遺産分割協議)

証拠の準備が整った後は、遺産分割の話合い(協議)において、証拠を示したうえで、寄与分を主張したい旨を他の相続人に伝えます。他の相続人が納得するように、ご自身がどれほどの貢献をしたか、時系列に沿って丁寧に説明することが必要です。

3 話合い(遺産分割協議)がまとまらなければ

他の相続人が納得せず、話合いがまとまらなければ、裁判所に遺産分割調停の申立てをします。調停委員からの説得によって、当事者同士の話合いよりも、他の相続人が納得する可能性が高まります。

遺産分割調停でも決着がつかなければ、遺産分割審判に移行し、裁判所の判断に委ねることになります。

第4章 寄与分を主張したい方は弁護士へのご相談をおすすめします

寄与分を主張する際には、必要な証拠や事実関係を整理して、相続人(さらには裁判所)への丁寧な説明をすることが求められます。そのためには、寄与分制度に対する深い理解が求められます。

また、「寄与分の相当額がいくらなのか?」は、弁護士でも判断に迷うことが多く、一般の方が判断することは大変ハードルが高いです。

寄与分について主張されたい方は、「相続問題のプロフェッショナル」である私たち弁護士にご相談いただくことを、おすすめします。

このコラムを書いた人

弁護士石田優一
兵庫県弁護士会所属 68期 登録番号53402
みお神戸支店長、パートナー弁護士。社会保険労務士、登録情報セキュリティスペシャリストの資格を持ち、くらしの身近な相談から、企業法務、IT法務、ベンチャー支援まで、幅広く注力する。弁護士として神戸・兵庫に貢献できることを日々探求している。

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